オマケ
「…まだメガネ見つかんねーの?」

部室で日誌を書く俺に、ブン太がガムを噛みながらきいてきた。

「そーなんだよねー。まぁ、スペアがあるから困らないけどさ」
「まぁ見つかるだろそのうち」

そのうち、と言われましてもね。
多分一生かかっても返ってこないだろうね。何たって落としてきたのが異世界なんだから。

今はもう放課後。
あっちの世界の折原さんは、今頃何をしているんだろう。

「…よし、日誌終わり」
「おー、お疲れ。早く帰ろーぜ」
「ハイハイ」

そういえば。
折原さんって、B組なんだっけ。なら、ブン太や雅治と接点あるはずだよな。

「なぁ雅治」
「ん?」
「折原心亜って名前の人、知ってる?」
「は?何?オリハラ?」
「うん」
「いや…知らんぜよ。聞いたこともない」
「…ま、そうだよね」
「?」
「誰だよぃ、それ。彼女?」
「ブン太も知らない?」
「知らねぇな。誰?」
「あー知らないならいいよ、忘れて」

変なの、と言って2人は首を傾げた。

何聞いてんだ俺。同一人物と言えど記憶を共有してるわけじゃないのに。

2人の数歩後ろを歩き、折原さんはこいつらと何をしているのかと考えてみた。
俺があっちにいなくても雅治たちがいるなら、彼女は雅治たちと何かしらの交流をしてるハズ、だよな。

「…聞いときゃよかったな」

制服のズボンに手を突っ込んで、彼女がくれたメモ帳を触った。
これがある限り、俺は異世界へ行ったことになる。
どんなファンタジーなんだか。

「…!」

ふと横を見た。
見えたのは石像。

そこから、何かレンズのようなものがあるのか光を反射している。

「…?」

何だろう。
少し気になって、前を歩く2人を止めず、石像へと向かった。

近づいていくうちに、その反射しているものがわかった。

「…メガネだ」

黒い縁のメガネ。
紛れもない、俺のだ。

「…なんで?」

メガネに手を伸ばすと、その下に紙が置いてあった。
何故だろう。前にも触ったことがある気がする。

まさか、彼女が?

急いで紙を取る。小さなメモ帳だった。



『忘れ物 折原』



「…あははっ!」

紙にはそれしか書かれていなかった。
忘れ物、って…。いっそのこと叱ってくれればいいのに。
しかも折原って書いたなら、七条とも書いてくれればいいのに。
ああ、いかにも彼女らしい。

「…ありがとう」

またくすりと笑った。

「楓ー!何してんだよぃ!」
「道草食っとらんで、早く帰るぜよ」

遠くから2人の声がした。

「おー!今いくー!」

俺は2人のもとへ走っていった。


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