立っているだけで暑い。
動いているほうはもっと暑いんだろうな、とか思いながら、私は試合の副審をしていた。

主審の鳳くんがスコアを言い、私はサーブをする跡部を見ていた。
相変わらず自己主張の強いフォームしてんな、あいつ。

勢いよくラケットを振りかざし、ボールはネットを超える。
レシーブの宍戸は身構えたわけだけど、打ったボールは若干白線から遠いところに落ちた。

腕を曲げると、鳳くんがそれを見て「フォルト」と言った。

あん?と跡部が納得できないように首をかしげた。

「フォルトだったのか?」
「はい。ですよね、苗字先輩」
「うん。入ってない」

私の言葉が信じられないのか、跡部はネットに近づいてきた。
宍戸も大勢を崩した。

「だから、入ってないってば」
「確認だ」

ネット越しに、宍戸のコートを見る。
やっぱりこの暑さのせいか、跡部も汗をかいていた。

「…入ってないな」
「ほらね」
「…っつーか苗字、お前なんて恰好してんだよ」
「は?」

理解できないと言いたげな顔で私を見る跡部。
つられて私も自分の恰好を見たけれど、別に変わったところはない。

「…なに?」
「暑くねーのか」
「え?ああ」

私はこの炎天下の下、紫外線対策として長袖のジャージ、長ズボンを着用してる。
焼けたくない、ただそれだけの理由。

「肌焼けるの嫌なの。赤くなっちゃうし」
「お前の恰好を見ているだけで余計暑くなる。脱げ、部長命令だ」
「やだよ」
「暑苦しいんだよ。なぁ、宍戸」
「ああ、見てるだけで汗出てくる」
「黙れ汗っかき」

私たち三人のやり取りを苦笑いで見ている鳳くん。
決して混ざろうとはしない低姿勢である。

あーだこーだと言って聞かない私に、跡部はラケットを置き手を伸ばした。
ジャージの襟を掴み、チャックに手をかけた。
その手首を今度は私が掴む。

「なにすんのスケベッ!」
「だから、脱げっつってんだよ!こんな暑い中そんな着こんでると倒れるぞお前っ」
「やだ!ちょっ、やめろ!」
「観念しろよ苗字。跡部の言うとおりだぜ」

宍戸が跡部に加勢した。
そうだとしても、こんな強制的に脱がされてたまるか!

「脱げ、オラッ」
「やめろそんな事後の前の男みたいに言うな!」
「誰がテメェとなんかするかよ!」
「うるさいよ!わかった、脱ぐから、自分で脱ぐから!」
「テメェも流されてんじゃねーよ!」
「なんの話だよ!」

宍戸の冷たい目線と鳳くんのきまずそうな目線のダブルパンチ。
正確には跡部のやっとか、みたいなイライラした目線もあるからトリプルパンチだ。

しぶしぶ上着を脱ぐ。
日焼け止めは塗ったけど、休憩時間にまた塗ろう。

あ、でも脱いだ方が涼しいわ。

「ほら、満足か」

上着を腰に巻いて跡部を見ると、目を見開き驚いたように固まっていた。
それを見てぎょっとした。

は?と思い宍戸を見ると、気まずそうにそっぽを向いていた。
鳳くんに至っては顔を赤くして俯いている。

再び跡部を見ると、舌打ちされた。

「…え、なによ」
「……お前、Tシャツの替えはあるのか」
「Tシャツの?…まぁ、あるけど」
「着替えてこい。…下着、汗で透けてんぞ」
「…嘘っ、マジで!?」

最後の跡部の言葉は小さな声だった。

あわてて胸を隠し、わけもわからずその場にしゃがみ込んだ。
跡部に言われたことと、宍戸と鳳くんの態度に羞恥心で顔が赤くなる。

ハッと気づき、跡部を見上げた。

「まさか跡部、それが狙いでっ…!?」
「アーン!?んなワケねぇだろ!」
「大きな声出さないでよ!余計見られるじゃん!」
「っつーか、お前もなんでこんな時に限って黒なんだよ」
「黙れ!」

跡部の顔が少し赤くなっていた。
くそ、なんてムカつく奴。




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