26

最終的に日吉くんに私の部屋の階、つまり二階まで荷物を持ってもらいました。肩痛くなかったんでしょうか。

まぁとりあえず日吉くんと別れ、言い渡された部屋へ行きます。確か201号室。二階の一番端の部屋ですね。

うーん、これからあの加藤先輩と同室とは。骨が折れそうです。

狭い廊下を歩いていき部屋の前で立ち止まりました。
扉には鍵がささっていて、どうやらまだここには加藤先輩は来ていないようです。
鍵を外し扉を開けると、少々広々とした部屋に二段ベットと小さな机。
どうやら本当に寝泊まりするだけの空間のようです。

荷物を端に邪魔にならないように置いて、二段ベットをどうしようかと一人試行錯誤。
正直これなら机じゃなくてもう一つ二段ベットがあればよかったのに。

あれこれ不満を募らせていると扉が開きました。どうやら加藤先輩が来たようです。

「うっわー…、狭っ」

中に入るなりいきなり不満を口にした加藤先輩。

「もっと広いと思ってたのになー。ま、二人だし仕方ないよね」

すみません。私がいなければもう少し広いと感じるでしょうに。まぁそんなことは言えず私はそうですね、と適当に相づちを打ちました。

「私上がいいなー。みきなちゃん、二段ベット下でいい?」
「ええ、いいですよ」
「決まりね!じゃあ、これから頑張ろうね、みきなちゃん!」

にっこり笑い私の手を取った加藤先輩。すみません、正直あまり頑張りたくないです。だってあなた、本心はそうじゃないでしょうに。




荷物を置いてスペアの鍵を持ち部屋を出てどこかに行ってしまった加藤先輩。一応加藤先輩の荷物も端に置き、私も部屋を出ました。氷帝だけで集合でしたよね、確か。

「…あ」
「!佐鳥…」

関わりたくない人の一人、跡部先輩が階段から降りてきました。どうやら男子は三階のようです。

「…どうも」
「そんなビビんなくたって取って食おうとはしねぇよ」

目を細めて笑う跡部先輩。どうもこの手の人は苦手です。食われてたまるか。

「…加藤先輩なら何処かに行きましたよ」
「そうか」

そうか、って。案外あっさりしてらっしゃる。せっかく好きそうな情報をあげたのに。

「どうせあいつのことだ。そのへんうろちょろしてるんだろ」
「捕まえにいかないんですか?」
「何の為に携帯があると思っていやがる」
「ああそうですか」

話を切り上げ階段を降りると、跡部先輩も私の後ろから階段を降りてきました。

「その様子だと、加藤との相部屋に不満のようだな」
「……」

おかしそうに笑う跡部先輩の顔が目に浮かびます。

「別に、不満はないですよ」
「そう強がるな。お前みたいな無表情の考えてることなんて俺にはお見通しだ」
「厭らしいですね」
「…言うじゃねーの」

ククク、と笑い声。もういいや、無視しよう。

「オイ、そっちじゃねぇぞ。右曲がれ」
「…あの、集合場所知ってるなら先輩が先に歩いてください」
「歩いてくださいませんか、って言ったら歩いてやるよ」
「…いじめっ子」

人をいじめて何が楽しいのでしょう。

施設内は意外に広く、私は計三回跡部先輩の世話になりました。いじめっ子気質なんだか優しいんだかはたまたおせっかいなのかよくわかりませんが好印象は受けませんでした。


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