14

「……んあ?」
「…おはようございます」

目が覚めたら、眼鏡をかけた女子がいた。


「あっれ…。今何時?」
「もうすぐ4時半です」
「Aー…。どうしよ」
「その前に、そこから下りたほうがよくないですか?」
「んー…」

まだ寝ぼけているのか、本棚の上の少年…いや、ネクタイの色から多分3年生の先輩は曖昧な返答を繰り返しています。
どうやらまだ眠いよう。

「君だれ?」
「あ、2年の佐鳥です」
「…あー!君が佐鳥さんなんだ!わー、かわE〜」
「いや、あの、図書室なので静かに。あと、早く下りてください」

そういうと本棚の上で体勢を立て直し、先輩はよっ、と言って身軽にジャンプ。床に着地しました。

「ねっ、ねっ、下の名前は?」

何故だか興奮状態の先輩。

「みきなです。佐鳥みきな」
「みきなちゃんね!覚えとく!」

にかっと笑う先輩。笑顔が眩しいです。

「俺のこと知ってる?」
「…残念ながら、存じてないですね」
「え、知らないの!?」
「すみません」

そーなの?俺結構有名なんだけどな〜と先輩は頭をかきながらいいます。

「テニス部レギュラー!芥川慈郎だC〜!」
「!…ジロー先輩なる者ですか?」
「!知ってんじゃん」
「よくわかりませんが名前だけ。部活に行ったほうがいいのでは…」
「ね、ね、みきなちゃん合宿に来るんでしょ?ヨロシクね!」
「はぁ…」

にこにこ笑う芥川先輩。っていうか、部活…。

「マジマジ、理沙以外に来てくれてよかった〜!」
「…あの、部活は?」
「行かないよ。だって俺強いもん」
「それはすごいですね」
「!」

私がそう返すと、芥川先輩は驚いた顔をしました。

「…なんで?」
「え?」
「怒らないの?」
「怒る…って、何にですか?」
「てっきりそんな事言ってないで部活に行きなさいとか言われるかと思ったCー」
「言いませんよ。それに、先輩は強いんでしょう?」
「……」

そう言うと先輩は初めて苦笑いをしました。

「マジマジおもしろっ!みきなちゃん変人だね!」
「変人…ですか」
「だって、宍戸が言ってた!本当に合宿の時しかマネージャーしないんでしょ?」
「合宿の間だけでも、と言われていたので…」
「そこそこ!変わってるC!」

変わってるんでしょうか。
だって宍戸先輩にも忍足先輩にも日吉くんにも、合宿の間、というワードがありましたからね。
まさか彼らは私がそれ以外の期間もマネージャーをやってあげる程お人好しだと思っているのでしょうか。
だとしたら悪いですね。妙に期待させてしまった事になります。残念ながら、私にはそこまで余裕がありません。

「ね、テニス部のマネージャーになっちゃいなよ」
「うーん。残念ながら、できません」
「Aー!?何で何で!?」
「私もいろいろ大変なんです。それに加藤先輩だっていますし」
「ん〜…。だって理沙の奴、ひっついてばっかで仕事しないんだもん。跡部だって練習してない」
「!…」
「つまんないCー。みきなちゃんが来たら俺もやる気でるんだけどなー」
「残念ながら、今日はスーパーに寄らなくちゃいけないので」
「ケチー」

ぶー、とふくれる芥川先輩。
さてさて、そろそろ時間が危ういですし、帰りますか。

「私がいなくてもやる気を出して部活に行かなくちゃ、すぐに弱くなってしまいますよ」
「!」

豆鉄砲をくらったような顔をした芥川先輩を尻目に、本棚の本を一冊抜き取ります。

「だから、部活には出たほうがいいです。さよなら」
「…マジマジおもしろっ!またね!」

小さく会釈して、芥川先輩と別れました。
図書室を出て廊下を歩いていると樺地くんに会ったので、図書室に芥川先輩がいることを伝えて帰りました。
さてと、スーパー寄って帰りますか。





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