足怪我した
全治2週間ワロタ\(^o^)/
最初は冗談だと思って、期待させないようにざまぁみろと返信した。
まず第一、帰宅部が何故足に全治2週間の怪我を負わせるのかわからなかったというのと、あいつが怪我するわけないと確信を持っていたからだ。
「なのに本当に怪我をしていたとは思わなかったのだよ」
「私のメールが嘘でも本当だったとしても、彼女の心配をしない奴だったなんて思わなかったよ。食べ物置いてすぐ帰れ」
病院のベッドで安静にしている名前に、少し悪いと思いながら昨日のメール内容を懺悔した。
だがやはり名前はご立腹のようで、好物のプリンを買ってきたのにこの通りだ。
まぁ、全責任は俺にあるわけなのだが。
「ざまぁみろって。ざまぁみろって、なにそれ。最低」
「だから冗談だと思ったのだよ。お前には前科があるからな」
「あの日はエイプリルフールだもん。嘘ついてもいいんだもん」
「プリン食べるか?」
「いらない。冷蔵庫入れといて」
つっけんどんな名前。怪我人はタチが悪くて構わん。
つん、と俺から顔を逸らしそっぽを向いた。
「…お前、いつまでここにいるつもりだ。そこまでひどくないのだろう?」
「松葉杖必要だもん。お父さんとお母さん出張で家帰れないから、どっちかが帰ってくるまでいる」
昨日のメールのことが頭を過って、怪我の原因を聞くのが少し嫌だった。
確かに、もう少し考えて返信すべきだった。
「ねぇ」
「なんだ」
「いまどんな気持ち?」
「思ったよりショックだ。悪かったな、昨日は。反省してる」
「別れたいって言ったらどうする?」
名前は目を合わせずに言った。
「…なんだそれは」
「そのまんまだよ」
「メールが原因でか?」
「それも含めて」
思ったより動揺している自分がいた。名前に関してこんなこと、今までなかった。
「とりあえず、真太郎に対しての株は大暴落した」
「言っておくが、心配していなければ部活を休んでまで見舞いにこない」
「部活と比べないでよ。ひどい」
弱りすぎてないか。
いや、女はどいつもこうなのか。何にしろ初めての出来事なのでどう対処していいのかわからない。
「…名前」
「なに」
「こっちを向け。キスしてやる」
「なっ、はぁあ!?ちょ、なに立ってんの!?座ってよ!」
名前は真っ赤な顔で抵抗のしるしとして布団をかぶった。
俺はというと、名前の頭近くに手を置いて顔を近付けた。
「ちょっ、なにしてんの!?」
「だからキスしてやると」
「馬鹿かっ!ファーストキスが病院とか、絶対嫌!人来るからどいてってば!」
「キスさせろ。キスしてから別れろ」
「はぁ!?」
自分でも何を言っているのかわからないが、必死なのは俺も名前も変わらない。
病院で何をやっているんだ俺達は。
「言っておくがな」
「なに!?」
「俺はお前が思っているより欲深で、いい加減で、執着心が強い」
「なっ…」
「だから、別れるつもりは毛頭ないのだよ。それだけはわかっていろ」
唖然と俺を見上げる名前に優越感を抱きながら、おでこにキスを落とした。
「…最っ悪」
「第一声がそれか。説得力ないのだよ、嬉しげだ」
「真太郎だって顔赤い」
「思ったより緊張しただけだ。プリン食べるか?」
「…食べる」
怪我人はタチが悪い。
看病する側の俺もどうかしている。
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