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「起きろ!」
「!?」

頭に衝撃が走った。

「ったく…何金縛りにあったみたいに爆睡してんだよぃ」
「…あれ…。気のせいかな、ブン太が見える」
「ハァ?何言ってんのお前」

赤毛でガムを膨らますこの男は…ブン太、だよね?

「……今何時?」
「もう昼休みだよ。メシメシ!」
「……病院とか、天国っていうオチではなく?」
「…お前大丈夫?」

ブン太が心配そうな顔をした。
…どうやら不思議な夢を見ていたらしい。

…いや待てよ、もしかしたらこれも夢かもしれない。

「ちょ、ブン太!雅治は!?」
「え、さっきジュース買ってくるとかいって自販機に行ったけど」

俺は教室を飛び出した。
どこだ雅治!どこにいった雅治!

「…!」

いたぁああ!
間違いないあの白髪は雅治だ!

「おーい雅治ー!」
「…あ?」
「とうっ」
「ぐはっ!?」

振り向く前に、俺は雅治の背中にドロップキックをお見舞いした。
蹴りは見事命中。すり抜けなかった。
すり抜けるかわりに雅治は廊下に倒れこみ、そんな雅治の背中に俺は跨がった。

「うわぁあ雅治だあああ!!間違いない、このヒョロヒョロさ!!間違いなく雅治だ!!」
「随分とアグレッシブな挨拶じゃのう…」

これ端からみたら異様な光景だろうなぁ。
女子が囁きあう前に俺は雅治から退いた。

「っちゅーかいきなり何すんじゃお前…!!骨が外れたらどうしてくれる!」
「そしたら俺の骨も折っていいよ」
「解決になってないじゃろそれ…よいしょっと」

ブツブツ言うものの立ち上がり、ホコリをとる雅治。
あー、なんだろうこの感じ。

「お前、よう授業中寝とったのう。魂ぬけたみたいじゃったぞ」
「え、あ…うん、まぁね」

いや実際魂ぬけそうになったんだよね。

「お前も自販機?」
「あ、うん。雅治、お金貸して。財布持ってくるの忘れた」
「ポケットとかにないんか?」
「そんなオッサンみたいな…」

と言いつつポケットを確認する俺。すると右ポケットに何かがあった。
なんだこれ…。
取り出すと、一枚のメモ帳だった。

「…?なんじゃそれ。何が書いて…」
「…いや、何も書いてないよ」

そう言ってまたしまった。

「ね、雅治奢って!」
「仕方ないのう…」


『これがもとの世界に戻っても君が持っていたら、君は正真正銘、トリップしたってことになる』


彼女の言葉を思い出して、クスリと笑った。

そして彼女がくれたメモ帳には、本当に何も書かれてなかった。

「…そういやお前さん、メガネは?」
「え」

言われて気づいた。
メガネがない。
心当たりは、やっぱりあの時。

「…あー、うん、気にすんな!」

そう言って笑った。


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