「青峰って彼女作る気ないのかな?」

隣に座っていたはずの苗字さんの声が前からして、驚いた僕は日誌から顔をあげるといつの間にか彼女は僕の向かい合わせになるように座っていた。
いつ移動したんだろう。

放課後の教室には僕らしかいない。

「青峰くん…ですか?」
「うん、青峰」

苗字さんの口から青峰くんという言葉が出てきたことに驚いた。

「結構バスケ上手いらしくて女子にも結構告白されてるんだって。でもみんなフッてるとかなんとか」

確かに青峰くんはモテてるけれど、告白されたという話は聞いたことがない。もしかして僕らには隠してるんだろうか。

「黒子くん仲いいよね?なんか知らない?」
「どうでしょう…。桃井さんに聞いたほうが早いですよ」
「桃井さん…。ああそうそう。青峰って桃井さんと付き合ってるの?」
「あの二人はそういった特別な関係ではないですよ。確かに仲はいいんで誤解されがちですけどね」
「うんうん」

苗字さんは興味津々なようで、顔がパッと明るくなった。

「あんだけ仲いいのに恋人同士じゃないとか、結構おかしな話じゃない?」
「そうですか?でもあの二人を見てると、恋人同士というより姉と弟、みたいな感じですよ」
「へー、そーなんだ。青峰って桃井さんと付き合い長いから、きっと理想が高いんだろうね」
「…青峰くんが彼女を作らない理由としては、そういった誤解があるからじゃないですか?」

誤解って?と苗字さんは首を傾げた。

「例えば青峰くんに彼女ができたとして」
「うんうん」
「でも部活ぐるみの付き合いで桃井さんとは変わらず接するわけじゃないですか」
「うんうん」
「彼女の立場からしたら、本当に自分が好きなのか、桃井さんと仲がよすぎて嫉妬を招いてしまいます」
「うんうん、わかるよその気持ち!他の女子と仲いいと疑っちゃうよね!」
「彼女さんはもちろん青峰くんに、桃井さんと仲良くしないで、と言い張ります。でも青峰くんは自分のことに干渉されたくないので、断固拒否。彼は自分の彼女に向かってそれくらい我慢しろと言う派閥の人間です」
「ちょ、それは青峰ひどすぎないか?仮にも自分の好きな人にだよ?」
「彼は好きでなくても告白した女子の胸が大きければ二つ返事で承諾するような人です。好きでもない人にとやかく言われたくないんですよ」

説明し終えると、苗字さんは苦笑いしながらうわーと若干引いたような声。
これで苗字さんの青峰くんに対する株は下がっただろう。

「つまり、青峰くんの彼女になるにはただならぬ精神的と包容力が必要ですね」
「それはキツいなー」
「苗字さん、青峰くんのことが好きなんですか?」
「え?違う違う!友達が青峰のこと好きでさ。私はそれの手伝い」
「…」

なんだ、よかったじゃないかと心の奥でガッツポーズした。

「私は緑間のほうがかっこいいと思うんだけどねー。頭いいし、背も高いし」

その一言でガッツポーズは崩壊した。
そしてシャーペンの芯も折れた。

「…実は彼、カバンにリカちゃん人形入れてるんですよ」
「うそっ、本当に!?」

ショックだーと頭を抱える苗字さん。そしてまた僕はガッツポーズ。

これで緑間くんの株は下がったでしょう。
リカちゃん人形って、確か今日のラッキーアイテムでしたよね。
ありがとうおは朝占い。




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