立海テストが終わって部活動が始まった。部活動が始まる前にテストが返ってきたわけだが、皆赤いペンで書かれた数字に一喜一憂しているのはどこの学校でも変わらない。
七条楓もその一人である。
さすが伝統校。一中(前にいた北海道の中学)と比べ、レベルも質も違う。
自信はあったが、順位はまあまあ。最高点は95点。最低点は54点。まだ返ってきてないテストは4つ。最低でも700後半は欲しい。
うーん、こりゃまずまずかな。
模擬テストだと取れるんだけどなぁ。
「楓ー」
「ん?なに?」
やつれ顔のブン太がやってきた。
「…どーよ。俺今のところ主要教科以外全部60点以下だったんだけど」
「えー?あれだけ保健やったのに」
「るせっ。お前保健体育何点だよぃ?」
「95」
「高っ!!」
「ドヤ」
「何が高いって?」
仁王登場。
その前に説明しておくと、楓が最高点95点を取った科目は保健体育のみである。
「楓の保健体育の点数」
「95。どうよこれ」
「あー負けた。俺76」
「なんでお前らそんなとってんだよぃ。俺が可笑しいの?」
ブン太が引きながらつっこんだ。仲のいい友人二人が保健で高得点をとっている事実が少し怖かった。
ちなみにブン太は51点である。
「にしても…楓すごいのう」
仁王が楓が持っていたテスト用紙を覗きこんだ。
さっき返された社会のテストである。
つられてブン太も覗き見る。
「社会93とか…てめー…。俺への当て付けかよぃ」
「ノート暗記すりゃこれくらい取れるよ」
「ちょ、見せんしゃい。どこ間違ったんじゃ」
いいよ、と楓は仁王にテスト用紙を渡した。
点数がいいと見せてって言われても快く承諾するよね。
仁王とブン太は間違った箇所を探す。
すると解答欄にこんな解答があった。
ワンピース
「………」
「………」
それを見つけてしまい固まる二人。
日本人なら誰でも知ってる海賊、麦わらの一味が探している財宝の名前とそれまでの経緯が描かれている漫画のタイトルである。
「ちょい、ちょいちょいちょいちょい、楓。社会の問題プリーズ」
「ん、はい」
二人ともあの問題じゃないかと心当たりがあったが確認のため問題と照らし合わせることにした。
「…あ、あったこれだ」
「……」
問3 コロンブスが航海で発見した島を答えなさい。
「………」
「………」
そしてまた固まった。
問題にはご丁寧に「島」と書かれている。
つまり島の名前を書けばいいのだ。
正解の「サンサルバドル島」はノートに赤ペンで書かれていたため、仁王もブン太も間違わなかった。
いわゆるサービス問題である。
つまり目の前の男は
ノートを暗記したにも関わらず
問題にご丁寧に島と書かれているにも関わらず
というか解答欄にも「島」と印刷されていてよく見ると「ワンピース島」と書かれていて見直せば違和感が浮き彫りになっているのに
間違いに気づかず、罰をくらったのである。
「………」
「………」
「?」
…なんで?
いやわからん。あれじゃない?わかんなくて仕方なく埋めたとか
あー確かに忘れちゃうことってあるよね
仁王とブン太が無言のやり取りをする。
「なにさ。おかしな答えでもあった?」
「…いやお前」
「ワンピース島ってなんじゃ」
「あーそれね。社会の先生がワンピ好きって言ってたからさ、これ書いたら100点にしてくれるかなって」
「…………」
馬鹿である。
ごくまれに見る馬鹿がいる。
「…………だったらお前、空島にしとけよ。先生怒ったんじゃね?」
「でも内申点は上がったと思う」
「んなわけねーだろぃ」
こんな間違いをしていても点数が93点であることに対し、仁王は腹を立てた。
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