02

あの二人が出ていってその後すぐに日吉くんが教室に入ってきました。
購買に行っていたようです。

私も妨害されていた間をうめようとお弁当に手をつけます。
ガタッ、と音がして日吉くんが席につきました。

「…本当に跡部部長来たのか…」

なんて呟きが聞こえました。
本当に?
本当に、ということはあの人がここにくるのを日吉くんは知ってたんですか。

「悪いな、佐鳥」
「!」

日吉くんのほうを向くと、はぁ、とため息をついていました。
大変なんですね。私もため息をつきたいですがこれ以上幸せが逃げたら大変なのでつきません。

「いえ…。日吉くんは、知ってたんですか?あの二人が来ること」
「知ってた。悪い。言うなっていわれてて」
「いえ、日吉くんが謝ることではありませんので」
「でも正直悪いと思ってる。…あの人達は、馬鹿なんだよ」

後輩の本音が出ています。

「…何かあったんですか?」
「マネージャーがいるだろ、テニス部には」
「三年生…でしたよね」
「加藤っていうんだけど、あの人のせいで今、レギュラーが色めきあってる」
「色めきあってる…?一人の先輩を取り合ってるんですか?」
「俺にはそう見える」

なんとまぁ。
青春ですね。当事者である加藤先輩は鼻が高いでしょうね。

「それで、マネージャーの仕事をしないんだよ」
「なるほど…」

だから私に。
あいつにはあいつのなんて言ってましたけど、要は自分たちがラブラブしてる間お前仕事してろみたいな感じですか。

「だから、お前を誘ったんだと思う。悪かったな」
「いえ、丁重にお断りしましたので大丈夫です」
「やっぱり断ったんだな」

日吉くんはストロー紙パックにさしながら言いました。

そりゃ断りますよ。初対面でいいですよなんて言うほど心が広いわけではないですし。

「ええ。…日吉くんもその加藤先輩が好きなのですか?」
「まさか」

鼻で笑いましたね日吉くん。

「馴れ馴れしいんだあの人。ひっついたりして…前は着替えてる最中に部室に入ってきたしな」

よほど嫌いのようです。
でも私でも、着替えてる最中なら入っちゃいますね。別に厭らしい意味はないですよ。
兄がいるので見慣れてるだけです。夏場はよく上半身裸で過ごしているので。
まぁこんなのどうでもいいんですよ。

「大変ですね。試合は大丈夫なんですか?」
「多分…駄目、なんじゃないかと思う。士気が高まってない」
「それほんとに大変じゃないですか」
「ああ」

なんというか、これでいいんですかテニス部。
たかが女子一人の為にそんな有り様で。

「部外者ですので、頑張って下さいとしか言えません。でも応援しています」
「…ありがとう」

私がそう言うと、日吉くんは悲しげに、疲れたように答えました。

ごめんなさい。私はそんなテニス部のマネージャーになるほどお人好しではないです。


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