クラスに変な奴が二人転校してきた。
一人は赤毛の変顔に、もう一人はそいつに負けず劣らずの電波。
髪が白い。言動が可笑しい。以上のことをふまえて、彼は本当に宇宙人だと思う。
…ま、そんなわけないか。
仮に宇宙人だとしても、この江ノ島を拠点に世界制服なんてするようには見えないし。
つまり、まぁ、単なる痛い奴なんだろう。
それが数日前の出来事。
今はクラスに馴染んで…はいないけど受け入れられてるようには見える。
平和で何より。
「ねぇねぇ!」
「……」
頭上で何か声がした。
まさか私に話しかけているわけじゃないよな、と思ったけど気になったので読んでいる本から顔をあげると、宇宙人がいた。
あ、紫色の目してるんだ。本当に宇宙人っぽい。
「…え、なに?私?」
「そう!私!ねぇ、なに読んでるの?」
「ん?あー…西尾維新だよ」
「ニシオイシン?」
とカタコトになる宇宙人。どうやら日本語は苦手らしい。
「面白いよ。こういうの」
表紙を見せると、おお〜と目をキラキラさせて表紙を触る。
「この絵可愛い!気に入った!」表紙の女の子、友を気に入ったらしい。確かに可愛いよね。
「ね、ね、この本、釣りより楽しい!?」
「釣り?」
なんで急に釣り?
ああ、確か…釣竿持ってたよね、自己紹介のとき。赤毛に無茶ぶりしてた。
「釣り…は楽しいの?」
「うん!楽しい!」
「私はやったことないからよくわかんないけど…この本は、面白いよ」
「面白い?楽しくないの?」
違うの?と問いかけてくる。
なかなか面白いことを聞くな、この宇宙人。
「人それぞれだよ。楽しいも面白いも、人それぞれ。私はこの本、読んでて楽しいし、面白い」
「ふーん…。いいんちょーにとって、釣りって楽しくない?」
「やったことないからなぁ…わかんないや」
すると宇宙人はばん、と机を叩いて私に顔を近づける。
「じゃあ、いいんちょーも釣りしよう!きっと楽しい!面白い!」
「え、いや…」
「やろ、やろ!魚釣ろう!」
「わ、私は…」
まだ何も言ってないのに宇宙人はにんまり笑って顔をはなし、夏樹ー!と叫んで離れた席に座っている宇佐美くんのもとへ走っていった。
え?え?
「今日、いいんちょーも一緒に釣りやるって!」
大きすぎるその声は私にも届いた。
って、いやいやちょっと待て、なんで私が。
ほら、宇佐美くんなんかすごいびっくりした顔で私見てるし。
「ユキー!」
と今度は真田くんのもとへ。
うわ、真田くんも変顔ではないけど驚いてるよ。
「ユキもいいでしょ?たくさんいたほうが楽しー!」
とテンション高い宇宙人。
宇佐美くんが「お前、本当にすんのか」と口を動かす。
いやあのですね、と抗議しようとしたけど宇宙人がいぇーい!と声を上げた。
もういいや。どうにでもなれ。
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