▽甘い物は得意じゃないはずの早川くん


朝子がバイトで来るまでの間に、早川くんは1年半〜2年くらいエトワールで働いてるような気がする。

元々は甘い物とか好んで食べる方ではないんだけど、就職難でお金なくて住む場所も追われて手を差し伸べてくれた鈴ちゃんが、店に招き入れて出してくれたシフォンケーキがそのとき不思議とめちゃくちゃ美味しくて、それから唯一鈴ちゃんが作る洋菓子にのみ関して全く抵抗なく、というかむしろ好んで食べるようになってるとかいないとか。

「…なあ。それ、新作か?」
「うん、そうだよ。今はブルーベリーの時期だから、期間限定で出すつもりなんだ。タルトと、チーズケーキ」
「……ふうん」
「…そうだ、早川くん、これ食べてみてくれないかな?」
「!は、はあ?なんで俺が…」
「あ、ええと、自分以外の誰かが試食してくれたら参考になるかなって思ったんだけど…だめ、かな?」
「…………。まあ、別にいいけど」
「本当?ふふ、よかった。早めに改良しておきたかったんだけど、次のお茶会まで少し日にちがあったから悩んでたんだ…ありがとう、早川くん」
「………お茶会」
「そう、この間やったやつだよ」
「……………」
「はい。フォーク」
「…どーも」
「コーヒーと紅茶、どっちがいいかな?」
「……コーヒーで」
「じゃあ、そのまま食べながら待っててね」
「…ッス」

とか最初の頃やり取りして、お茶会ない時は基本早川くんが新作スイーツの味見するようになればいいよ。朝子がきた後は朝子もそこに仲間入りして三人で閉店後にブレイクタイム。

てか自分からあんまり認めようとはしないけど、パティシエ見習いみたいな状況に今なっているのも単純に言えば『苦手なはずの洋菓子を食べて感動したから』っていうのに尽きるんだろうなぁ。
で、そこからまず洋菓子に対する興味が芽生えて、鈴ちゃんとコミュニケーションを取りながら働いてる内に自分で作ったらどんなんなんだろうと考えたりし始めて、鈴ちゃんに「早川くん、一緒に作ってみる?」って言われたのが第一歩とかかなって思いますわ。


▽早川くんは鈴ちゃんのことはちゃんと尊敬してるし師匠だと思ってる

店閉めた後で早川くんが鈴ちゃんに「ここ座れ」って厨房に椅子出してきて、大会で賞とったケーキを皿に乗せて

「食え」
「…いいの?」
「……。これは、大会用に考えたモンだ。でも食った感想が一番聞きたいのはアンタだ」
「……ありがとう、早川くん。じゃあ、いただきます」
「…チッ。つーか何ニヤニヤしてんだよ、」
「うん?ふふふ、なんだか嬉しくて」
「、はあ?全然意味わかんねーよ…」

とか言いながらも築かれてゆくおにーさんとおにーさんの師弟愛とかいろいろ…。
早川くんは鈴ちゃんに態度悪いけど、結構気は許してるし、こんなふわっふわした人でも洋菓子を作る腕は確かで自分の固定観念をぶち壊すようなモノを日々生み出していて、それに対する感動というか感嘆だったり、目標と、そこから派生した自分のイメージする新しい洋菓子への高揚感とか、そういう色んなものを与えてくれる存在として尊敬してると思います。


▽つーか早鈴てホモォにもなりそうな気配が立ち込める距離感じゃね?

てわけでもし早鈴が成り立ったら、早川くんは一応「あー…鈴也……さん。これ、どーすんスか?」とかさん付けから発展して、やらしいことしてる最中に「っ、鈴也……はあッ…」とか名前呼び捨てになればいいですわ。
更に仲が深まったら普段は淀みなく「なあ鈴也さん、」とか言うくせに「〜っスか」とかがなくなってタメ口になる。そして最中は名前呼び捨てに以下略。

鈴ちゃんからは「早川くん」だけど、定休日デートしてる時に急に脈絡なく

「鈴也さん。そういや、名前」
「…?名前がどうしたの?」
「下の名前で呼べよ」
「えっと……宗治、くん…?」
「くん要らねー」
「いやでも…」
「そーじ」
「………そーじ……くん」
「………。まあとりあえず、それでいい」

ってちょっと不満そうな顔で言いながら軽く屈むように身を乗り出して鈴ちゃんにキスして、

「鈴也さん、来週映画行かねぇ?」
「っ、え……あ、うん、映画……」
「なんか、アレ。パンケーキ出てくるやつ」
「あ、ああ、今宣伝やってる映画…………」
「………鈴也さん、顔赤くねぇか?」
「そっ…そうかな……」
「………ふうん…?」
「っ、ん…は、早川くん!?」
「あ?何だよ」
「こっこここここ、厨房だよ…!」
「知ってるけど」
「だめ、だ、だめだってば…!」

とか年下にグイグイ押され気味な早鈴だとにやにやする。
あ、でもちゃんと閉店後の二人だけの時とかで、営業中だったり誰か居るときは機嫌悪そうな仏頂面か愛想の無い感じで淡々と仕事してますきっと。
場所はケースバイケースで、それ以外は節度のある男です早川くん。






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