今日、12月5日は俺の誕生日だ。
今朝鳳から誕生日プレゼントを貰って初めて気づいた。 ちなみにくれたのは高そうな箸だった。
そういえば、朝から母さんがにやけてたっけ。 この歳にもなると、誕生日を祝ってもらうなんて、少し恥ずかしいな。
まぁ、クラスの奴らからはおめでとう、とか言われただけでプレゼントはまだ鳳からしか貰ってないが。 いや、先に言っておくがプレゼントが欲しいってわけじゃないからな。
で、今は昼休みだ。
どこから俺が今日誕生日だと聞き付けたのか知らないが、知らない女子生徒数人からえらく綺麗にトッピングされたクッキーらしきものを貰った。
正直、いらない。
それを手に持ってただなんとなく廊下を歩いていたら、喉がかわいたから茶を購入しようと自販機へと向かうことにした。 これどうするか。 捨てたら後々めんどくさいし。
そんなこと思ってると、目の前に見慣れた人物がいた。
「…七条先輩?」 「!日吉?」
財布を持って自販機の前にいたのは七条先輩だった。 相変わらず、制服はきっちり着こなしている。 うん、似合わない。
「よう。久しぶりだな」 「はあ……」 3年生が引退して、この人もマネージャーを引退したので会うのは久々だった。
ただ、この人だけはたまに部室の掃除が行き届いているのかが心配でちょくちょく部室にやって来る。 今現在の接点はそれだけ。
「なんだー?部長になってからモテ度ランクアップしたのか日吉くんよぉ?」
ニヤニヤ笑いながら言った。
「違いますよ。これは誕生日プレゼントとかなんとかで知らない女子生徒に貰ったんです」 「!…お前今日誕生日なの?」 「まぁ…」
そういうとふーん、と言って自販機にまた目をくれた。 早く買えよ。
「お前何買いにきたんだよ?」 「温かいお茶でもと」 「温かい茶!?ジジイかお前。いや、今のジジイでももっとハイカラなもん頼むぞ。一昔前のジジイかお前」 「悪かったですね」 「学生なんだからもっと可愛いげのあるやつ飲めよ。ったく」
とか言ってボタンを押す。
「ホラよ」 「!」
すると、出てきた缶を俺に向けてきた。 ココアだった。
「やるよ」 「は?」 「誕生日プレゼント。だからやるよ、ココア」 「…」
熱いんだから早くしろ、と押し付けるもんだから俺は差し出されたココアを受け取った。
「前から言っときゃもうちょいマシなもん用意してたのによ。何なら今からやろうか?」 「いいですよ、別に…。これだけで十分です」 「……そーかい。ま、晴れてお前も14歳だ。部活しっかりやれや」 「…はい、あの…。ありがとうございます」 「ん。気にすんな」
そう言って手をヒラヒラ降って行ってしまった七条先輩。 自分は何も買わずに。 何しにきたんだ、あの人。
「…誕生日プレゼントがココアだなんて初めてだ」
そう呟いて、俺もその場を後にした。
「ああ、跡部?お前今日放課後暇だろ?暇だよなよし暇だな。レギュラー全員集めろ、いいな?あ?何するかって?決まってるだろ、誕生日にプレゼントあげんだよ。ラケット持って集合な」
放課後。
下駄箱に奇妙な置き手紙があった。 手紙というか、茶封筒。
裏にボールペンで『七条 司』と書かれてあった。
封を切って中身を出すと、紙が何枚も出てきた。 そのうちの一枚を取り出した。
日吉若殿へ 挑戦券 12月5日のみ有効
男子テニス部の跡部景吾にテニスの試合を申し込むことを許可する。
誕生日らしいな。 まぁ、今のお前の実力を俺様直々に見てやるよ。 早くコートに来い。本気でかかってきな!!
「…ははっ、成る程」
そんな紙が、合計5枚。 表には挑戦する人の名前、裏にはその人のメッセージ。 こんなことする人は、あの人しかいない。
「…下剋上だ」
封筒をバックにしまって、走った。
「七条もエエことするな」 「日吉、どんな反応しますかね!」 「俺としては跡部が乗ったのが意外だったけどな」 「暇だっただけだ」 「よく言うぜ。メッセージ一番長かったくせに」 「テニス超久しぶり!やっべー超楽しみ!」 「これも、七条のおかげだな」 「ってか、なんで急にこんなん考えたんだ?」 「これが一番、日吉にとっていいプレゼントだと思っただけだ。…お、主役の登場だぜ」 「なんや、ええ笑顔やん」 「うっしゃ、ビシバシ行くぜ!!」
「あのっ……本当に、ありがとうございます、七条先輩!」
これが14回目の、忘れられない誕生日。
12月5日⇒日吉若の誕生日
馬鹿共*氷帝
2011/12/05 06:05(0)
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