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小坂田さんから電話でした。
実はなにかあった時の為にと思い、小坂田さんとは連絡先を交換しておきました。
竜崎さんは携帯電話を持っておらず交換できませんでしたが。
加藤先輩はまぁ、いらないかなって。

それより何かあったのでしょうか。

「はい、もしもし?」
『あっ、佐鳥先輩!朋香なんですけど、今からお昼だそうです』
「ああ…わかりました。持っていきます」

視界に映った時計は11時45分を過ぎたところでした。
少し早いなと思ったんですが、体を動かしている身からしたらお腹はすぐに空くものだという結論に落ち着きました。

『あ、手が空いてる人たちがそっちに向かってるはずなんで、大丈夫ですよ』
「あー…はい。わかりました。とりあえずその人たちを待ってます」

お願いします!と元気な声が聞こえ、そこで電話が切れました。

成る程、こういうスケジュールですか。うーん、なんとも忙しい。あ、そうだレモンの輪切りをしなければ。

あーもう、忙しい。
別にはちみつ漬けを作らないといけないわけではないのですが、というより作らなくてもいいのですが、不二先輩に見られてしまった以上私はこれを無事に作り終えないといけません。
まぁこれは簡単なんでいいですけど、夕食どうするんでしょうね。
私午後から外でスコア付けたりボール拾いしたりするんですよ確か。

どう考えても作るの間に合わないと思うんですがどうなんでしょう。

こう、『合宿のしおり』的なものないんですかね。


ストン、とレモンに包丁を入れ、さくさくと切っていきます。
そういえば、幹也からリコさんのレモンのはちみつ漬けは洒落にならないって聞いたことあるんですよね。
確かにリコさん料理作るの苦手で、私も十分それは理解しています。バレンタインのチョコ作りでそれは垣間見えたのですが、それはまたの機会で。

まさかレモンを切らずに丸ごとはちみつに浸した、とかじゃないですよね。
リコさんともあろう監督がレモンのはちみつ漬けを知らないわけないです。

ではどんなはちみつ漬けを作ったのでしょう。

幹也も教えてくれなかったので今となっては謎です。

「佐鳥ー。手伝いにきたぞー」
「!」

おや、いらっしゃいました。

声のした方を向くと、そこには向日先輩。あと、ルドルフの赤澤先輩。
あとの二人は知らない人たちでした。

その知らない人たちに会釈をして、とりあえず料理を運んでもらいます。

「うおっ!?なんだこの量…」
「私と小坂田さんの努力の結晶です」
「二人だけでか…。人間やればできるもんだな。お前が来てくれてマジ良かった」
「はぁ…。一応学校ごとにまとめておいたんですけど、どうしますか?」

あーどうすっかと向日先輩が項垂れると、その隣に眼鏡をかけた人がやって来ました。

「外に小さな休憩スペースがあった。そこに持っていき、好きなように食べてもらえばいいだろう。午前中に試合ができなかった者と入れ換えで食事をすればいい」
「あー…そうだな。あとは監督がいいようにやるだろうし」
「あと何人か救援を呼ぶか。海堂、何人か呼んできてくれ」
「ッス」

と、海堂と呼ばれた人は小走りに部屋を出ていきました。

「っへー。さすが乾。信頼されてんな」

向日先輩がニヤニヤ笑いながら、乾と呼ばれた人を小突きました。

「どうだかな。…ああ、俺は青学の乾だ。佐鳥…だったか。合宿中はよろしく」
「あ、はい。こちらこそ」
「なぁ、俺たちだけでも早く持って行こうぜ」

赤澤先輩がそう言って、おぼんを一つ持ちました。


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