赤い鬼


「鬼の子!さっさとこの村から出ていけ!」

鬼の子と呼ばれ、顔に石を投げ付けられた少女は、何も言わずにキッと囃し立てる子供等を睨み付ける。

「うわぁ鬼がこっちを見たぞ、逃げろ!!」

その様子をにやにやと笑いながら石を投げ付けた子供等は走り去って行く。残された少女は悔しそうに歯を食いしばっている。

少女は産まれた時から、親からも忌み嫌われ、疎まれていた。

そう、何故なら彼女の瞳はどちらの親にも似ず、真っ赤な血の色をしていたからである。その為、実の親にでさえ“鬼”としか呼んで貰えない始末であった。

ぽろりと緋色の瞳から雫が流れる。

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泣いている女の子を見付けた。何時も村の子供等に虐められている女の子だ。大人達はあの子を早く追い出したいみたいだけれど、鬼に祟られるのが怖くて出来ないらしい。でも、僕は未だにあの子が鬼なのか疑問に思っている。

「ねぇ、大丈夫?」

声を掛けると彼女はビクリと肩を震わせた。恐る恐る怯えたようにこちらを見る紅い瞳。にこっと僕は微笑んで尋ねる。

「君の瞳、僕は綺麗だと想うよ。まるで煉獄に咲き誇る花のように美しい」


彼女は僕の言葉が意外だったのかきょとんとした顔になる。僕はその様子が何だか可愛くてクスクス笑う。

「なっ、笑うな!」

何だ普通の女の子じゃないか。

「ねぇ、僕は綾鷹って言うんだ。君の名前は何て言うの?」

長年考えていた疑念が溶けたので、気分を良くした僕は、何気なく彼女の名前を尋ねてみたのだが、途端に彼女の瞳は表情を無くした。

「………私には名前が無い」

もしかして、泣いているのかなと紛う程に彼女の声は震えていた。そんな事は有り得るのだろうか。じゃあ、ならば。

「僕が付けてあげるよ、君の名前」

※※※※※


あの日から私達は毎日会い、他愛の無い話で盛り上がった。しかし、そんな日は長くは続かず、私達の住んでいた村は燃えた。そして、不思議な少年"綾鷹"も消えていなくなってしまった。

「アヤ…必ず何時か逢えるよな」

逢いたい。そして、伝えたい。貴方に名前を貰ってどれだけ私は嬉しかったか。貴方に逢えてどれだけ私が感謝しているか。生きてちゃならないと思い込んでいた私に希望をくれた人。

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その出逢いは偶然か必然か

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2008/10/08

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