初めは小さな、とても小さな塊が、だんだんと成長しヒトとなり、交尾を繰り返しヒトを産んだ。

だから私たちは生きている。


「それってすごくない?私たちって、本当は微生物だったんだよ」
「いや、それはなんだか違う気がする」


長々と進化論を演説され、僕は否定も肯定もできずにいたが、さすがに最後の言葉には反対の意を示した。

名前は小さな花を摘み、ほら見てごらんよ、と僕の目の前に差し出した。

「私のこの理論からいくとね、花もいつかきっと、私たちと同じヒトになるかもしれないの」
「えぇえー…ならないよ」
「いやいや、わからないよ?もしかしたらいきもの全て原点はみな同じ、未来では何らかの進化を遂げて、二足歩行で歩いているかもしれない!」

恐ろしい幻影が浮かび上がり、僕は戦慄した。そんなおかしな進化が起きていたとしたら、僕は未来人を疑う。

「気持ち悪いこと言わないでよ、考えちゃったじゃん」
「ね、ね、かっこよくない!?花が歩くんだよ!?」
「名前はその感性を直したほうがいい!花が歩くとかどんなホラーだよ!嫌だなそんな進化!」
「え、かっこいいじゃん」
「いくないいくない!」

ブンブンと首を振って答えると、名前はちぇーと頬を膨らまし、摘んだ花に息を吹き掛けた。
花は名前の吐息と風の流れで少しの間宙を舞った。

「私たちの祖先は、どんな進化を遂げてるのかねぇ」
「さぁ…。案外、変わらなかったりするんじゃない?」
「いやいや、もしかしたら竹中さんみたいに後頭部が魚になってるかも」
「全人類が!?怖いななにそのウィルス!新手のテロだよ!」
「それだったらきっと、未来人は全員水泳が得意だね。海で溺れる心配もないよ!」
「後頭部が魚になってまでして水泳を得意にしたいとはどの時代の人も思わないよ。だったら溺れない浮き輪とか作ったほうが早いと思う」
「うふふー、未来が広がるね!」

一方的に名前が広げているだけだろうと思ったけど、口には出さなかった。

「ね、ね、妹子、知ってる?」
「はいはい、何を?」
「人間って、もとは全部同じ塊でね、分裂を繰り返して、交尾をして、どんどん増えたんだって!」
「へー」
「もとは一つだったのに別れて、また一緒になって増やしていくの」
「うん」
「そう考えると人間って寂しがり屋だよね。でも仕方ないよね、そうしないと滅びちゃうんだから」
「じゃあ僕が名前と一緒にいたいと思うのも、仕方のないことだよね」
「え?何か言った?」
「………聞けよ馬鹿!」
「あだっ、叩かないでよ!」


花が二足歩行になろうが、頭が魚になろうが、名前と子孫を残せるなら、別にいいや。

とか思ったけど、やっぱり最初の二つはいらないかな。




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