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「祐太くんは、我が聖ルドルフのエースなんです。同級生ということもありますから、佐鳥さんとは弾む話もあるでしょう」
「でも話すと怒られるんですよね、俺」
「練習中に無駄話していたら怒りますよ。それ以外なら、話していてもいいんじゃないですか?」

んふ、と笑う観月さん…観月先輩。
不二くんはげんなりとした顔をしました。大丈夫です、私必要以上にあなた方に近づくと加藤先輩に怒られるので。

すると赤いハチマキをした人が私に近づき、クスクス笑って耳打ちをしてきました。
え、何ですか。

「青学に不二周助っていう3年がいるんだけど、そいつと兄弟なの、こいつ」
「あっ…そうなんですか」
「でもちょっと兄貴にコンプレックス抱いててさ、仲悪いんだよ」

あー…年子の兄弟、しかも男同士であれば確かに仲は悪くなりそうですよね。
私は女なのでよくわからないんですが。

「だから、『不二弟』とか禁句ね」
「わかりました」

とりあえず、聖ルドルフの不二くんが「不二先輩」でないことはわかりました。

「あ、俺木更津淳。よろしく」
「どうも、佐鳥です」
「名前は?苗字はさっきの自己紹介で知ってる」
「あー…みきなといいます」
「佐鳥みきな、か。うん、よろしく。で、あれが柳沢。俺のダブルスのパートナー。で、あっちが金田。君と同じ2年」

と言って勝手に紹介をする木更津先輩。
なんというか、この人たちもなかなか特殊な感じがするのは気のせいでしょうか。氷帝が変なのでこれは普通なのでしょうか。氷帝が変というか、跡部先輩が変なんですよね。

そんな跡部先輩と違い、この学校の部長はなんて真面目そうなんでしょう。
跡部先輩も真面目なんでしょうけどあの加藤先輩をマネージャーにした時点で可笑しいと思います。

「えっと…。じゃあ合宿の間、よろしくお願いします」
「ああ。こう見えても観月もマネージャーなんだ」
「え」
「おや、驚きました?選手兼マネージャーです」

愉快そうに笑う先輩。驚きましたよ。でも考えてみたら納得しました。

「だから、男手が必要になったらいつでも使ってくれ。…まぁ、こいつじゃ頼りないかもしれないが」
「おや、失礼なことを言いますね。僕だって男ですよ?それなりのことはできます。…と言いたいところですが、今回僕は選手として合宿に参加しているので、マネージャーの仕事はできないかもしれません」
「うわっ、いいように逃げただーね」
「本当はこき使われるのが嫌なだけ」
「こらそこ黙りなさい」

オホン、と咳払いをしてラケットケースを背負う観月先輩。どうやらミーティングは終了したようです。

「では佐鳥さん、お仕事頑張ってください」
「あっ、はい」

皆がラケットケースを背負っていると、開けっ放しの出入口から加藤先輩がやって来ました。
うわ、目があった。ええー、なんで私を睨むんですか。

「…おや、あなたは確かもう一人のマネージャーさんですね」

加藤先輩に気づいた観月先輩は変わらず挨拶をしました。すると顔がほころび、早足でこちらに向かってきました。

「3年の加藤理沙です!よろしくね!」

同級生ということもあってかフレンドリーに挨拶をする加藤先輩。
観月先輩は相変わらずにこやかに微笑んでいます。

…とりあえず、竜崎先生はまだでしょうか。



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