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「…いない」
七条楓が落ちたであろう地点に着いたけど、死体は転がっていない。
それどころか血も見当たらない。
地面にもそれらしき跡はない。
「…」
無事、帰った…ってことか?
…まさか、あんなことで戻るなんてね。あ、そう言えば一発芸してもらうの忘れてた。
「…ま、いっか」
あくびをして、その場にしゃがんだ。
メガネとか落ちなかったのかな。
「折原先輩?」
「!」
「何してるんですか?捜し物?」
後輩の筒井梓がきた。
「ううん、サボり」
「へぇ…」
「君は?」
「ああ、私は理科の野外調査といいますか…。ちょっとバケツ取ってくるとこです」
「ふぅん…」
「あまり長居しちゃうと、怒られるんで…じゃあまた」
「あ、ちょっと待って」
「?」
通りすぎようとする彼女を呼び止めた。
「昼休みの放送…あれ何だと思う?」
「昼休みの…ああ、アレですか。変な奴もいたもんですよね。一発芸だとか屋上に来てだとか…」
「…」
「あいにく忙しかったし、関係なかったしで結局行かなかったんですけど…。折原先輩は行ったんですか?」
「いや、行ってないよ。ごめんね、引き留めて」
「…?はぁ…。…あ、そうだ。さっきこれ拾ったんですが、折原先輩のですか?」
彼女の手のひらには、黒い縁のメガネがあった。
「…ああ、そう。無くしたと思ってたよ」
そう言って私は、彼のメガネを手に取った。
-end-
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