子供の笑い声に目が覚めて、恐らく不機嫌な顔をしたまま部屋を出る。朝のコーヒーとトーストの匂いに包まれるホールには自分を除いた四天王が額を突き合わせていた。笑い声の主はカトレアのようだった。彼女はいつも気怠そうな顔に珍しく薔薇色を散らせて哄笑すると、ぱちりと長い睫毛を交わらせて目の縁に溜まった滴を払った。よくよく注視してみると、その向こう側には見覚えのあるキャップが、カトレアの帽子の陰に見え隠れしていた。

「あっ、ギーマさんおはようございます」
「あら。やっと起きたの、ギーマ」

ふいに対角線上にいたシキミに見つかると、彼女は挨拶だけをして奥の給湯室に駆けていく。そういえば寝起きのままうっかり出てきてしまっていた事を思い出した。ふうふう息を整えながらカトレアも笑んだ顔のまま振り返る。その隣から隠れていたもう一人の子供が頭を出した。もごもごと膨らむ頬の中では大方レンブが作った朝食の芳ばしいトーストが噛み砕かれているのだろう。やがて細い喉が上下して、ギーマを見たトウヤはふ、と唇を緩ませると「ギーマさん、すっごい寝癖!」と言って、先のカトレアと同じように笑った。その声に温タオルを持って来たシキミも混ざり、カトレアもまた引きずられるようにして肩を揺らす。耳にこそばゆい彼らから顔を逸らすようにしてレンブを見ると、彼までもが淡い笑みを作っておりギーマはぐしゃりと髪を握りしめた。


空いていたトウヤの隣に腰掛けると、左から腕を引かれ振り返る。「おはよう」と頬にキスを送られたギーマは、ついにくすりと笑うとほんのりココアの香りがするトウヤの頬に、それをかえした。



午前8時の家族愛