氷帝と、いうことで忍足、ジローなしで昼休み
「でさぁ、今日学校に来る途中で猫の死体見つけちまってよー」
「ほうほう」
「内臓やら何やらが結構出てて…気持ち悪かった」
向日がどんよりとした顔で牛乳を飲んだ。こいつまだ背が小っせぇの気にしてたのか。
「でも実際車乗ってる時とか急ブレーキかけて止まるよりそのまま轢くしかないみてぇだけどな」
「ええマジで!?」
俺がそう言うと向日が叫んだ。宍戸も驚いた顔をしている。
「急ブレーキかけて猫を助けたとしてもその急ブレーキのせいで後ろの車がぶつかるだろ。そういう場合事故になっからリスクがでけぇとかなんとか」
「まぁ、確かにな」
「でもやっぱ可哀想じゃね!?動物愛護精神を持つ俺としては心が痛い」
向日が唐揚げを食べながら言った。なんだか説得力がない気がするが、まぁそれは置いておく。
…ああ、そういや楓が言ってたな。
「そういう死んだ猫とかに可哀想だとか思うと憑(付)いてくるんだってな、霊的な何かが」
「ええええマジでかぁああ!!!丁寧に合掌までしちまったんだけど!!」
「あーあ、そりゃもう駄目だな」
宍戸もニヤニヤ笑った。向日はこのテの話が苦手らしい。
「夜寝ていると突然金縛りにあい、ニャーニャーと猫の鳴き声がして向日は夜な夜な恐怖に蝕まれ…」
「やめろ馬鹿野郎ォオ!!」
涙目になって耳を塞ぐ向日。面白がって悪ノリする俺と宍戸。超面白い。
「そういや最近肩が痛ぇ」
「憑いてんじゃね?最近事故現場に遭遇したとか」
「そういや近所のじいさんが死んだ(嘘)」
「俺を置いて怖い話すんなぁ!!」
宍戸の冗談に付き合っているだけなのに向日は本気にしていた。あ、猫で思い出した。
「猫で思い出したんだけどよ」
「だーもういいって!!話すな!」
「まぁまぁ聞けよ。これどっちかっつーと笑い話だから」
と言うと、恐る恐る向日は耳から手を離した。
「何だよ?」
宍戸がサンドイッチを手に取り言った。そういや最近食ってないな、サンドイッチ。
「小3の時によ、猫飼ってたんだよ」
「へー」
「あれは雪が降ってた寒い夜のことだ…」
「え?回想始まんの?」
めちゃくちゃ大雪でなぁ、こたつがぬくいのなんのって。だから布団で寝るのが嫌になってこたつで寝ることにしたんだよ。
で、案の定ぐっすり寝ちまって気がついたら朝になってた。
外は雪が積もってて、当時飼ってた猫も外に連れ出して遊ぼうってなって、弟と一緒に家中猫を探し回ってた。
「…でも、いくら探しても出てこなくってな」
宍戸も向日も黙って聞いている。
「…なんか心なしかお前ら顔こえぇぞ」
「いいから話せよ、気になんだろ」
宍戸が神妙な面持ちで言う。向日は怖いのか固まっていた。笑い話だっつってんのに。
…で、あ、探してないとこあった、って弟が言ってな。こたつの中みたらよ
「猫がそりゃもう、カッチコチに固まって冷たくなって死んでたんだよ。面白いだろ?」
はははと笑い数秒後、宍戸が叫んだ。
「面白くねーよ!!!笑えねぇえよ!!!!!」
「やっぱ怖い話じゃねぇかクソクソッ!!!」
「え、渾身の面白話だったんだけど」
「どこが!?悲しくなってきたわ!!」
「え、前の中学の連中腹かかえて笑ってたぜ?」
「おかしいだろ!!」
向日がまた涙目になっていた。え?この話悲しいか?
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