立海

「おーい七条、真田と幸村が呼んでたぜってお前何してんだ」
「おおジャッカル。お前もどうだ、ブリッジ
「意味がわからねぇよ」

洗濯機の近くで発見した七条は、何故だか地面に手と足をつき、ブリッジをしていた。

「いやー、なんか血行がよくなりそうな気がして」
「おかしいぞお前」
「…ジャッカルって、逆さまに見てもハゲなんだな」
「それこそおかしいぞ。何だお前は。逆さに見たら髪が生えて見えるとでも?」
「だって雅治が」

仁王の野郎……。やめろよ悪ふざけでんなこと言うの…。こいつ根っからのアホなんだからよ…。

「で?何?真田と幸村?」
「ああ。っていうかもうブリッジやめろよ。顔真っ赤だぞ」
「血がのぼってきたか…。今思ったんだけど血がのぼるって表現、日本語としてはなんかおかしいよね」
「知らねぇよ!!!とっとと行け!!」



「なになに何の用?」

若干顔の赤い楓が部室にやって来た。

「む、七条。遅いぞ。たるんどる」
「血行促進中に呼び出すお前が悪い」
「相変わらず面白いね」
「え?まぁよく言われるよ」
「腹立つねそのドヤ顔」

幸村はクスリと笑いながら皮肉を言い、それに気づかず楓は2人に近寄った。

「で?なに?何の用?」
「ああ、お前には俺たちのマネージャーをしてもらっているからな」
「新入部員とあわせて俺たちと同じジャージを君にもと思って」

何を隠そう楓はマネージャーをしているが、黄色だらけのテニス部の中で一人だけ白いというちょっと色的にはミスマッチなジャージを着ている。
これはいかがなものかということで、幸村と真田は楓にも同じジャージを着てもらおうとした。

「え?絶対嫌なんですけど」
「なっ!?」

だが楓は考えることもせず返答した。しかも否定。真田は驚いている。

「俺そんなカレーの染みの色したジャージなんか着たくない」
「清々しいくらい包み隠さず言うね」

幸村はなおもクスクス笑い、楓はありのままの意見を言う。

「あっ…。そっか、黄ばんだ色って言ったほうがわかりやすかった?」
「なっ、そういう問題ではないわ!!一種の侮辱発言だぞ貴様!!!」
「えぇー?だってこればっかりは個人の捉え方とか好き嫌いの問題でしょ?俺は無理無理。絶対嫌」

真田が怒ってもこの通り。首を横に振るだけ。
幸村もふぅ、と息を吐く。おお幸村、お前からも何か言ってやれと隣に座る幸村を見た真田。

「まぁ確かに、少しばかり汚ない色だよね」
「幸村!?」

だが期待とは全く違う言葉を幸村は言ってのけた。
あ、幸村もそう思う?と意気投合し始める2人に距離を感じる真田。

「いっそのことユニフォーム変えようぜ。もっとオシャレな感じにさぁー」
「いいねソレ」
「おいっ!?」

結構気にいってたのですごく動揺する真田。着々と話が進んでしまっている。
無論、この場に真田のフォローに回る人間はいない。



「思いきって白とかどうよ」
「ああ、いいね」
「下も白?ならワンポイントに黒とかピンクとかのラインか」
「蛍光色だね」
「あ、じゃあ夜とかになったら光るやつ、アレ服全部に張り付けようぜ」
「!?」

楓の一言に反応した真田だが、どうにもこうにも幸村がいるせいか彼に発言権はなくただ2人をハラハラしながら見ていた。

「反射シート?なにそれウケる(笑)」
「夜チャリ乗ってたら全身が光るんだぜ?やべぇよ、かっこよすぎだろ」
「いいね、王者らしいよ」
「なら白じゃなくてもいっか。ピンクにしようぜ」
「ぶはっ(笑)ピンクって!!女子テニスみたいじゃないか!!(笑)」
「バーローお前、逆にオシャレだよ。流行の最先端だよオイ」

果たしてそうだろうか、と真田は一人思った。
だがその思いは伝わらない。

「あ、でも待って、ちょい待ち…そしたら問題が生じる……」
「え?」
「………」

ここでやっと楓が後ろにいる真田に目をやった。

「…!?な、なんだ」

それに気付き、戸惑う真田。幸村も真田を見る。
変な緊張感の中、楓が怪訝そうな声を出した。

「……真田が、ピンクだよ?」
「「…………」」

その一言で、真田がピンクのユニフォームに身を包みテニスをしている姿が脳裏に浮かんだ。


「「ぎゃっはははははははははははははははははは!!!!!!!」」
「勝手に想像しておいて勝手に笑うな!!!!!!!」

2人の腹筋が壊れ、笑い声が部室内に響く。ひー、ひー、と呼吸を整える2人にガツンと言ってやろうかと咳払いをした真田だが、楓が急に静かになりこう言った。

「アワーカイザー・イズ・ピンク(私たちの皇帝はピンク色です)」
「ブフッ(笑)」
「キェエエエ!!!!!!!」

笑い声と怒鳴り声は、コートにも聞こえてきたという。


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