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今更ながら、スポーツドリンクの粉末を買っておいてもらえばよかったと後悔しています。
正直、スポーツドリンクを一から作るのは面倒くさいです。
それを毎日幹也はやってるというのですからすごいです。あっちの方がこっちより、人数は少ないけれども。

なんとか作り終えることができました。明日の分は夜に仕込んでおきましょう。

残ったレモンではちみつ漬けでも作りましょうか。まだレモンのストックはありますし。

ちなみに小坂田さんは次の指示を貰うべく、外へ竜崎先生を探しに行きました。
お昼ご飯はなんとか作り終わったので、問題は夕食です。

何を作りましょうか。
カレーなら楽だし…ああでも人数が人数なので作るのに時間がかかりそうです。

「……となると、早めに仕込まないと」
「何を?」
「!?」

自分しかいないはずなのに後ろから声がしたという超現象。
驚いて振り返ると、見覚えのあるジャージを着た人が。多分…青学の人。

「え…?あ、こんにちは」
「こんにちは」

混乱する頭でとりあえず挨拶をしておきました。
選手ですよね。なぜこんな所に?

「ごめん、驚かすつもりはなかったんだ」
「はぁ…」
「僕は青学三年の不二周助。佐鳥さんだよね、氷帝の」
「はい。よろしくお願いします」
「うん、こちらこそ」

なんとも美青年な不二先輩。この人が多分、聖ルドルフの不二くんのお兄さん。

というか、こんなところで何を?まだお昼ではないはず。

「救急箱、知らないかな?こっちに来れば佐鳥さんがいるから教えてもらえって、竜崎先生に言われたんだけど」
「あ…。玄関にまだ荷物が置いてあるんですが、黒のエナメルバックに入っているはずです」
「そっか、ありがとう」
「あの、誰か怪我したんですか?」
「ん?いや、擦り傷だからそんな大袈裟なことじゃないよ。佐鳥さんは平気?包丁で指とか切ってない?」
「大丈夫です」

そっか、と言うと不二先輩はまな板の上を覗き込みました。

「レモン?」
「はい」
「…ってことははちみつ漬け?」
「そうです」
「そう言えば最初仕込むとか言ってたけどこれのこと?」
「いえ、夕食のことです。人数が多いので早くから作っておけば楽かな、と」
「そっか。夕飯楽しみにしてるよ。人手が足りないなら加藤さんにも声かけてくるけど」
「いえ、結構です。…声をかけてくださるなら竜崎さんにお願いします」

私の返しにさぞ不審に思ったでしょう不二先輩は、小さくえ?と声を漏らしました。

でもすぐにああ、と納得したように頷きました。

「確かに料理苦手そうだよね、加藤さん」
「…仰る通りです」
「じゃあ竜崎さんに言っておくよ。頑張って、じゃあまた」
「はい、さよなら」

不二先輩は終始笑顔を絶やさず去って行きました。
氷帝の人たちの中に一人でもああいう、不二先輩みたいな人がいたらよかったのに。

「…さて、レモン切りますか」

中断していた作業を始めようとしたら、携帯電話が鳴りました。


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