私があなたなしでは生きていけない、ことくらい本当は知っているでしょうに






「居ると言う証明は出来なくても、等しく、居ないと言う証明も出来ない。きっと、ボクの存在は泡沫、信じるものにしか見えなくて感じない、信じないものにとってはただの狂言にしかならないんだろう…まるで、宗教みたいだね」

リコリスはくすくすと可笑しそうに笑う。しかし、彼は悲しんでいるのだろう。ただの物としてぞんざいに扱われいく同類達を。

「ボクたちの声を聞こえない人にも、想いを繋ぐものとしての役目を果たさなければいけない。それすらも奪われてしまったボクに何の価値があるんだろうね…」

彼が手を仰ぎ見れば、消えいく声と呼応するかのように、薄く透明へと変化していく。

「もし、無価値なただの金属片だとしても、ボクは皆の傍に居たい。ずっと、ずっと、忘れられる事なく、心の中に住んでいたい。ボクが生きた証を誰かに伝えたい!」

機械には、余りにも不相応な感情を抱いているからこその苦悩。悲痛な叫び声と共に、彼の世界にログインしたのは紫色の少女、の姿をした妹。

「私が、覚えてるよ兄さん。兄さんは無価値なんかじゃない!兄さんの記憶はちゃんと私の中に"居る"よ!私が兄さんの存在を信じるから…私が"居る"と言うことは兄さんが"居る"と言う証明になる。兄さんが居なければ、私も存在しないの…だから、お願い。私のためにも消えないで…」

自己を見失い、霧散しかけたリコリスの本質を必死に繋ぎ止めようと言葉を続けるアスター。

「…ごめん、紫ぃちゃん。ありがとう…」

アスターの頬から伝う涙が、消えかけたリコリスの身体に触れれば、みるみるうちに実体を取り戻していった。








2010/01/11


×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -