理想郷様に提出
こいつとも長い付き合いだ。
幼稚園、小学校、中学校。そして多分高校、大学でもこいつに世話をかけるだろうしこいつは私に世話を焼くんだろう。
「なーんかさぁ」
「はい?」
「お前って彼氏っていうより兄貴みたいだよな」
「貴方こそ彼女というより手のかかる妹みたいです」
「言うようになったな、お前」
でもそれは本当のことで、付き合いが長いせいで恋人同士になった今でも私たちの関係はこんなものだった。
…あれ。私たちなんで付き合ってるんだろ。
「恋人っぽいことをしたい」
「こうやって毎日一緒に登下校してるじゃないですか」
「遠距離恋愛するために今から志望校変えようかな」
「別に止めませんけど家隣同士じゃないですか」
「…意味ないな」
「そうですね」
近すぎて、こいつの存在がよくわからなくなる時がある。
「わかんない」
「何がです?」
「なんで私ら付き合ってるのか」
「…」
そこで黙るなよ。
「…私にもよくわかりませんね。前からこんな関係だった風にも思います」
それも一理ある。
家が近いってこともあって幼稚園に上がる前から一緒に遊んでたし、小学校でも登下校は一緒でお互いの家に行き来して遊んでた。
考えてみれば今こうやって恋人同士にならなくても、こいつとの関係は変わらなかったかもしれない。
…あれ?つまり…あれ?なんだよくわかんない。
「もしかしたら私たちは、こうなるさだめなのかもしれませんね」
「…ん?」
「つまりずっと昔から、貴方と私は常に一緒で、それは今も未来永劫受け継がれていくのです」
「…つまり、私と柳生はこうなる運命だと」
「そうですね」
いいようにまとめたな。
「恥ずかしいこと言うなよ」
「おや、恥ずかしかったですか?昔は私のことを「比呂士」と呼び捨てにしていた貴方が」
「恥ずかしいから柳生って呼んでんじゃん」
「他人行儀ですね」
「うっせー」
運命なら、抗っても仕方ないか。
「また明日」
「ええ、また明日」
そして未来永劫、私たちはこういう仲なんだろう。
それもそれで悪くはない。
「ちょっと待って比呂士」
「!」
「ご飯食べてかない?」
久々に名前を言ったら奴は少し驚いていた。
「では、お言葉に甘えて」
そう言って笑った。
これが私たちのなんてことない日常。