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俺は今屋上にいます。
勢いだけで放送しちゃったけど…アレ、すごい恥ずかしいことしたよなぁ…。なんだよ渾身の一発芸って…持ちネタとか、そんなん俺ないよ…。
いやいやいや、後悔したって仕方ない。とりあえず、人が来ることを願おう。刹那に。いや間違えた切実に。
…つーか、来るのかな…。
あんな放送しておいた挙げ句、聞いた人がいたとしても「何さっきの!キモい!」とか思われたら終わりだ。
次の手を打たないと…。
でもあの手が最後のとりでみたいなもんだったし…。
後は一人一人、声をかけ続けるしかないのかなぁ。
うげぇめんどくせぇえ…。
…いや、待てよ?
俺はそもそも、俺が見える人を捜して何をしたいんだろう?
…そりゃあ、元に戻る方法を一緒に考えて欲しいってのがあるし…。
あっ、でもすごい怖い人だったらどうしよう。
それに、そんなことを考えてくれる優しい人だとは限らないじゃないか。
うぉおお結局一人かよ俺ぇ!
っていうかなんでこういうときに限って雅治は俺が見えないんだよ!
所詮薄っぺらい友情だったということなのか!?だとしたら俺は許さんぞ雅治!白髪!モヤシ!ペテン師!プッ。やばいなんか語呂よかった。
…いや、何一人で怒って一人で笑ってんだ俺。アホか。
はぁあ、とため息をついて、空を見上げた。
この空だけは、なんだかもとの世界と同じな気がする。
「…って、何俺はかっこつけてんだか…」
頭をポリポリとかいた。
…誰でもいいから来てくれよー。
またため息をついて、視線を落とした。
「ねぇ」
声がした。
「君だよ、そこの俯いてる君」
顔を上げた。
「そうそう、君」
女の子がいた。
「…君が、あの放送をした男子、ってことでいいのかな?」
オレンジ色のパーカーを着た女の子は、不審そうな目をしていた。
「…聞いてんの?」
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