03

確かにお人好しではありませんが、頼まれたら断れなかったりする私です。

そして今も、私は先生に頼まれて何が入っているかわからない段ボールを図書室に持っていきます。
何が入っているのでしょう。本でしょうか。

本といえば、今日ジャンプの発売日ですね。兄妹そろって愛読者だったりします。面白いですよね、スケットダンス。
単行本も小説も買ってます。笛吹兄弟の話に涙したのは私だけではないはずです。

無駄話をしていると階段に差し掛かりました。
あの、ちょっといいですか。

見えません、足が。

段ボールが邪魔で全く足元が見えません。
足が短いのは言わないでください。

上らないと図書室には行けない。なら上るしかありませんねわかりましたよ上ります。
一歩目を慎重に上り、あとはまぁ…リズム的な、勘でいきたいと思います。
毎日上ってるし、まぁ何とか…。

「佐鳥さん?」
「うわぁ!?」

後ろから聞こえた声に驚いて、右足が宙に浮いたままバランスがとれなくなりました。
そんな私を受け止めてくれた声の主、驚かさないでください。

あとこの声の主。
もしかしたらもしかすると、あの人ですか。

「あ、やっぱり佐鳥さんや」

…やっぱりあなたか忍足先輩。その薄笑い、やめてくれませんかね。



いいと言っているのに忍足先輩は段ボールを運んでくれています。

「ありがとうございます」
「ええよ、気にせんで」

気にしますよ。
関わりたくない人に段ボール運んでもらってるんですから。

「いえ、でも部活もあるでしょうしあとは私が運びます」
「あんま行きたないねん」
「え?」
「部活。なんや今めっちゃ雰囲気悪いねん」
「………」

それはあれですか。
加藤先輩あたりが原因ですか。

「ですが試合とか…」
「今週は合宿に備えて自主練習。嫌やわ、恥かくやろなぁ」

そりゃまぁ、マネージャーに色めきあってる部活なんて恥かきたくなくてもかきますね。

「練習したらいいじゃないですか」
「ドリンクも作れないマネージャーと、ハート飛ばしてる部員にまじってテニスすんのは地獄やな」
「ですがこのままじゃ本当に、部活の雰囲気どころか大会も…」
「俺もそう思う。せやから佐鳥さんにマネージャー、やってほしいんや」

なぜそこで私が出てくるんですかね。

「それは無理な話ですねぇ」
「ハハッ、せやろなぁ。俺もそんな雰囲気の中マネすんのは嫌やな」

忍足先輩は、日吉くんと同じで満足していないようです。

「マネージャーが嫌いなわけではないのでしょう?なら、また一から教えてあげれば」
「誰が好き言うたんや。俺は、大嫌いや」

少し怒ったように、先輩は言いました。
大嫌い、って。言い切ったところがすごいと思います。

「佐鳥さん、ホンマに頼めんか、マネージャー」
「心中お察ししますが、無理です。…私がマネージャーをしたとしても、とても改心できるとは思えません」
「…佐鳥さんは謙虚やな」
「いえ」

謙虚じゃないんですよ。
ただ、私が上手くマネージャーをしている所が想像できないし、加藤先輩の代わり、っていう所が嫌なんです。

「今日はすまんかったな。跡部は目的のために手段は選ばれへんねん」
「私もそう思います」

ハハッ、そか。と先輩は笑い、目的の図書室に着きました。

「ありがとうございました。あとは私が」
「ええって」
「いえ、頼まれていたのは私でしたし、悪いです」
「せやのうて…」

困ったように言う忍足先輩。早く部活に行ったらいいのに。

「侑士ー!」

すると後ろから甲高い声が聞こえてきました。
耳痛いです。大声コンテストでもするんですか。

やってきたのはツインテールの女生徒でした。
なぜだか見ていてイラッとしました。すみません、初対面なのに。

忍足先輩を見上げると、何だか嫌そうな顔をしています。どうしたんでしょう。もしや彼女が加藤先輩なる者ですか。

女生徒はニコニコ笑って忍足先輩に近づきます。
睨まれた気がしましたが気のせいってことにしておけませんか。

「侑士駄目じゃんー。部活サボっちゃあ」

語尾を伸ばすあたり私の嫌いな部類の人間に入ります。
あと部活なんて言ったのでこの人加藤さんですね。

「すまん」

素っ気ないな先輩。

「合宿もあるし。早く部活行こ!」

忍足先輩の腕を引っ張っりました。
よろけて段ボールが落ちそうになりましたが私が素早くキャッチ。ナイス私。

「……誰?」

私の顔をみて加藤さんなる人が言いました。若干声が低くなりましたね。

「後輩や。すまんな佐鳥さん、あとはよろしく」
「はい。運んでいただきありがとうございました」

加藤先輩はじっとこちらを見てました。気まずくてお辞儀をしたら、何コイツと言わんばかりに睨まれました。
実にすみません。

両手が塞がっていて開かないドアを、忍足先輩が開けてくれました。

ありがとうございます、と言うとええよ、と言って、加藤先輩に強引に引っ張られてきた道を戻っていきました。
忍足先輩が嫌がるのも無理ないですよね。

私も加藤先輩、嫌いです。



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