氷帝-2

「だぁから俺が洗濯する時には持ってきとけって言っただろォがァ!!!」

ガシャアーンと金網の扉を開けてコートに入ってきた七条。手には洗濯物とおぼしきTシャツがたくさん。
言っとくけどこれがデフォルトや。

「宍戸と向日!!てめーら何度めだオラ!!いつも4時半までにカゴにシャツ入れろっつってんだろーが!!」

叫びながら、手に持ったTシャツを地面に叩きつけた。
さっきの言葉からして、叩きつけられたTシャツは宍戸と岳人のものらしい。
そしてTシャツを叩きつけたこいつこそ、俺らテニス部のマネージャーの七条司。超真面目な綺麗好き、超A型人間。

マネージャー業初日で本性を知った俺らは、ホンマに驚いた。人を見かけで判断したらアカンってこういうこと言うねんな。
ちなみに、宍戸と岳人は七条の説教常習犯や。

「いや、悪い…」
「いい加減にしろやお前ら!!お前らの分だけまたやり直さなきゃなんねーだろうが!!たった3枚のTシャツの為に!!洗剤が余計に減ってくんだよ馬鹿が!!」

長々とネチネチと七条の説教が響く。
宍戸は心底うざったそうに謝罪の言葉を述べ、岳人は冷や汗をかいている。

「次から気をつけるから、いやマジで」
「あと忍足!!お前またTシャツ裏返しのままカゴに入れたろ!!裏返したら直せっつってんだろーが!!」
「あ、ハイ、スンマセン!」

えーいきなり俺に矛先向けんといてよ。この中やら比較的上手くやってるほうやん。
でも七条の怒りはおさまらない。

「お前らマジでいい加減にしろよ!!言い付け守るの2年と平部員だけじゃねーか!!自惚れてんじゃねーよビチクソ野郎が!!!」
「汚い。言葉が汚い」
「案外傷つくものがあるからやめて本当に」
「悪かったって…」

こんな外見はV系、中身はオカンいうギャップがこたえて、七条には今、だいぶファンが増えた。
いや、もとから顔はよかったんやけど見た目がワイルドゆうか、コワモテやったから近づきづらいってのもあってか女子からは遠目に見られてたんや。

ギャップって凄いな。

今も制服やなくて自前の黒いジャージを着て仕事しとる。
写真部がこの格好の写真一枚800円で売っとったな。本人はそのことを知らん。

「あ゛ーッ!!!もうほんと決まりくらい守れや!!」
「決まりっつーか、お前が勝手に言ってるだけじゃねーか…」

宍戸、ごもっとも。

「るっせぇよ!!誰がお前らの汗臭いTシャツを運んで手洗いして干してると思ってんだ!!お前知ってるか!?こびりついた泥は一度手洗いしねぇと上手く落ちねぇんだよ!!」

知っとるわそんなん。

「ええっ!?そうなのかよ!?」

岳人が驚きの声を上げた。オイ岳人。

俺が哀れみを含んだ目で岳人を見ていると、コートの外から声が聞こえてきた。
女子の声や。確実に跡部やな。
その声が耳に入ったのか、七条は仕事モードに取りかかる。
地面に叩きつけたシャツを拾い上げ、俺らを見た。

「あーもういい。もうTシャツねぇだろうな」
「ああ、もうない」
「マジで悪かったって」
「じゃあさっさと練習しやがれ。また前みたいにボール一つでも無くしたら承知しねぇからな」
「わ、わかった」

と、残してコートから出た。鬼が去った。
ボールの個数わかってるって、お前どんだけA型やねん。几帳面すぎて、軽く引くわ。ホンマ。


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