Ich will, das Sie es finden.




ドイツさんと私が出会ったのは、寒い雨の日だったと思う。傘をさし、空ばかり見つめていた為に、曲がり角で正面衝突すると言う、今どき漫画ですら使われないような古典的ドジをかましてしまったのが始まりでした。正直な所、その時は顔も覚えてはおらず、慌てまくって謝り倒していた事だけが印象に残っているのです。





「ごめんなさい、ごめんなさい!ええっと、お怪我はありませんか?すみません、よそ見をしていて…」

「…お前は俺が見えるのか?」

「うえ?見えてはいけませんでしたか?」

「…いけない訳ではないが」

外国の方なのに、とても流暢な日本語を話す方ですね…。私なんか英語ですら上手く発音出来ないのに。私の返した答えに、何だか気まずそうな顔をしている…ええと何という名前の方なんでしょうか。

「ともかく…手を貸そう」

そう言えば私、この方とぶつかった挙げ句そのままずっこけてしまったようです。見も知らぬ人に迷惑は掛けられないと自力で立とうとしたのですが、何だか足に力が入りません。…もしかしなくても挫きましたか。

「あの…、私の事はほっといて」

下さいとそう続けようとしたのですが、肩を捕まれ、そのまま問答無用で立たされてしまいました。その時に感じた違和感が―単に男性の方に肩を捕まれた事による物だと思っていたのですが―何となく引っ掛かったのです。

「ああ、ありがとうございます」

寒いのやら、熱いのやら、よく解らなくなりながら礼を告げれば、恥ずかしさの余り、そのまま足が痛いのも構わずに急いで立ち去りました。

薄暗かった雲から、いつの間にか太陽が出ていた事にも気づかずに。





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