※学パロ



「もしよかったら、文芸部に入ってみない?私が顧問しているんだ」

担任の芭蕉は名前にそう言うと、主な活動内容を教えてくれた。高校に入って部活をしたいと思っていた名前にとって、芭蕉のアドバイスはとても輝いて見えた。なんでも今年から発足したらしく、部員はまだ一人しかいないという。

「とりあえず体験入部してみてさ、考えてみてよ」

芭蕉は楽しげにそう言い、放課後部室に来るように言った。
部室はそう遠くなく、迷うこともなくたどり着けた。ドアには「文芸部部室」となかなか達筆な字でかかれた紙が貼ってある。
深呼吸をしてドアを開けた。

「し、失礼します…」

割と小さなその部屋にいたのは、一人の男子生徒だった。男子生徒は読んでいた本から顔をあげ、ドアを開けた名前を見た。目が合った瞬間、体が強ばったのがわかった。

「…何か用ですか?」
「あ、あの、文芸部の体験入部をさせてもらおうと…」

名前が要件を言うと、男子生徒はそうですか、と呟きまた本に目をやった。
立ち往生をしていると、座っていいですよ、と言われたので、とりあえず向かいの椅子に座った。

「…」

どこかで見たことがあるなと思っていたら、先日弓道部を見学に行った時にいた男子だった。
…あれ、じゃあなんで文芸部にいるんだろう。
疑問に思って彼を見ていると、本から顔を上げ目があった。

「この前」
「!はいっ」

目があった事にびっくりしたが、話しかけられさらにびっくりして目を伏せた。

「弓道場に来ませんでしたか、あなた」
「あ…はい、見学に…」
「入部するんじゃなかったんですか」
「し、視野には入れています。考え中というか…」

そうは言ったものの最初から自分に弓道はあわないと思っていたため、入部する気はさらさら無い。友達から誘われたため、少し強引に見学させられたまでだった。

「文芸部は?」
「あ…えと、入るつもりです」
「つもり?」
「あ、いえ!入ります!」

切れ目で睨まれ、咄嗟にそう言ってしまった。すると同時にドアが開き、芭蕉が入ってきた。

「え、名前ちゃん入ってくれるの!?」
「あ、いや、あの」
「入ると言ってましたよ。ちゃんと聞きました」
「やったね曽良くん!メンバーが増えたよ!」

ちょっと待ってて、入部届け持ってくるから!と、また芭蕉は部屋を出ていった。
戸惑う名前に曽良が愉快そうに言った。

「これからよろしくお願いしますよ、名前さん」

自分の名前を言われ、胸が高鳴ったのがわかった。曽良が本に目を落とし赤くなった顔が見られていないと確認してから、名前はよろしくお願いしますと言った。



(次は弓道部に入らせないとか)




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