※学パロ



私は写真が嫌いです。
いつの間にか嫌いになっていて、カメラを向けられればフレームアウトするようになっていたので、私が写った写真は少ないと思う。

っていうか、写真くらいでいちいち興奮するほうがおかしいだろ、と廊下で群れる男女を見て思った。
そこには体育祭の写真が貼られていて、皆和気あいあいとしている。一枚10円だかなんだかで写真部がこの時期になると売っているそれは最早恒例行事。ちなみに私は一枚も買ったことがない。

くだらない、と口にしたら隣の席の河合くんが僕もそう思います、と言った。

「!…聞いてた?」
「聞こえました」

教科書を用意しながら河合くんが言った。ドアの開いた教室に廊下で騒ぐ生徒の声が聞こえてきた。

「たかだか写真ごときで何がそんなに嬉しいんだか。そんなに自分が好きなら鏡でも見てればいい」
「河合くん今いいこと言った。私もそう思ったよ」
「…ひねくれてますね」
「自分で言っといてそりゃないでしょ」

ひねくれてるなんて昔からよく言われていた。写真でしか思い出を作ることができない奴らのほうがどうかしてる、と私はその都度言い返してきた。

「本当に大切な思い出は忘れないんだよ。写真なんかいらない。邪魔なだけ」
「奇遇ですね。僕もそう思いましたよ」
「ひねくれてるね」
「合理的と言ってください」

こんなに会話が続いたの初めてだな、と私は思った。
隣の席は席でも、話すことなんてなかったからだろうか。河合くん無口だし。でも女子に人気だよな、この人。

「それにしても、何故あんなに賑やかなんですか?」
「それは多分、アレじゃない?好きな人が写っててそれを買う女子が騒いでるんだよ」
「…理解できない」

と怪訝そうに言った。
私はそれに追い討ちをかけようとくすりと笑った。

「多分ね、たいがいが河合くん目当ての女子だよ」
「…何ですかそれ」

想像してた以上に嫌そうな顔を私に向けた河合くん。新鮮だなと思った。

「河合くん、写真撮られたの少ないでしょ」
「カメラ向けられたらとりあえず逃げてましたから」
「だから、女子たちは河合くんが写った貴重な写真を探してるんだよ」
「気持ち悪いですね。相手の迷惑を考えないんですか、その人たちは」

眉間のシワを深くした。

「気持ち悪い?」
「想像してみてください。知らない人間が自分の写った写真を見て騒いでるんですよ。気持ち悪いじゃないですか」
「ああ、確かに」

とは言ったものの私には縁がない話なので想像できない。

「わからないって顔してますね」
「え、いや」
「だったらわからせてあげましょうか。苗字さんが写った写真買ってきます」
「うわっ、やめてよ!私写真写り悪いし、顔なら学校で見てるじゃん!あ、じゃあ私も河合くんが写った写真買ってやる」
「どうせ写っちゃいませんよ、僕なんか」
「そんなの私だって」

そうだよ、と言って財布を持って立ち上がると河合くんも財布を持って立ち上がった。
うわ、本気だよ。

「悪趣味」
「お互い様でしょう」

こうなったら意地でも河合くんの写真買ってやる。
隣を歩く河合くんが小さく笑った気がしたけど、多分気のせい。




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