氷帝

「日吉ってよく下剋上って言葉使うよな」
「ええ、まぁ。…なんです急に」
「誰かはっ倒したい奴でもいるのか?協力するぞ」
「相手が跡部さんだとわかって聞いてるでしょアンタ」

七条先輩は手に竹刀を持っていた。



「やっぱり跡部だったか」
「跡部さんじゃなければその竹刀どうするつもりだったんです?」
「お前をぶん殴る」
「八つ当たりじゃないですか」
「ちげぇよ愛のムチだよ愛のムチ。先輩としての好意だよ」
「アンタの外見でそういうこと言われるの怖いんですけど」
「気のせいだ。…で?どうやってはっ倒す?あいつのロッカーの中にダンゴムシでも詰めとくか?」
「下剋上はイジメじゃないですよ。それに俺は真っ向から挑みたいし」
「じゃ、これ貸すよ」
「は?」

七条先輩が竹刀を突き付けてきた。

「真っ向からいくんだろ?いってこい」
「説明不足でしたねすみません。俺はテニスであの人から部長の座を取りたいんですよ」
「俺はあいつが苦しむなら何をしたっていい」
「自分でやってくださいよ」
「あ、七条先輩、日吉。何してるんですか?」

鳳が来た。

「鳳、お前跡部の弱味知らねぇ?」
「アンタ結構意地汚いですよね…」
「手段を選ばないと言え人聞きの悪い」
「跡部さんって弱味あるんですか?俺知らないですね…」

真面目に答えなくていいということを学習しろ、鳳。

「跡部ってさぁ、よく試合中にも関わらず変なこと言ったりするだろ?アレはどうなんだ?」「いえアレは違いますよ」
「本人はよかれと思ってるんです。そっとしといてやって下さい」
「あいつってなんなんだよ一体。…鳳もよく一球入魂とか言ってるよな」
「あ、ハイ!なんていうか、入りそうな気がするんです」
「甘いな。そんな言葉の暗示に頼ってるんじゃ、まだまだだぞ」
「ふーん…。鳳、ちょっとボール貸して」
「え?」
「暗示かけてみる」
「まさか竹刀で打つ気ですか?」
「いや、いいところに跡部がいるから、暗示かければ当たる気がする」

どうしようこの人馬鹿だ。

「や、やめといたほうがいいですよ先輩!もし当たったら跡部さん、何するかわかりませんよ!」
「安心しろ鳳。どうせ当たらない」
「野球感覚でいくのとテニス感覚でいくのどっちがいいんだ?」
「野球感覚で竹刀振られたら俺たちが怪我します」
「ボールを高く上げてサーブ感覚でやったらどうでしょう」

という鳳のアドバイスを聞いてボールを高く上げた。

「…一…球…入…魂!!!」

バシィンと竹刀にボールが当たった音がした。
そしてボールは

「痛ッ!?」

奇跡が起こった。

「あっははははははざまぁみろ泣きボクロ!!下剋上だバーカ!!」

目に涙をためて笑う七条先輩を横目に、俺たちは戦慄した。
この人、運動神経よすぎだろ。
そして小一時間、跡部さんと追いかけっこをしていた。



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