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佐鳥みきな。

小学6年の夏に氷帝に転入。兄の佐鳥幹也もちょうどその時に氷帝に入ったが高等部には行かず他校を受験。妹は普通の小学校に通っている、ねぇ。
母親はアメリカの大学の教授、父親は開発局長。
俺様に負けず劣らずビッグじゃねーの。

そして、肝も据わっていると見た。
テニス部、いや俺様にあんな対等に張り合える女は理沙以外いねぇと思ってたが…。

「…理沙?」

ふと頭に、何かが走った。理沙という単語が、浮かんだ瞬間。それは、その疑問は瞬間的に脳裏に反響した。
何故。
何故俺様は、あいつをマネージャーにしたんだ?
好き、だからか?

「…違う」

好きだからマネージャー?

違ぇだろ、本当に好きなら俺様はそんなことしねぇはずだ。
あいつが、マネージャーをしたいと言ったからか?

いや違う。

あいつは一言も、そんなこと言ってない。
あいつは、マネージャーなのか?

いや、違う。

「…そこらへんにいる、ただの女と、なんら変わらねぇんじゃねぇのか?」




「それは私もわからない」
「え」

随分はっきりした答えに、私は香さんの顔を見ました。本人も腑に落ちないといった表情。
拗ねた顔をしながら、紅茶をストローで飲んでいきます。

「うん。いつのまにかなってたの」
「いつのまにか…ですか」
「大方部長の一目惚れでしょ。それしか考えられない」
「一目惚れ…って、あの人がですか?」
「あの人が、よ」

真相は謎なのよ、と香さんは言います。
あ、ちなみになんの話かと言いますと、加藤先輩がなぜマネージャーになったのか、です。
ふと疑問に思ったので話を聞いたら、何やら怪しい匂いが。
いや別にコナン君のように追求はしませんが。疑問が浮かびます。

「…おかしいですね」
「え?」
「仮にあの人の一目惚れだったとしてもですよ?好きな人をわざわざマネージャーにしますか?」
「…」
「自分以外の異性から狙われてしまうかもしれないのに。あの人、それをわからずにやってるのでしょうか」
「……ほんとだ。おかしい」

私の疑問に香さんも同意の様子。

「一回話をしただけですけど、私はあの人は独占欲が強いタイプだと思うんです。そんな事する人には、見えないんですよね」
「…確かにそうだ」
「でも、その不安さえ吹き飛ばすほど自分に自信があるのなら…なくもないですね」
「……アンタ、推理力すごいわね」
「でもこれは跡部先輩が仮にも加藤先輩に気がある前提の話なので、単に加藤先輩がやりたがっただけかもしれません」
「うわ、なんか普通」

でもそれが案外答えだったりしますよね。
一目惚れとは聞こえはいいですが、一種の自己暗示だったりします。
人間の頭はよくできています。跡部先輩もそんな自己暗示にかかったんでしょうか。

まぁ、いっか。だって私関係無いし。

「それより、本当に合宿行くんだ」
「そうですね」
「いいなー。学校サボれるじゃん」
「休みの間のノートは頼みます」
「任せなさい」

確かに学校は休めますが…合宿の方が学校生活より大変そうですよね。
あ、幹也にドリンクの作り方教わらないと。

「でもさー、もしかしたらみきな、彼氏できちゃったりね」
「できませんよ」
「だって氷帝のほかにも合宿に参加するとこあるんでしょ?いるかもよ〜?みきなの好きなタイプ。っていうか前は聞けなかったけど、みきなの好きなタイプは?」
「優しくて真面目」
「つまり日吉だと」
「全然違いますね。っていうか、それ日吉くんに言ったら確実に嫌われますよ?」

やっぱり男の子は好きとか嫌いとか、柄にもなく緊張したりとかするんでしょうかね。
幹也を見てるとそうは思いませんけど。
幹也と、彼女のリコさん、めちゃくちゃ見せつけてくるからなぁ…。悪気はないんだろうけど。

「さ、香さん。ご飯食べましょう」
「ハイハイ」
「おーい佐鳥さーん」
「「!」」

教室の一角、もといドアの近くにクラスの女子が私を呼んでいます。
何でしょうか?香さんも女子を見ています。

「宍戸先輩と、鳳が呼んでるよー」

え?と思って少し首を動かすと、いました。

廊下に宍戸先輩と、鳳くんが。
部活関連でしょうか。なんだか行きたくないです。




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