18-1

意味がわからなかった。
頭が混乱している。こんな事始めてだ。
あの人、誰?と、一言。たったそれだけ言えたらいいのに。
弱虫な俺は、そんな言葉さえも、言えない。



「宍戸先輩」
「!ど、どうした?」
「鳳くん、具合でも悪いんですか?」

今ここに長太郎はいない。
佐鳥と二人っきりにさせたら精神が持たないと思い、バスに荷物を運ばせにいったからだ。
で、必然的に俺と佐鳥が一緒になってボールやら何やらを準備してる。話しかけてこないだろと思った矢先に話しかけてきたから、今ちょっと驚いてる。しかも長太郎のことときた。

「さ、さぁなー…。どうしたんだろうな」
「大分顔が青かったですけど…」

お前のせいだっつーの。でも佐鳥は無表情でボールを一個一個点検している。
っていうかそんなに青かったか?ショック受けすぎだろ…。いやまぁそれくらい衝撃的だったもんな…。
佐鳥を呼び捨てにしてたし、背丈からして高校生。
佐鳥の好みがああいう外見だとしたら、長太郎はその逆だ。背はまぁ、張り合えるけど。

「…偏頭痛でしょうか…」
「いや、そっとしておいた方がいいんじゃねぇかな…」
「?」

やばいな。あいつは佐鳥のおかげで立ち直れたっつーのに、今度は佐鳥のせいで落ちこぼれる。
そこに加藤が入ってきたら、ややこしいことにならないわけがねぇ。

「あの、宍戸先輩」
「あ、おう、何だ!?」
「私、合宿の内容がわからないんですが…。参加校とか」
「あれっ、日吉から聞いてなかったか?」
「はい」
「えーっとな…。参加校は青学、聖ルドルフ、不動峰。で、二日目から立海も参加。青学からも何人か手伝いに来てくれるらしいから、よかったな」
「…あ、はい。そうですね」
「…?どうかしたか?」

いえ何でもないです、と言ってまたボールを点検しだす佐鳥。
でも一瞬だけ、驚いた顔をしたのを俺は見逃さなかった。



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