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こんにちは。はじめまして。
佐鳥みきなと申します。
始めに言っておきますが私は普通の中学生です。特別な才能も特になく、至って普通に過ごして来ました。

そんな私に一体なにを望んでるんですか、目の前にいる、誰でしたっけ。名前わからない生徒会長。

「佐鳥みきなだよな?」

はい、そうです。
ちなみに今はお昼時。
口が裂けても言えませんけど、人が食事してる時にこんな。非常識だと思うんですが。

しかも一人じゃないし。
後ろに眼鏡の人いるんですが。二人がかりとかやめてください。

でもまぁ、話しかけているのに一人ご飯食べるのは気まずいですよね、箸置きます、はい。

「…そうですが、何か私にご用ですか?」
「ああ。昼飯時に悪いな」

悪いと思うならあらかじめアポとってくださいって感じですよね。
これも言えませんけど。

「単刀直入に言う」
「…はぁ」
「男子テニス部のマネージャーになってくれないか」

生徒会長のキメ顔。
いや、いくらなんでも単刀直入過ぎやしませんか。考える暇もなく私の答えはノーです。

「すみませんが私はそんな大役できる器ではありません。お引き取りください」

そう答えてまたお弁当を箸でつつきます。何故か。絶対にやりたくないからです。

氷帝学園男子テニス部は最近こうしてマネージャーの勧誘をしていますが、続いたのは前からマネージャーをしてる三年の先輩を除いて一人といません。ちなみに私はこの勧誘商法を赤紙と呼んでます。わりとみんな呼んでます。

それを知っているのにやりたいとは思えません。

「何故だ?」

生徒会長の声。まだ聞きますか。

「無理なものは無理です。逆に聞きますが何故私にそんなこと聞くのですか」
「佐鳥さんが普通やからや」

今度は眼鏡の人が答えました。
普通って、何ですかそれは。

「私以外にも普通な人はいると思いますが」
「普通、ってことには否定しねぇんだな」
「事実ですから」

偽ったって何も出ませんし。

「兎に角、お断りします」
「会長命令でもか?」

なんて生徒会長でしょう。

「それは生徒会の定めた校則に引っ掛かるのでは?立派な職権乱用です」
「あーん?言うじゃねぇの」

そりゃ言いますよ。嫌ですから。
と、いうよりだいぶクラスの皆さんの視線が痛いです。ほとんどは食堂にいて、ここ教室にいるのはざっと見ても六人ですが。
私じゃないですよね?彼らを見てるんですよね?

ああいけない。これ以上見られたら私が築き上げた信頼を失うことになります。

「…兎に角、無理です。できません」
「お前にしか頼めないんだよ」
「…知りませんよ、そんなの。だいたい男子テニス部にはマネージャーがいるじゃないですか」
「あいつはあいつ。お前はお前でやってもらいたいことがあるんだ」
「…横暴ですね」

ここで説明しておきましょう。
男子テニス部にはマネージャーがいます。それがさっき赤紙でも説明した三年の先輩です。

それはまぁ当初は、あんなイケメンだらけの部活のマネージャーをやることになって皆さん突っかかっていたらしいです。
しかも、結構面食いらしいです。
隣の席の日吉くんの話では作るドリンクが不味いらしいです。
名前は忘れてしまいましたが、というか聞いたのかそうでないのかもわかりませんが、三年生だということは確かです。

まぁ、私が知ったこっちゃないですけど。

「やりませんできませんお引き取り下さい」

否定の言葉三連発。
そう言えば逃れられると思った私。しかしそうはいきませんでした。

あろうことか生徒会長は私の腕を掴んできました。
箸が取れないんですが。

「いい神経してんじゃねーの」
「やめぇや跡部」

ああ、跡部。
跡部生徒会長だ、うん。

「んだよ忍足。こうでもしねぇとやらねぇだろ」

こちらの眼鏡の人は忍足さんか。そういえば図書室で見かけた気が。

「俺らがやっとることは恐喝と一緒や。今日はもうやめようや。すまんな佐鳥さん。また改めて出直すわ」

手を離してくれました。
ですがあの、何ですか。また来る気ですか。
嫌だって言ってるじゃないですか。

またな、と跡部会長が言い、私はげっそりしながら二人が教室を出るのを見送りました。

もう絶対関わりたくないんですが。


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