※学パロ



「バイトしようと思うんだけど、どこがいいかな?」

おもむろに声が聞こえた。
また何か言ってるよ、と思って後ろの席の名前を見ると、求人雑誌を広げ俺の返事を待っていた。

「バイトすんの?」
「高校生の収入源ってそれくらいでしょ?」
「何か欲しいもんでもあんの?」
「特にはないんだけどね」

なんじゃそりゃ。
ペラリと紙をめくった。

「あ、でも買い食いするお金が欲しい」
「買い食いって…」
「帰り道アイス食べながら帰りたい」
「それくらい奢るよ」

彼氏なんだから、と冗談もほどほどにしろと言いたい嘘をついた。もちろん冗談だ。

いや付き合ってないし、と名前が笑いながら言うのを待っていたのに一向にその言葉が返ってこない。
不安になって横目で名前を見ると、目を見開き顔を赤くし僕を見ていた。つまり驚いていた。

予想外だ。予想外の出来事が起きた。
僕の予想ではさっきも言ったように笑い飛ばすか、冗談を冗談で返しお互いに笑う、という仮説を立てていたのに。なんだこの空気は。まるで僕が悪いみたいじゃないか。

「……いや、あの…冗談だけど」

何も喋らない名前に恐る恐るそう言うと、二、三回目をまばたきをし、またみるみると顔が赤くなっていった。

「だ、だよね!そうだよね!ごめん結構びっくりした!」
「ああ…そう」

と素っ気ない返事をすると、名前は前髪をいじった後、雑誌で顔を隠した。
かくゆう僕も顔が赤いというか、恥ずかしい。まさかこんな展開になるなんて。

僕ら二人しかいない教室を見て、放課後なのになんでこんなとこにいるんだろうとかいまさらながら考えだした。
そろそろ委員会が始まる。どうしようか。

「…あのさ」
「な、なに?」

肩をふるわせた名前だが、まだ顔を隠している。相当驚いたに違いない。
今から言う言葉を頭の中で5回くらいリピートして、いつも通りを意識し軽く深呼吸する。

「お前さえよければ、彼氏になるけど」

と言うと、雑誌から顔をあげ、へっ、と呆けた声を出した。
目が合ったのが恥ずかしくなって机に掛けたカバンを取って立ち上がった。

「じゃ、考えといて」
「え、ちょ、鬼男どこ行くの!?」
「委員会!返事はいつでもいいから!」

そう言って逃げるように教室を出た。名前を呼ばれた気がしたけど無視して廊下を走った。
生徒会室でからかわれないよう、顔でも洗おうかと誤魔化しながら。




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テーマ「人外ファンタジー」
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