氷帝

七条は北海道から引っ越してきて、前の中学は男子だらけの男子中にいたってのは聞いてる。
んで、前の学校では髪が黒かったらしい。

「なぁ七条」
「あ?」
「前の中学の時の制服って、何だったんだ?」
「学ラン」

クラスの女子がいっせいにこっちを見た。



「学ラン!?マジで?」
「マジで」

貸したワンピースを読みながら七条が答えた。

「でもお前氷帝の制服じゃん。金もったいなくね?」
「引っ越し先の、まぁ今住んでるとこの近所に氷帝通ってた人がいて、貰った」
「へー…。なぁ、前の中学の時の写真とかねぇのか?」

俺がそう聞くと、七条は嫌そうな顔を見せてから、しぶしぶ携帯を取り出した。

「何が楽しくて野郎の写真が見たいんだよ」
「じゃあお前は何が楽しくて野郎の写真撮ってんだよ?」
「ダチが撮ったんだよ」

あいつ携帯持ってなかったから、と付け加え、見つかったのか俺に携帯を寄越した。

「一番右が俺」
「へー…あ、本当に黒髪じゃねぇか」
「だから前言っただろ」
「仲良さそうだな…何してるとこだ?」
「凧揚げ」
「凧揚げ!?」

思わず七条の顔を見た。でも奴はやっぱりワンピを見ていた。

「…凧揚げやってる奴って本当にいるのか」
「え、やんねーの?」
「やるとこねーし…」

まぁ見れたしいいか。それにしても謎だ。こいつ前の中学で何やってたんだろ。

サンキュ、と一言言って携帯を返した。

「凧揚げ楽しいぞ、宍戸もやってみろよ」
「いや凧揚げの話じゃなくてよ。学ランってなんかいいな!応援団が着てるやつしか見たことねぇんだ」
「実際ちょっと違うけどな。まぁ、ウチんとこの応援団はそのまま制服だったけど」
「へー。いいよな応援団。気合い入るっつーか、かっこよくね?」
「やってるこっちは声出しとか、手の角度とか大変だぜ?」
「へー」

女子がギラギラした目でこっちを見てきたので気づいた。

「…応援団だったのかお前!?」
「ツッコミがおせぇよ」
「おまっ…なぁ、言えよ!もう7月だぞ言えよ!おせぇよ言うの!」
「あぁ!?聞いてこなかったのお前だろ!」

意味わからん。言ってくれてもいいだろ。

同じクラスだし席隣だったから結構七条のこと知ってると思ってたけど、こいつは自分のことは言わないだけで、実際謎だらけだった。

「…まだなんか隠してるだろ、言えよ」
「なんでちょっとキレてんだよ」
「本当は彼女とかいるんじゃねーのかよ!」
「いねーよ!」
「じゃあ彼氏か!?」
「もっとねぇよアホか!!」

さすがに女子に睨まれた。
でも何人かキラキラした目でこっちを見てきた。


その夜。

女子数人から「七条くんの写メちょうだい!」とメールが来た。
本人に言えよ。



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