37-1

「えー、今日の理科の補習なんだけど、自習です。今から配るプリントを解き終わったら、ここに答えあるんで各自持ってって、丸つけして提出。そしたらなにやっててもいいから」

クラス中がざわざわした。
俺は自習ラッキーって思ったけど、女子は自習監督に来た先生にバレない程度に舌打ちしていた。

「なんで入野先生じゃないのー?マジ萎えた」
「朝いたよね?」
「さいあくー。自主勉したから褒めてもらいたかったのにぃ」


…マジ意味わかんねー。
入野の授業より自習のほうが楽だし楽しいし。あいつ、「じゃあ切原ー」とか言って、毎っ回俺指してくるし。部活の顧問だからって調子こくなっつの。

若いだけであいつに群がる女子もどうかしてる。あーあ、ってか、今日入野いないなら補習やる意味あんのかよ。

「切原、あんたなんか知らないの?」
「あぁ?」

隣の席の女子が聞いてきた。邪魔すんなよ。俺は今から寝るんだよ。

「入野先生」

と呟き、食い入るように俺を見る。そんなに入野が好きかよ。ほんっとわかんねぇわ。

「…なんか一足先に合流しに行くんだと」
「合流?なにに?」
「遠征先。俺ら明日から遠征なんだよ」

ったく、めんどくせーな。







面倒です。非常に面倒です。
今さっきの出来事を、目の前の大惨事を、誰か私に説明してください。そんな人只今募集中。

「みきなちゃんなにやってるの!?」
「え」

顔を歪ませ、金切り声をあげる加藤先輩。それを見て聞いて、やっと意識が戻ってきました。

怒っている加藤先輩。
地面に落ちているおぼん。何故だかきっちり巻いたはずのサランラップが取れかけていて、真上から見えるは、おぼんの底。
つまり地面側におにぎりがあるわけですが、あれ、なんでこんな意味不明な落ち方なんですか。

…オーケイ、少し頭を整理しましょう。


私がおぼんを運んでいたら前方から加藤先輩が来ました。
審判どうしたんですかと言おうとしたら、「大変だね持ってくよ」なんて言われ、持っていたおぼんを掴んできました。

どうしようかと悩んでいたら、いいからいいから、と言うものですからじゃあお願いしますと手を離したら


「きゃあっ」
「!?え、ちょっ…」


離したら、加藤先輩の可愛らしい悲鳴と共に、おぼんが宙で一回転しサランラップが取れかけて地面とおにぎりが垂直になって、説明が下手でごめんなさい、まぁつまり、おにぎりを乗せていたおぼんが落ちたわけです。


…あれ、これ私が悪いんですか?っていうかなんでサランラップ取れたんでしょう。

「…はて」

私の疑問が自然と感動詞二文字となり声に出ていました。
それを聞いたのか聞かなかったのか、加藤先輩は不機嫌な顔でこちらを睨んできます。

「あのさ、あまり言いたくないけど、私をなめてる?そんなに私が信用ならない?」
「え」
「だってそうじゃん!私に任せてくれればこんなことにはならなかったんだよ!?」

ちょっと待ってください、さすがに意味わかりません。もしかするとやっぱりこれ私のせいなんですか。

「……」

もう一度視線を下にやって、視界をジャックする大惨事。

腰をおろしておぼんをひっくり返すと、やはり大惨事。サランラップの意味なかったですね。

無気力っていうか、脱力って、こういうことを言うんですね。



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