ジムに訪れる人の数がぱたと途切れる時間帯がある。滅多に休業日を持たないシッポウジムにはその数時間が貴重な休憩であり、けれどもその間も、何かしら動いていないと気が済まない性分のアロエは奥の部屋の階段を上り、図書館へと顔をだした。書棚の整理もかねて、挑戦者への問題を改めようかという心算だった。

「……おや?」

そう広くは無い図書館、その姿は簡単に見つけられた。書棚の一角で、本を取ったついでに腰掛けその場で読み進めようとしたのか、階段台の天辺に座ったトウヤの膝には開かれたままの本がのっていた。ただ最初の2,3ページで睡魔に襲われてしまったのか、本には手を重石にして、非常に危なっかしい体制になり彼は眠りこけていた。アロエは肩で息を吐く。近寄って覗き込んでも、トウヤはすっかり熟睡しているようで寝息はどこまでも穏やかだった。そっと手の下から本を引き抜く。それを脇に挟んで、途端にバランスを崩して倒れるトウヤの体を抱き上げると、アロエはまるで小さな子でも出来たような気分になった。

「仕様が無いねぇ」

一瞬ぐずるように動いたトウヤに擦り寄られて、アロエは微苦笑を漏らした。
例え他人の子だとしても、いくつになっても子供というのは可愛い生き物なのである。



午後4時の居眠り