春休み最後の日は読書でもしてのんびり過ごそうかと考えていた矢先に電話がかかってきた。

「はいもしもし」
「ねぇ明日学校とか本当?聞いてないんやけど」
「…自分宿題は?」
「終わっとらん。見せて」

うん、まぁこうなることはわかっとったで。そんな平和に終わるわけないもんな…。


少しくらいやっとるやろと思ったけど全っ然やっとらんかった。
ノートは白紙、プリントは真っ白、よくもまぁヌケヌケとこれまで生活しとったもんや。逆に感心した。

「名前、お前よくこんなになるまでほっといたな」
「嫌やほめんといて」
「ほめてへんわ。お前休み中なにやっとったん」
「カラオケ行ったりゲーセン行ったり有意義に過ごしとった」
「そないな無駄な時間があったら勉強せんかい」
「勉強そっちのけで遊んどったんや。無駄やないやろ」
「ん…確かにせやな……アレ!?ちゃうちゃう!なに言っとんねん!」

名前は俺の無駄のない綺麗な答えを汚い字で写していく。
こいつは幼なじみの特権を使い、俺をうまいように利用する。春休みの宿題やってそうや。もう今年俺ら受験生やで、大丈夫なんか。

「気ィ引きしめぇや名前。受験生やろ」
「蔵こそ部長やろ。幼なじみの宿題を手伝うくらいせぇや」
「手伝ってるやろ!やりがいがあるわーこんなに真っ白やと!」
「テストの勉強にもなるしな」
「一石二鳥やな。ってなに言わすねん」

俺の休日がこいつのせいでなくなった。なんやのホンマ。しかもこの態度。
これが英語の文章を写してあげてる俺への態度か。

「お前って、ホンマ無駄がないな」
「え?」
「いらん数式が一つもない。楽でええけどなんでこうなったのかわからん」
「俺さえわかっとったらええねん、別に」
「…自分の努力は」

俺のペンの動きがとまった。名前のペンの動きは止まらず、だらだらと文字を写している。

「……努力は自分に返ってくるもんやろ」
「努力は他人から評価されんねん」
「…なんやお前。らしくない」
「なんかの漫画でそんなんあってん。それ見て、なんや蔵にぴったりやなー思って」
「……そんなんええからもっと字を綺麗にせぇ」
「ほいさー」

なんかびっくりした。
まさかこいつにそんなことを言われるとは。

「ま、部長頑張れ」
「……お前は宿題を頑張れ」
「おん」

するとピピピピ、と携帯が鳴った。俺のじゃない。メールがきたらしく、名前は自分の携帯を開いてなんや、と呟いた。

「宿題の提出明日ちゃうやん」
「ハ!?」
「なんや蔵も知らんかったんかいな。じゃ、ええわ。帰る」
「待て!待ちなさい名前!宿題を置いて帰るな!」


全ての宿題が終わっていない方に。
宿題は早めに終わらせましょう。




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