13

恋の力ってすげーな。
あ?急になんだって?俺だってこんな恥ずかしくてクサイ台詞なんて言いたくねーよ。だから心の中で言ったんだよ。
恋だの愛だの、まだ俺はよくわかんねぇけど長太郎を見てるとすげーな、って思う。
昨日…いや一昨日まで加藤にべったりだったくせに、佐鳥にいいとこ見せたいからって本気で、真面目に練習してやがる。
なんだよ、できるじゃねーか。

「なんか鳳、調子いいよな」
「ああ。秘密兵器があるからな」
「秘密兵器ぃ?」
「ま、いいだろ。それより岳人、お前100円返せ」
「侑士ーラリーしようぜー」
「ん」
「てめ忍足止めろや!!」

だーくそっ、利子つけんぞ岳人の野郎っ!




「景吾、あのね…」
「アーン?サーブ中に話しかけるな」
「え、ちょっ…」

何故だろう。跡部さんが加藤先輩に絡まなくなった。いや、距離を置いている?
しかもいつもみたいに甘い台詞を吐いていない。何があったんだ。
もしかしてやっと気づいたのか?何を?って、俺に聞かれても説明できないが…。
なんていうんだ、加藤先輩の性格というか。立ち位置というか。
まぁ練習するなら文句は言わない。
それを言うなら鳳もだ。真面目にサーブの練習してる。

「…戻りつつあるな……」

そう思った。多分、いや確実に…佐鳥のおかげだ。
あいつは今日も部活には来ていない。合宿が終わってしまったら、また、前に戻ってしまうのか。合宿が終わったら、佐鳥とは…。席が隣の、単なるクラスメイトの1人、になってしまうのだろうか。

「……馬鹿か俺は」

何を考えてるんだ。
そんな先のことを考えるなら、今をもっといいものにしろ、俺。っていうか、なんで最近佐鳥佐鳥って…あーくそっ、イライラする。




イライラする。理沙、いや加藤を見てると。
前までこんな感情抱かなかったくせに。なんだ、なんなんだ。
あいつは、クラスの中じゃ孤立している。いつも1人だ。原因なんざわかっちゃいた。俺たちだ。だが、あいつの態度ときたら大したもんだ。まるで「自分から望んだ」ような。
でも、佐鳥みきなは違う。
だいぶ学園内でも、佐鳥が臨時のマネージャーになると広まってるが、皆加藤の時とは違った反応をしていた。
あの子ならマシだとか、私は好きだとか、真面目だからだとか。
皆こぞって佐鳥を支持している。
それを知ってか知らずか、多分知らないんだろうが本人は何事もないように生活している。
今だって部活には顔を出さない。どうやら本当に合宿まで部活には来ない気らしい。
いいんじゃねーの?強気な奴は見ていて飽きねぇ。
合宿中、何をしてくれるのか見物じゃねぇか。

「おい樺地!ジローを探してこい。久しぶりに勝ち抜き戦をする」
「ウス」
「加藤!スコア付けとドリンクの補充だ」
「え、そんな、」
「早くしろ」

不服そうな加藤を見て、ああやっぱりなと。コイツもこういう顔をするんだとわかった。
ハッ、最初っからそうだと気づいてれば、どれほど楽だったか。
今日から改めて、氷帝テニス部、始動しようじゃねぇの。




「……」

これは放っておくべきなのでしょうか。
何を?今から説明いたします。
図書室の一番奥の、一番はじっこの本棚の上に、人が寝ています。
めちゃくちゃ、危なっかしいです。寝返ったら、高さ2メートルの本棚から床にダイブ。
今私はそんな状況にいます。
まぁ私はね、ちょっと本でも借りようかなーとか思って図書室にきた一般生徒なんですけど。どうしましょうか。

早く帰らないとスーパーの特売が…。


←→
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -