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「とりあえず練習内容は他校との試合だ。手を抜いてもいい。できるだけ多くの試合をしろ」
ダブルスをするもよし、シングルスをしてもよし、ペアは自由、他校と組んでもいい、と榊先生が言いました。
一見適当そうに見えますがせっかくの合同合宿です。榊先生の気配り。多くの経験を積め、ということでしょう。
「また体調管理は個人で調整しろ。体調がすぐれなければ悪化する前に休め。…これは、マネージャーにも言えることだ」
榊先生が私を見て言いました。小さく会釈ををすると少し笑った気がしました。
ああ、ちなみに加藤先輩は跡部先輩の隣にいます。
「ではコートに迎え。行ってよし!」
はい、と皆さんが意気込み、かくして合宿が始まりました。
で、私は何をすればいいのでしょうか。
選手にくっついて広間を出ようとした加藤先輩を榊先生が呼び止め、私も榊先生に呼ばれました。不服そうな加藤先輩。
「佐鳥、加藤。竜崎先生から指示をもらって、仕事をしてくれれば結構。私はコートにいる」
「はい」
「はーい」
「先生を呼んでくるからここで待ってなさい」
「あ、私トイレ行ってきますぅ。みきなちゃんは?」
「あ、いえ。私はいいです」
トイレにまで一緒に行きたくないですから。
榊先生は少し嫌な顔をして、迷惑をかけないように、と釘をさしてから広間を出ました。加藤先輩はそんな榊先生の背中を見てため息をつくと、イライラした足取りで追うように出ていきました。
立っているのも何なので椅子に座ると、同時にぞろぞろと団体さんが入ってきました。
「おや、こんにちは」
先頭を切って入ってきた人が私に近づいてきました。座っているのもなんなので立ち上がりこんにちはと挨拶。立ったり座ったりと大変です。
「聖ルドルフの観月です。ええとあなたは確か…佐鳥さんでよろしかったですか?」
「はい、氷帝の佐鳥です」
「どうぞよろしく。時に佐鳥さん、ここを少しの間使ってもよろしいですか?」
「あ、はい。じゃあ出てますね」
「いえ構いませんよ。さっさと終わりますから」
と言い踵を返し、他の人たちのもとへ向かう観月さん。その後ろから「あの観月と対等に話せるなんて…」みたいな囁き声が聞こえました。
「いいですか皆さん。このような機会を作った僕に感謝しながら練習に励んでください。練習内容は他校との試合ですが、練習サボってくっちゃべっているのを見られたらその時は覚えておくように」
…なんだか随分高飛車な人だなぁ。跡部先輩と同じ匂いがする。
「では、ここで会ったも何かの縁。佐鳥さん、軽く自己紹介をさせてもらってもいいですか?」
「あ、はい…」
ではこちらに、と手招きされたので近寄ると、観月さんは褐色のいい肌の男子の隣へ。
「こちら赤澤くん。我が聖ルドルフの部長です」
「お前が紹介してどーすんだよ」
ああ、この人が部長…。しっかりしてそうだ。
「どうも。佐鳥です」
「赤澤だ。よろしく」
「通称「ばか澤」だーね」
「は?」
「柳沢っ、余計なこと言うな!」
ばか澤…ですか。あだ名ですかね?
「まぁまぁ、本当のことじゃん。な、金田?」
「ええっ、うっ…」
とクスクス笑う赤いハチマキをした男子。の後ろでびくびくしている男子。それを遠目に見ている茶色い髪をした男子。
「!…不二祐太だ」
「あ…はい」
目があうと、あちらから挨拶してくれました。
小坂田さんが言っていた「不二先輩」とは、彼のことでしょうか。
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