絵本

「…………」

「シロウ……?」

絵本を読み進める事後半。
誕生日の子供がコインを飲み込んだらしい下りからシロウの口数が減ってきている。
そしてーーーーーー

「お嬢ちゃん、ちょっと目を閉じてな?」

「え?っわ……」

少女の返事を待たず、彼女の目を片手で覆い隠した直後、ピンクのクレヨンで描かれた少女が血を浴びた状態でしっかりと鍵を握りしめて笑っている絵が……。

《鍵見つけたよ!今ドア開けるね!》

「うわー…………」

直後にカチリ、と鍵の開く音がしてシロウは小さく飛び上がる。

「シロウ……?」

「え、あ……何?」

「最後、どうなったの……?」

目を塞がれたために最後を見ていない少女は、無邪気に目を輝かせてシロウに話のラストを尋ねて来る。

「え……えーっと、えーっと」

「……?」

「あ、そう言えば名前!お嬢ちゃんの名前聞いてない!」

まさか絵本の話をそのまま伝える訳にもいかず、話題を変えようと少女の名前を尋ねる。
少女は、上手く話題につられたように小さく微笑んで

「イヴ!」

と応えた。
それまで黙って成り行きを見ていたレナは、無言で立ち上がると奥のドアへと近寄り、ドアノブを捻る。

「開いてる……イヴ、シロウ、行きましょう?」

「うん!」

「おう」

先に立ち上がったシロウはイヴに手を伸ばして立たせると、繋いだ手はそのままにレナの後を追った。




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