とくべつなうた


透きとおる声、歌うそばから波紋が広がり一面が花畑へと変わる。穏やかな歌を歌えば穏やかな景色に変わる。これは、0と1の狭間だからできることだとすいなは言う。だから、なんだかお得だねと嬉しそうに笑っていたのは何時だったか。

「あれ?カラン」

急に歌がフェードアウトし、景色も無機質に戻る。こちらの姿を見つけるや否や思いっきり走って抱きついてくる。避ける理由も見当たらずにそのまま受け入れる。

「歌」

「えっへん、練習してたの」

軽々と持ちあがるすいなの小さな体躯を下におろせば、にこにこと誇らしげに胸を張る。偉いなと言う意味を込めて柔らかい髪をなでる。きょとんと意外そうな顔になるも、直ぐに満面の笑顔になる。

「なんだか、今日のカランきげんいーの?」

「別に良くも悪くもない」

くすくすと可笑しげに笑うすいなに不快感もなく、そっけなく返す。もう一度すいなは先ほど歌っていたであろう歌を口ずさむ。足元から心地よい風が吹き、すいなの世界が産み出される。合わせるように、わたしも歌を口ずさむ。歌の調べは、風に乗り電子の海を超えて現実へ届くけれど、この歌だけは誰にも聴かせない。二人の特別な歌だから。



2011/2/21/

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