死に逝く星に願っても




死に逝く星に願っても


初めて会ったのは戦場で。何と優雅に戦う人なんだと思った。片手に剣を携え、ダンスでも踊っているような軽やかな足取りで敵をなぎ払う。うっかり戦場であることも忘れて、見とれてしまったのは今では良い思い出だ。あの日、ただ故郷を亡くし、希望も望みも無く、自分のしている行動に意味を見いだせなかった日々は確かに消えた。あの方と同じ場所に立ちたいと願い、ただそのひたすらな願いのためだけに努力した。直属軍に入るために踏み台にした敵兵は数えきれない。同じ故郷に居たものも少なからず手に掛けている。そっと使い古した魔導書を手でなぞる。目を閉じると、窓ガラスを叩く風の音がした。

「――居るかい?」

うつらうつら夢に落ちる手前、その声は確かに聞こえた。幻聴かと思ったが、あの方の声を聞き間違える筈が無い。慌てて体を起こすと声がした方へ駆け寄り、窓を開ける。すると、ぼろぼろになっているアルケイン様が居た。聞きたいことは沢山あったが、理解することは難しいだろうと判断し、出かかった言葉を飲み込んだ。対するアルケイン様の素顔は仮面で隠されており、口元でしか表情は読み取れない。

「寒いでしょうから中へ……」


そう言い切る前に、手を引かれ、そのまま懐へ抱かれてしまった。心臓は痛いくらいに鳴っている。アルケイン様の心臓は動かないままだというのに。何だか、場違いに申し訳なく思われた。

「君の時間を僕にくれないかい?」

「元々、自分は貴方のためにあります」

この方は知っているのだ。永遠に続く時間を、孤独を。それに比べたら自分は何を知っているのだろう。痛みも、悲しみも、孤独も、暗闇に浮かぶ星のように小さなものに思われた。

「ありがとう」

耳元で囁かれる言葉がとてもくすぐったくて可笑しかった。この時間がずっとずっと続くように。叶う筈もない願いを星にかけた。

2010/12/25


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