「このバカ太子!仕事しろ仕事!」
「痛い痛い痛い耳たぶを引っ張るなバカタレ!」
「早く仕事しなさい!」
「あっ名前!助けるでおま!」
近くを通りかかった名前を見つけ、太子は妹子の力が弱まった隙に手を振り払い名前のもとへ走っていった。
「名前!今すぐそのバカ取り押さえて!」
「やめろ名前信じるな!私を助けろ全力で!」
「え、えーっと…」
名前が行動するその前に太子は名前に隠れるように後ろに回った。妹子が走ってやってきたので、名前を挟む形になった。
「あなた、女の子の背に隠れるなんて恥ずかしくないんですか」
「うるさいわい!私はあるものは利用する性分なんじゃい!」
「それじゃ名前に失礼でしょう!」
そう言うと妹子は名前を自分の胸に寄せ太子から離した。丸見えになった太子はギャッ!と叫び、また走っていってしまった。
「…ったくあのバカ…」
追おうとした妹子だが、名前を抱きしめていると気付き、慌てて名前を離す。
「…名前?」
だが名前は妹子から離れようとせず、逆に妹子の胸へ顔を埋めていった。
「ちょっ…名前?」
困惑した声を出すと、名前はふふふと笑った。
「抱きしめてもらったの、久しぶりなので…」
「!」
「嬉しいです」
人の女を盾にした太子のことは許せないが、こういうことになるなら悪くはないと思った。妹子も名前に腕を回し抱きしめた。
「…抱きしめる以外もお望みなら、やってあげるけど」
耳元で意地悪そうに囁くと、名前は体を離し真っ赤な顔で何を言っているのです、と言って妹子を突き放しその場から逃げた。
とりあえず太子を成敗してからキスでもしてやろうと、妹子は恋人の背中を見つめた。
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