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立海にきてまだ数ヶ月しかいない俺だって、自分の学年にだいたいどんな顔した人がいるかくらいわかってるつもりでいるけど、この子は見たことなかった。
そんな女子を見上げる俺は、多分相当間抜けな顔をしているだろう。
まさか本当に…

「…俺が見えるの?」
「見えるよ。声も聞こえる」

そう答えるも女子は、なんとも言えない顔をしていた。
この子からしたら、こんな質問をした俺が可笑しいんだろう。

見つけた。いた。
俺が見える人。
テニス部じゃないとか見ず知らずの人とかそんなんどうでもいい、いたんだ…。

俺は立ち上がった。

「…?」

不思議そうに俺を観察する女子に駆け寄り俺は、感極まって、抱き締めてしまった。

「…は?」

名も知らぬ女の子の呆けた声が聞こえた。
2秒くらい抱き締めて、ばっと体を離し、女の子の両肩をパンパンと叩いた。

「いっやぁああよかったぁああ!!実に数時間ぶりの会話だよ!!いや実際にはそんな経ってないんだけどさ!アハハハハ!」
「……」
「ありがとう!放送を聞ける人がいて本当によかった!」
「……なんで泣いてんの」
「あ、ゴメン、予想以上に嬉しくて……」
「……?」

眼鏡を外してごしごしと目をこすった。

んー、この子は誰なんだろ。
見たことないなぁ、こんな子…。

「あ、えっと、初めまして。七条楓です」
「…聞いたことないな。その制服、ここのでしょ?ネクタイも3年の…。3年?クラスどこ?」
「その質問には『立海中3年B組在住』とだけ答えるよ」

軽く自己紹介をして女の子を見ると怪訝そうな顔をしていた。

「…意味わからないな。私もB組なんだけど。不登校者?」
「…えーと、じゃあ…君ってどんなことにも動じず、案外サラッと受け入れちゃうタイプ?」
「事によるな」
「…じゃあ、聞いてくれない?俺の話」

ぴゅう、と風が吹いた。


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テーマ「人外ファンタジー」
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