三方をケリーとジャックとリックに囲まれ、簡単に出来る手品を習うトウヤを、アーティは頬杖をついて眺めていた。アーティのアトリエに訪れる事はあっても、中々ジムにまで足を運ばないトウヤを3人はここぞとばかりに構い倒している。アーティの手元で弄ばれるティースプーンは必要以上に紅茶を掻き回していた。ヨウスケはその事に気がついていたが、生憎と彼は特別紅茶に煩い男では無かった。ので、開いた口は文句の代わりに手にしたクッキーを頬張った。
おわあ、と何とも気の抜ける悲鳴があがる方向にアーティとヨウスケの視線が向くと、ハニーブラウンの頭には忙しなく動くケリーの指から零れ出る飴がぱたぱたと降り注いでいた。

「いって、ちょっとケリーさん、床に落ちてるから!」
「ケリー、床の奴もちゃんと拾って食えよ」
「えっミーがなの?!」
「綺麗にしないと無意味に飛び出させるよー」
「止めてくれる?飛び出すのって結構しんどいんだからね?」
「うん知ってる。だからトウヤ、ケリーのスイッチ踏みまくっていいよ」
「えと、?」
「ちょっと人を楽しませるのが仕事のクラウンでしょ、なんで泣かせるのさ、この鬼ぃぃ!」

ごちゃりと固まってはしゃぐ4人は、年齢があまり変わらなく見えるがクラウン3人はトウヤより少なくとも一回り上である事は確実で。
ヨウスケは目を細めると、呟いた。

「若いなあ」

横でこっそり「…ボクも混ざりたいなぁ」なんてしおれているジムリーダーと同じぐらいであるはずだが、ただ一人だけ緑茶を啜るヨウスケの職場での楽しい休憩時間は飛ぶように過ぎ去る。


(混ざりたいなら傍に行けば奴ら歓んで巻き込むと思いますよ、アーティさん)



午後3時のティータイム