鳴門 | ナノ
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88.役立たずなのは俺かお前か


「ナルトの心を守りたい」

和解と言って良いのか微妙なところではあるが、過去の人格を取り戻したなまえに具体的にはこれからどうするつもりかを問いかけると、こいつは冒頭の言葉を口にした。

「どう言う意味だ?」
「この戦いにおいてナルトの存在は良くも悪くも鍵になる。あっちだってそれを承知しているだろうし、もし自分がトビさんの立場だったらナルトの心をへし折ってでも自分の有利な流れに持っていこうとすると思う」

木ノ葉と暁のそれぞれに仲間として深く関わってきたからなのか、両方からの視点による戦況の分析は我が妹ながら心強いの一言に尽きる。

「なるほど。それで、お前はどうやって守るつもりなんだ? お前のことだからもうそこまで考えてあるんだろ」
「私は今までの二年間、すぐ傍でとまでは言えなくても同じ目的の下でトビさんと行動をともにしてきた。だから、きっと皆よりも早く彼の意図にたどり着ける」
「ああ」
「彼はきっと、ナルトがどうあっても守れないところを突いてくる。そこが連合軍の頭脳となったらなおさら」
「! 狙いは本部か」

こくりと険しい顔つきのなまえが頷いた。
敵の頭をつぶし統率を乱すのは作戦の基本でもあるし、元々疑っていたわけじゃないが信じる価値は十分ある。問題はいつ仕掛けてくるのかも分からず、独断で動くにはあまりにもリスクが高い状況下でどのように防ぐか。一歩間違えれば相手に本部の位置を教えることにもなり兼ねない。おそらくなまえにも察しがついているだろうし、中途半端に口を挟むより今はこいつに委ねた方が良いだろうとしばらく静観していると、自分に可能な限りの策を練り終えたらしくどこか緊張した面持ちで口を開いた。

「本部を捨てる」
「……本気か?」
「ナルトが強くなればなるほどトビさんは本来のタイミングよりもずっと早く計画を進めようとするはず。もし、尾獣の力を使われでもしたら分かってから動いていたらきっと間に合わない」

なまえの提案はあくまで最悪の展開を回避するためのもの。だが、それだけの強敵を相手にしている俺たちはたった一度後手に回るだけで途端により不利な状況へと追いやられてしまう可能性も十分にありえるわけで。

「俺は何をすれば良い?」
「……私の代わりに命を賭けて欲しいと言ったら、あなたはどうする?」

時空間忍術で俺を本部まで飛ばし、シカクさんたちを説得して人繋ぎの力を使って全員でなまえの元まで戻ってくる。幼いころから飛雷神の術の腕を磨き、人繋ぎと言う唯一無二の特性を持つなまえだからこそ思いついた作戦なのだろう。

「結びの力は連絡手段としては相互に作用するけど、本来は私が結んだ対象のところまで移動するための力なの。絶対に成功する保証はないし、もし失敗したら異次元に取り残されて戻ってこれなくなるかもしれない……ごめんなさい。これが今の自分に思いつく精一杯の……、」

自分じゃなく、俺にリスクを背負わせることに後ろめたさを感じているらしいなまえの謝罪を遮るように頭に手を乗せ、髪が乱れるのも構うことなく好き勝手に撫で回した。

「俺は自分の意思でお前の案に乗る。リスクも聞いた上で納得して受け入れるんだ。それで万が一戻ってこれなくなったとしても、お前一人の責任になったりしない。絶対にな」

妹を無条件に信じてやるのが兄の役目だろう。それに、ようやく叶おうとしているのだ。格好こそ思い描いたものとは違うが、成長したなまえとともに戦うと言う夢が。だから。

「俺の命をお前に預ける。だから、お前も俺を信じろ」

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