立海気を取り直して昼食
「最近俺んちポルターガイスト起きるんだよね」
「物騒じゃの」
サンドイッチを食べながら楓が言った。今日の話題は、怖い話らしい。
「アレが原因かなー。この前ホラー映画を部屋暗くして見ててさ。なんかああいうの見てると実際変なことおこるとか言うよね」
「あー確かにな」
ジャッカルが同意した。楓も失敗したなーなんて呟いている。
いちご牛乳を飲み終えたブン太が、紙パックを机に置いてから言った。
「ってか楓って怖い話とか平気なのかよぃ」
「全然平気。むしろ好き。むしろ笑う」
「タチわりー」
爽やかな顔からは予想できないことを言った楓。柳生とは正反対じゃのう。
「えー、だってホラー映画面白いじゃん」
「どこがだよぃ」
ブン太がすかさずつっこんだ。俺もよく理解できん。
「何も知らずに主人公が物音確かめに行ったら幽霊に襲われたりとかする場面。うわこいつ馬鹿じゃね?話の流れと空気でこうなることは予測できたろ(笑)ってなる」
「ホラー映画ってそういうモンじゃろ」
「話を戻すけど、ポルターガイストって例えばどんなだよ?」
このまま話してたらどんどん違う方向に向かってしまうと感じたジャッカルが、素早く話の軸を戻した。ナイスジャッカル。
楓が新しいサンドイッチを袋から取りだし喋った。
「あーうん。俺しかいないはずなのに誰もいない部屋からラップ音がしたり。立てといたはずの写真立てが落っこちてたり」
「うっわこぇえ!!」
「一番腹立つのが電気。幽霊だか何だか知らないけど部屋出る時は消せっつーの」
「そこ?」
「夏場になると電気代高いんだよ。こまめに消しとかないと」
こいつはたまに主婦みたいなことを言う。そういやもう6月か。まだ梅雨はきとらんのう。
「まぁ、やっぱり怖ぇよなぁ」
ジャッカルが唐揚げを箸で掴み、苦笑いをする。
「盛り塩しといたほうがいんじゃね?そのうち金縛りになるぜぃ」
それを聞いた楓は盛り塩かぁ…なんて呟いている。まさかやる気か。いや、まぁやりたいならやればいいんじゃけど。
…あ、そういえば幸村が前ゆうとったの。
「金縛りで思い出したんじゃが、幸村も入院中はよく金縛りにあった言うてたのう」
「うわっ、まじで!?」
「リアルなのキター」
「病院だから余計怖ぇな。でも俺は夜の学校のほうが怖いぜぃ」
「そうか?いつも通ってるから怖くはなくね?」
「昼間とは違う怖さがあんだろぃ!あー考えただけでも怖い!」
ブン太が身震いした。
「俺はやっぱり病院かなぁ」
「へー」
「あの独特な怖さはなんとも言えないよねー。真っ暗だし、入院中は怖かったなぁ」
楓がしみじみしながら言った。
「?何じゃ、入院したことあるんか?」
「うん。小3の時に犬と追いかけっこしてたら盛大に転んで骨折った。いやー痛かったなアレ」
「今日一番気になる話なんだけど!は!?犬と追いかけっこ!?」
「いやマジだって!犬がさぁ、俺のおやつのアイス食べて、待てゴルァアって家の中走り回ってたらコードに躓いてさ。めちゃくちゃでかい音したらしい」
「「馬鹿じゃの/だな」」
ジャッカルとハモった。ブン太はうわぁ、と苦笑い。
「1日だけ入院することになったんだけど…。そしたら兄がさ、アイス食ったの俺なんだ、ごめん、って泣きながら謝ってきて」
「…笑えばいいのか?」
「笑えばいいと思うよ」
「シンジくんみたいに言われても困るこの反応。いい兄ちゃんじゃねぇかよぃ。ってか楓兄ちゃんいたんだ」
「うん。今東京にいるよ」
それ以上何も言わず、楓はコンビニのおにぎりを開けだした。ふーん、兄貴がおるんか。東京にいる…っちゅーことは大学生かなんかか。
「そういや、骨って一回折れると折れやすくなるって聞いたんだけど本当?」
「ガセじゃね?」
「捻挫とかはクセつくとか聞いたことあるな」
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