全員出動!1年A組

「すごかったよな〜、昨日のエンデヴァー!」

「ああ、脳無にぶっ倒されたときはキモ冷やしたけどよ―――最後は、勝利とガッツのスタンディング!!くぅ〜、漢だぜェ!」

「さすがNO.1だよね!」

「ホークスもすごかったよ!」

「イケメンだし〜」


朝っぱらから、教室はそんな話題で盛り上がっていた。
そして轟が登校してくると、真っ先に緑谷が駆け寄っていく。


「轟くん、エンデヴァーの容体は・・・?」

「ああ、命に別状はないそうだ」

「そっか・・・よかった」


轟の返答を聞いて、クラスメイトたちはほっと肩の力を抜いた。


「自慢の父ちゃんだな、轟ぃ!」


からっと笑顔で言い放った峰田に、強子はどきりとする。
あの轟に対して、父親の話題――それも彼を讃えるようなこと言うなんて・・・地雷じゃない!?大丈夫か、これ!!?
轟の家庭環境やら何やらを聞かされており、父親を憎む轟を見てきた強子は肝を冷やすが、


「・・・ああ、そうだな」


峰田の発言に色々と思うところはあっただろうに・・・轟はそれらを飲み込んで、彼を讃える言葉を肯定した。
その様子を見て、強子は轟の中に生じた確かな”変化”のようなものを感じ取る。緑谷も強子と同じように感じていたらしく・・・互いに顔を見合わせて、二人はそっと笑いあった。


「さァ、皆!朝のHRが始まる!席につこう!!」


飯田に急かされて皆が着席すると、ガラリと戸を開けて相澤が教室へ入ってくる。一人残らずピシッと着席するA組を見て、彼は満足げに「よし」と頷いた。


「―――さて、今日のHRだが・・・」


気だるげに相澤にそう切り出すと、教室に警報が鳴り響いた。


『緊急訓練、緊急訓練―――』


警告灯が点いて教室を赤く照らす中、仰々しくアナウンスが流れてくる。


『―――想定、雄英高校敷地内にヴィランが侵入!ヒーロー科1年A組、出動要請!ヒーローコスチュームに着替え、現場へ急行してください!』


雄英のやることが唐突で突拍子もないのは、誰もが知るところだ。
この程度で今さら慌てふためく者はおらず、「今日は緊急訓練かぁ」なんて冷静に受け止めて、すっくと立ち上がる。
そして、我らがクラス委員――飯田が皆を鼓舞するように声をあげた。


「ヒーロー科1年A組、出動だ!!」

「「「おー!!」」」









今回、我々に与えられた情報は「グラウンドβにヴィランが侵入した」という一点のみ。
A組はコスチュームに着替えてグラウンドβに向かうと、まずは状況把握のため、"偵察班”を編成した。索敵に秀でた耳郎、障子、口田の三人が建物の屋上にのぼり、個性を駆使して現場の状況把握に努める。


「―――北東、約900メートル・・・断続的な破壊音!」

「イヤホンジャックの報告地点に爆煙を確認・・・ビルが川に向かって倒壊、火災が発生している!周辺にヴィランは視認できない」


彼らからの報告に「了解した!」と応答して、飯田はクラスメイトたちへと向き直る。


「まずは現場の消火活動が必要だ」

「時間がありません・・・“消火班”を編成して現場へ向かってください、インゲニウム!」


早急に火の手を止めなければ、被害は広まるばかり。そこで飯田を筆頭に、轟、常闇、砂藤、青山のメンバーで消火班を編成する。


「大変っ、川に流されてる人がいるって!!」


鳥たちから情報を得て口田が声を張り上げると、A組はさらに緊迫した空気に包まれる。
人命救助―――何をおいても最優先に、そして、絶対に失敗が許されないそれは、ヒーローとは切っても切れない使命だ。
今回は水難救助ということで蛙吹と峰田が“救助班”に名乗りをあげ、消火班とともに現場の川辺へ向かうことになった。
八百万の個性で彼らが乗りこめるサイズの荷車を創造し、飯田のスピードでそれを引っ張れば・・・超高速エンジンの人力車が出来上がる。


「また後で!」


飯田たち人力車メンバーに声をかければ、彼らは力強く頷いた。
直後、目にも留まらぬスピードで現場へ向かうのを見送りながら、緑谷が残ったメンツに声をかける。


「僕らも行こう!」

「うん!」


皆が現場に向かおうと走り出す中・・・爆豪だけ皆と逆方向に向かって歩き出したのを見て、切島が足を止めた。


「爆豪!?行かねえのかよ!」

「ヴィラン探すぞ、救助活動はモブどもに任せてろ」


言葉が乱暴なせいで身勝手な奴だと思われがちだが・・・その実、爆豪の選択は思慮深く、合理的なものだ。
切島は頷き、爆豪についていく。爆豪に無理やり引きずられている上鳴も含め、三人で“別動隊”として行動するようだ。


「そっちも頑張ってね!」


強子は緑谷たちと現場方面へ走りつつ、三人に振り返って声をかける。
すると、切島は笑顔で「おう!」と拳を掲げ、上鳴は「おー」と弱々しく手を振り、爆豪は「フン!」と鼻息荒く吐き出した。
一見すると、三者三様でまとまり無さそうに見える彼らだけど、決してそんなことはない。
仮免試験のときもそうだったが・・・チームメンバーを指定されない戦闘訓練のとき、実は、あの3人でチームアップしていることが多い。普段から仲が良いし、チームワークもばっちりなのだ。
頼りにしてるぞ、別動隊の諸君!


「―――みんな、こっち!」


さて、強子や緑谷たちがいる主力部隊はというと・・・嗅覚・聴覚を強化した強子が先導し、ビルの倒壊現場に向かって最短ルートを突き進んでいた。


「そこを右に曲がれば・・・もう現場が見えてくるはず!」


そして彼らが現場を目前にしたとき―――ドンという衝撃とともに、前方に爆煙があがった。


「また火の手が・・・!」

「さっきより勢いが強いぞ!」

「このままでは、延焼してしまいますわ・・・!」


これ以上被害が広がることはどうにか避けたい。そこで動いたのが芦戸である。


「火の手を止めればいいんでしょ!?」


芦戸が麗日の個性によって無重力になると、瀬呂のテープに捕まり空中高くへと飛び上がる。そうして爆煙の上空にたどり着くと、火の手が広がらないよう、周囲をまるっと『酸』で溶かす。
三人のチームプレーは見事に決まり、無事に延焼を防ぐことができた。
さらに川辺のほうから巨大な氷塊が現れて、確実に火の手を止めるように火災現場を覆い尽くした。言わずもがな、この氷は轟の個性だろう。


「・・・これで火災はおさまりましたわね」


八百万の言葉を聞いて、皆がふうと一息ついていると・・・強子の耳に、イヤな音が聞こえてくる。断続的に、爆発音のような響く音が・・・だんだん近づいてくる!
ハッとして強子が声を上げた。


「何かくるっ、気をつけて!!」


強子の声とほぼ同時に、衝撃波がぶわりと襲い来る。
その ねじれたエネルギー波は、強子たちには見覚えのあるもので・・・


「・・・まさか、」


緑谷が息をのむ。


「覚えてる?忘れちゃった?まだヴィランは残ってるんだよ、知ってた?」

「波動先輩が、ヴィラン役・・・!」


怖ごわと呟いた緑谷は、血の気が引いている。
なんせ目の前に現れたのは 雄英ビッグ3が一人、波動ねじれ先輩だ。登場と同時にちゃっかり芦戸を人質にとっているあたり、実力者なだけある。
ふわふわと宙を舞う妖精のようなカワイイ見た目に騙されて油断すると 痛い目みるぞ、気をつけろ!


「も、もう一人、ヴィラン役はいるんだッ」


背後から聞こえてきたその声に、強子はガバッと勢いよく後ろを振り返った。
強子たちの退路を断つようにそこに佇んでいたのは、


「環先輩!!?」


天喰の姿を視野に入れた途端、強子はぱぁっと顔を輝かせ、嬉しさをこらえきれないようにガッツポーズをとる。
だって、あの天喰がヴィラン役だぞ?つまり、ヒーロー役の強子たちの“敵”になるわけで・・・


「(先輩と戦えるってことだよね!?マジかよサイコーの展開なんですけど!!?)」


本来なら、強子にとって彼はサイドキック―――つまり、“味方”だ。その味方と、一戦交える日がくるなんて思ってもみなかった!
きらきらと期待を込めた視線を向けてくる強子に、天喰はウッと後ずさり、顔を曇らせた。


「はぁ、なぜ俺がヴィラン役に・・・・・・身能さんと敵対するなんて、ものすごく気が進まない。なのに、身能さんは怖いくらいにノリノリだし・・・とても嫌だ、つらい・・・・・・帰りたい」


なにやら一人で悶々と葛藤したかと思えば、ふいに天喰がくるりと踵を返す。


「・・・帰ろう」


っええぇぇえ!?帰ったァ!!?
すごすごと去っていく天喰の後ろ姿を、みんな唖然として見送った。


「天喰先輩、本当に帰ってくけど・・・」

「いいのかな、それで・・・」


麗日と尾白が戸惑いがちにチラと強子を見ると、彼女がくわっと顔を険しくさせる。


「いやいやいや!いいわけないでしょう!?―――ねえっ、環先輩!!」


強子は彼を呼び止めつつ、足元に落ちていたコンクリの破片を・・・彼の後頭部めがけて 思いっきり蹴飛ばした。


「!?」


咄嗟のことにもかかわらず、振り返りざまに高速で飛んできた破片をしっかりキャッチするあたり、彼も実力者なのである。
そう・・・彼がいかに強いヒーローであるかなら、強子はさんざん見てきて、知っている。
この鬼強ヒーローと、今の強子・・・実力差がどれほどのもんか、見せてもらおうじゃないか!


「先輩、ヴィランなんでしょ?だったら・・・みすみす逃してやるわけないでしょうに」


なぜ俺は破片をぶつけられたんだ!?と困惑している天喰に、ニタリと口角をあげた強子が教えてやると、彼は「ヒッ!」と息をのんで身をすくめた。
その様子を見ていた尾白には「やめなよ、もう・・・ガラ悪いなぁ」と諌められ、葉隠には「これじゃ どっちがヴィランかわかんないよ」とため息をつかれた。


「っていうか先輩も!ヴィランならヴィランらしく、かかってきてくださいよ!!」

「そうだよ、天喰くん!ちゃんと役に徹しなきゃ!!」


浮遊中の波動が、上空から声を張り上げる。


「動かないでね、危ないから!私・・・今、ヴィランだからっ!」


そう言って1年生たちを牽制する波動はにこやかで、なんだかイキイキと楽しそうだ。きっと彼女も彼女で、“ヴィラン役”を楽しんでいるんだろうな。


「(それにしても・・・厄介な相手だな)」


芦戸を人質にとられていては、こちらは迂闊に動けない。しかも波動は浮遊しているので視野が広く、隙をついて攻撃するのは難しい。逆に、彼女の必殺技 “ねじれる波動”は広範囲に及ぶため回避が難しい。


「要求はなんですかっ、ヴィラン側の!」


こちらも役に徹して、緑谷がヴィラン側の要求を尋ねてみると、「帰りたいッ!!」って・・・そりゃ天喰個人の要求だろうよ。


「・・・帰ればいいじゃないですか」


尾白が呆れた口調で思わずこぼせば、天喰がボソボソと応える。


「帰ったら・・・身能さんにも波動さんにも 怒られる」


そんな子供みたいな理由で我慢してんのか、この人は・・・。
強子も呆れのあまり脱力していると、彼は言葉を続けた。


「それに、ミリオにも言われてる・・・君たちが1日でも早く、一人前のヒーローになれるよう、出来る限りのことをしてやってくれ と」

「!」


先輩たちの想いにハッとさせられる。
強子たち1年生をそんなふうに想い、一肌脱いでくれていたのね!
―――なんて、感動に浸る間もなく・・・天喰は左手に“アサリ”の殻を、右手の指先に“タコ”の足を、背中には“鶏”の翼を『再現』させた。


「だから―――帰れないッ!」


たちまち戦闘態勢へと切り替わった天喰を前にして、1年生組も緊張した面持ちに変わって身構えた。


「ビッグ3が、僕らのために・・・」

「ありがてェけど・・・高いハードルだぜ」


ヴィラン役の二人は、雄英生における“最高戦力”とも言える相手だ。
しかし、こちらも負けてない。こちらの戦力は強子のほかに、緑谷、麗日、八百万、瀬呂、葉隠、尾白のメンバーだ。数的優位にあるし、こっちには“主人公”だっているんだぞ!
作戦会議をさせてもらえる時間はないが・・・強子たちは手早くジェスチャーやアイコンタクトを交わすと、各々の役割を果たすべく 一斉に動き出す―――


「麗日さん!」

「解除っ!」


緑谷の合図で麗日が個性を解除すれば、空中で波動に捕まっている芦戸が 重力に従って落ちていく。
突然のことに、波動が芦戸に引っ張られて落下していく中・・・気づかれないよう接近していた葉隠が、必殺技の“集光屈折ハイチーズ”で 波動の目をくらました。
その隙に瀬呂がテープで彼女の身動きを封じ、そこに八百万がネットランチャーを発射して、網で波動を捕獲する。
落下していた芦戸はというと緑谷がキャッチし、人質の安全も確保した。


「波動さんっ」

「よそ見してるヒマぁないですよ、先輩!」


緑谷たちの見事な連携プレーが決まった 一方で・・・強子と尾白も、天喰へと詰め寄っていた。
波動に気を取られている天喰の懐にもぐり込んだ強子が、下から拳を突き上げてアッパーを打ち込む!


「っ!?」


・・・が、そう簡単には当たってはくれない。天喰は俊敏な動きで後方へのけ反り、拳を回避した。
とはいえ、これが回避されるのは想定内だ。間髪入れず、彼の背後で待ち構えていた尾白が仕掛けに出る。


「尾空旋舞!!」

「くっ!」


強靭な尻尾による打撃が天喰に襲いかかった。それでも天喰は、タコの触手で尾白の攻撃をいなして回避してしまう。
A組でも、とくに近接戦を得意とする強子と尾白――この二人の渾身の一撃でも、やすやす避けられてしまうとは・・・。


「(こうなったら、手数で勝負だ!)」


強子は尾白と呼吸を合わせ、二人がかりで天喰に攻撃を仕掛けていく。
ストレート、フックと拳を打ち込んでは、ハイキックにローキック、飛び蹴りまで・・・彼に息つく間も与えず あらゆる攻撃を繰り出すが、5本のタコの触手が器用に強子の攻撃を躱して、いなされてしまう。


「ぐぬぬ・・・!」


どれだけ猛攻をくわえても傷一つ付かず、淡々とこちらの攻撃を見切って避けていく天喰。一切の隙なく、冷静にこちらを見据えている彼を、どうすれば出し抜けるだろう?
というか・・・さっきから防戦ばっかりで反撃してこないけど、舐めプか!?天喰と強子たちの間には、そんなにも実力差があるのか!?


「ビヨンド!」


八百万に呼ばれて振り向くと、彼女がこちらに何かを投げてよこした。素早くキャッチして、“それ”に目を落とした強子はニッと笑う。


「(なるほど・・・さすが百ちゃん!)」


そして再び、尾白と格闘している天喰に向き直ると、


「環先輩っ!」


彼を呼び止めつつ、足元に落ちていたコンクリの破片を彼の顔面めがけて 思いっきり蹴飛ばした。


「何度やろうと、その手は通用しないぞ!」


目にも留まらぬ高速で飛ばしたところで、やはり先程と同じように見切られ・・・破片は、天喰の左手の貝殻で弾き落とされてしまった。
だけど・・・高速の破片を見切るのに集中していた彼は、足元にコロンと投げられた“それ”には気づくのが遅れた。

―――ボンッ!!

爆発音とともに、周囲が灰色の煙幕に包まれる。


「ゲホッ・・・発煙弾!?」


濃い煙幕が天喰を取り囲んで、彼の視界を完全に遮断した。対する強子は・・・視界を奪われても、敵を捕捉するスベがある。
発煙弾による目くらまし。この一手により、天喰は強子のかっこうの餌食となったわけだ。どうだ凄いだろう、八百万とっておきのオペレーションは!
とはいえ、数秒後には彼の背中の翼で煙幕も飛ばされてしまうだろうが―――数秒もあれば、強子には十分。


「(一発、ボディーにぶち込む!)」


煙幕の中、瞬時に距離を詰めると、強子は彼に躊躇なく拳を打ち込んだ。
だが・・・拳が当たった部分の、その妙に弾力のある感覚に、「あれ?」と違和感を覚える。と同時に、拳を突き出していた腕にグルンとタコの触手が巻き付いてきた。


「!?」

「視界を奪われても・・・身を守るスベならある」


なんと―――天喰は、全方位からの攻撃に備えるように、タコの触手でぐるぐると全身を覆いつくしていた。
天喰のボディーを狙ったはずの強子の拳は触手のガードに阻まれたのだと理解し、強子は歯噛みする。しかも、触手で拳を防ぐと同時に強子の腕を捕らえるという反撃まで・・・あの一瞬で、よくそんな策を講じてきたものだ。


「(やっぱり、強い・・・!)」


敵の強さを再認識して、俄然、燃えてきた!
怯んでるヒマはないぞと奮い立つと、強子は攻撃体勢で一歩踏みこもうとして・・・ガクッと体勢をくずす。


「ぅ、げっ!?」


気づかぬうちに、音もなく擦り寄ってきていた触手が、強子の左右の足にからみついているではないか!
両足を引っ張られてバランスをくずせば、その隙に、唯一自由だった腕も触手に巻き付かれて・・・あっという間に、強子は四肢の自由を失った。


「そんなぁ・・・!」

「はあ・・・思ったより、あっけなく済んでよかった」


強子が愕然としていると、天喰は安堵した様子でぽそりと呟いた。
この男は、強子の実力を認めている。それ故の安堵か知らんが・・・してやられた側としては、悔しさのあまり「ぐゥっ!!」って変な声が出た。


「ビヨンド・・・訓練だからって、気を抜いてるんじゃないか?詰めの甘さは命取りになるよ」


そして、この追い打ちである。
「これでも本気で臨んでましたけどぉ!?」と、強子が怒り心頭に達していると、周囲の煙幕がだんだんと薄れていく。


「あっ!?」 

「ビヨンド!!」


強子が捕らわれたことに気づいて、仲間たちが慌ててこちらに駆け寄ろうとするが、


「全員、そこから動かないでくれ」


天喰はA組を鋭く睨みつつ、彼らに見せつけるように強子を触手で持ち上げる。


「少しでも動けば、彼女に何をするかわからないぞ・・・今の俺は、ヴィランなんだ!」

「(ん?・・・アレ、おかしいな・・・もしかして私、“人質”になってる・・・?)」


皆の先陣を切って、天喰を倒すつもりが・・・気づけば、人質になって皆の足を引っ張っている。
その事実に気づくと強子はサァッと顔を青ざめさせ、触手から逃れるべくジタバタともがく。


「君もだ ビヨンド、暴れるな!」


暴れる強子に、天喰は慌てて触手を増やすと、強子の胴体にぐるりと巻き付けて彼女を抑え込む。


「悪いが、この訓練・・・勝たせてもらう!!」


人質をとって勝利を目前にした天喰が宣言する、その傍ら―――強子の腹部をぎちぎちと締め付けてくる太い触手・・・その先端が、強子の服の裾のすき間から、ヌルリと脇腹を撫でつけた。


「っ、ひぁ・・・ん!」


気持ち悪いような こそばゆいような、独特な感触に、思わず強子の口から声が漏れた。


「「「え・・・」」」


緊迫した戦場には似つかわしくない声に、天喰を含めた全員がポカンとして 一斉に強子を見る。
そして沈黙の中、じわじわと強子の顔が赤く染まっていく。
・・・耐えがたい状況である。強子としては、今すぐにでも脇腹をくすぐる触手を払いのけて逃げ出したいけど、両手は触手によって頭上でひとまとめに拘束されている。


「ふっ、んぅ・・・!」


ダメもとで身を捩ってみても、触手の吸盤がキュウと強子の肌に吸いついて振りほどけない。むしろ動けば動くほど裾がめくれて、ヌメついた触手と肌の触れあう面積が広まった気さえする。
ぞくぞくと背筋に走る感覚にいてもたってもいられず・・・弱り果てた強子は、もじもじしながら震える声で絞り出した。


「あ、の・・・先輩、ごめんなさ・・・私、その・・・これ、ちょっと ムリかもぉ・・・っ」


勝負ごとに、“待った”はなしだ。
わかっているけど・・・でも、ちょっと、これは・・・なんていうか、すごく―――


「「「(エロい・・・!!)」」」


A組一同、言葉もジェスチャーもアイコンタクトもなく、心が通じ合った瞬間だった。
触手に捕らわれた強子を前にして、男子も女子も一様に顔を赤らめ、微動だにできずに固まっている。
こりゃ彼らの救けは期待できないなと見切りをつけ、強子は天喰に向き直る。そして、無表情でジーッと強子を見つめてくる天喰に、今度は強子が固まった。
なんかこの人、目が据わってない・・・?


「今の、俺は・・・ヴィランだ」

「?・・・そうです、ねッ!?」


強子がビクンと跳ねて、ギョッとしたように自分の足元に目を落とす。
左右の足首にそれぞれ巻き付いていた触手が、ズリズリと強子の足に絡みつきながら 上に這いのぼってきている!


「今の俺はヴィランだから・・・身能さんに何をしても いいんだ!」

「イヤそんなことはないけど!!?」


ぶっ飛んだ理屈を言いはじめた天喰に、怒鳴るようにツッコんだ。
これ、訓練だから!ヴィラン“役”が、マジでわいせつ行為をしちゃ駄目でしょ!!


「・・・って、ヤダ!?ちょ、待って待って!!」


足首にいた触手はもう膝まで上がってきており、そのまま太ももへと這い寄ってくる。
くすぐったさ というより、じわじわと追い込まれていくときの焦りや緊張感みたいな・・・腰が引けてゾワゾワする。拒みたくとも身動きが封じられているので、強子は心許なさげに 内ももを擦り合わせた。


「(もう!なんなの、この状況?ほんの数分前まではビッグ3と戦えるなんてラッキ〜とか、ノンキに構えてたのに・・・)」


ヌルヌルとした触手で身体のあちこちを躙られ、身を震わせながら強子は思う。


「(こんな・・・いきなり公開触手プレイとか、ハードすぎない!?心臓がもたないよ!!)」


こうなったら、もう、負けを認めよう!天喰と強子とでは、とてつもない実力差があると認めます!
だから、さっさと強子を解放してくれ・・・でないと、例の触手がホットパンツの隙間に潜り込みそうな、きわどいところにィ!!


「ほんと、もう、これ以上はっ・・・お願いだから・・・ねぇっ、せんぱぁい・・・!」


息も絶えだえに許しを乞う強子は、すでに涙目だ。
そんな彼女の懇願する姿に、天喰は・・・ゴクリと生唾を飲みこんだ。


「っ、身能さん・・・」


悩ましげに、彼女の名を口にした天喰。
今が訓練中だとか、周囲の視線だとか・・・そんなものはとっくに彼の頭から抜け落ちている。ただ、無心で、引き寄せられるかのように触手をスルリと強子に伸ばした。
物欲しそうに蠢く触手が、彼女の身体へと触れる・・・そのとき、

―――BOOM!

耳に届いた爆破音に、全員がハッと我に返ると同時・・・硬化した切島が凄まじいスピードで吹っ飛んできて、天喰のボディーにタックルをかました。


「っ・・・レッドライオット!?」


別動隊のご到着だ!
切島がタックルした拍子に、触手の拘束が僅かにゆるんだ。すかさず触手を振りほどいて、強子は天喰から距離をとる。
天喰もすぐに体勢を立て直したが・・・彼にはもう、強子に構っている余裕はない。だって、爆破で飛び上がった爆豪が、空中から天喰に狙いを定めているのだから。
天喰は素早く飛び回る爆豪を目で追い・・・彼の動きを捉えると、「そこだ!」と触手攻撃を繰り出した。けれど、


「ゲ ー ム オ ー バ ー だ!!」

「ひィィっ!!?」


この世のものとは思えぬ凶悪面で襲い来る爆豪に、わずかな一瞬、彼がひるむ。
その隙を逃すはずもなく、天喰の顔面に掴みかかり、爆破の加速で地面へと叩き伏せた。


「スゲーぜ、爆豪!」

「あの天喰先輩を・・・!」

「訓練、クリアですわ!」

「うん!」

「やったー!」


怒涛の展開を端から見守っていた皆が、ワッと喜びの声をあげる。


『訓練終了、訓練終了―――』


アナウンスを聞いて、強子もほっと安堵する。
危うい場面はあったが・・・1年A組の緊急訓練は、勝利によって幕を閉じたのだ。


「まだだァ!!!」


ハッピーエンド、無事に大団円を迎えられたと喜びムードなのに、爆豪が声を荒げるものだから皆して「え?」と呆然とする。
爆豪は未だ、敵意むき出しに天喰を睨み付けていた。


「てめェ・・・さっき手ぇ抜いたな!?」

「いや、あれは、君の顔が 「舐めたマネしてんじゃねぇえ!!」


怒られたり強い口調で詰められるのが苦手な天喰と、爆豪――この二人は、食い合わせが悪すぎる。


「それに・・・たとえ演じていようが、先輩だろうがなんだろうがっ―――俺のモンに手ぇ出す奴ぁ・・・俺の、敵だぁああ!!」


鬼の形相で、親の仇でも討つのかと思える気迫で、彼はその手に 個性を発動させる。
「帰ればよかった・・・」そんな天喰の心の声が聞こえてくるようだけど、今は、彼に同情してる場合じゃなさそうだ。
だって・・・強子も爆破圏内にいるのだから。


「死 ね ぇ ぇ え え え!!!」


特大爆破が放たれる直前―――強子の身体にシュッとテープが巻かれ、グンと身体が引っ張られる。
おかげで被爆を免れた強子は、瀬呂の腕の中にポスッと落ち着いた。


「やだ、イケメン」

「そらドーモ」


女の子を爆破からスマートに救出して、ついでにお姫様だっこするとか、しっかりヒーローしていて感心する。
そして瀬呂の腕の中は・・・米国でも人気のトップヒーロー、個性が『蜘蛛』の彼にも負けず劣らずの安心感があった。


「っていうか、爆豪くんマジで爆破したんだけど・・・さすがにやりすぎじゃない?」


これ、訓練なのに。ヴィラン“役”をマジで爆破して負傷させちゃ駄目でしょ・・・。
周囲を見れば、皆もドン引きした表情で爆豪を見ていた。


「あー・・・まぁ、あの状況じゃ 爆豪にキレるなっつーほうが無理あるっしょ」


苦笑まじりに、何やら事情を察した様子で瀬呂が言う。
そこまでキレる要素はなかった気もするけど・・・爆豪とつるむことの多い彼が言うのだから、そうなのかもしれない。
なんて考えていたら、爆豪が職員室に呼び出しを食らっていた。やっぱり、やりすぎだ。


「それよか、お前・・・ここに峰田がいなくて良かったな。アイツがさっきの見てたら一週間はオカズにされてたぞ」

「ああ・・・」


確かにな と、性欲の権化を思い浮かべて頷いた。
日頃の戦闘訓練でも、ラッキースケベというか、男女の身体が触れあうことは割とあるが・・・今日のは、かなり刺激が強かった。あれを峰田が見ていたら、うるさく騒ぎ立てていたことだろう。強子もまだドキドキがとまらないもの。


「・・・まっ、何はともあれ―――楽しかったなぁ!」


訓練を振り返って笑顔で総括すると、瀬呂に「あの触手責め、そんな良かった?」なんてニヤけ面でからかわれたけど、そうじゃなくて!
A組全員で一丸となって一つのミッションに取り組むのが、最高に楽しいって話だ!
A組21人で、一つのチーム!それぞれの性格も戦い方も日頃からよく見ているから、流れるような連携がとれる。互いに強みを活かし、困ったときは助け合う、気持ちのいいチームワークだった。
もちろん、ビッグ3と戦う展開も胸アツだったけど・・・


「やっぱり私、好きだなあ・・・このクラス!」


自慢のクラスメイトたちを思いながら、にこやかに告げた強子。
これまで信頼関係を築いてきて、一致団結した1年A組だ―――そのクラスメイトと、まさか この期に及んで仲をこじらせることになるとは・・・このときの彼女は想像だにしなかった。




















最近、轟の様子がおかしい気がする。
いや、傍から見ているかぎりでは轟自身におかしいところは見当たらないだろうけど・・・どうにも、轟の “強子に対する態度”がおかしいのだ。




「おはよう轟くん!教室までに一緒に行こ「悪ィが・・・考えごとがあって、一人で登校したい」

「あ、うん・・・わかった」




「ねぇ轟くん、さっきの授業で「まだ問題解いてるから、後にしてくれ」

「ごっ、ごめん」



「轟く〜ん、今日 一緒にランチ食べ「悪いが今日は、緑谷たちと食べる約束してるんだ」

「そ、そっか(そこに私もまぜてくれても良いのでは・・・?)」




「おや轟くん、もしやパワータイプの個性をご所望かな!?なら、ここは私がっ「いや、緑谷に頼むから大丈夫だ」

「(・・・・・・おのれ、緑谷出久!)」




終始、こんな感じである。
これはなんていうか、アレだ。様子がおかしいっていうか・・・


「(めっちゃ露骨に 避けられている!!)」


強子が話しかけるたび、彼はまるで逃げるかのように強子から距離をとる。
親しい友人からの この仕打ち―――普通に傷つく。


「(私と目も合わせてくれないし・・・)」


以前までの轟なら、強子の目を見ずに話すなんてことはなかった。なんなら彼は 初期ろき君の頃から、しっかりと相手の目を見て話す人だったのに・・・。
それに、時間がかぶれば一緒に登下校するなんて当たり前だったし、授業の合間合間にくだらない世間話をするのも日課だったし、お昼ごはんを一緒に食べることも多々あったし、戦闘訓練じゃ二人で息ぴったりな連携プレーを発揮してきた仲だというのに・・・。


「(いったい、どうして・・・?)」


轟に何があったというのか。あるいは、気づかぬうちに強子が何かやらかしたのか。
そもそも轟の様子がおかしくなったのはいつからだっけ?緊急訓練のときは普通だったはずだ。


「(たしか・・・轟くんが実家に帰ったあとから?)」


ハイエンドとの戦いで重傷を負ったエンデヴァーが帰宅するからと、轟も外出許可をもらって一時帰宅していたけど・・・轟の様子が変わったのは、それ以降だった気がする。
自宅で何かあったのか?もしかすると、エンデヴァーに何か言われたとか!?たとえば、身能に関わるのはやめろ、みたいな事を?・・・う〜ん。
いくら考えたところで轟の事情などわかるはずもない。


「強子さん、轟さんと何かありました?」

「アンタ、今度は轟に何したの」


仲良しの二人からも問われたけど、強子はもうお手上げだという様子で頭を振って、机にペタリと突っ伏した。


「何があったのか、私が教えてもらいたいくらいだよ・・・」


そんな強子に、クラスのあちこちからも心配そうな視線が向けられる。轟が強子を避けているのは、クラスメイトたちの目から見ても明らかだったようだ。


「めずらしいよね、いつもラブラブだったのに・・・」

「今になってようやく身能の本性に気づいたか?」

「痴話喧嘩・・・いや、倦怠期?」

「こりゃ 離婚の危機だな」


今この教室に彼がいないからと好き勝手言ってる彼らを見ながら、強子は深くため息を吐く。
最近の彼は教室に居すわることはなく、気づけばどこかに姿をくらましてしまう。それも強子を避けるための行動だってんだから・・・泣けるぜ、まったく。


「強子さん・・・きっと すぐに仲直りできますから、どうか気を落とさず・・・!」

「百ちゃぁん・・・」


気遣わしげに励ましてくれる八百万を、強子は救世主を見るような顔で見つめた。
すると、じわりと潤んでいる強子の瞳を見た八百万が、ガタッと勢いよく立ち上がった。


「っ・・・心配いりませんわ!だって、私も、期末試験の折にはあなたと距離をおきましたけれど・・・実を言うと、離れている間ずっと、寂しくて仕方なかったんです!!」

「!?」


急に教室中に響く大声を出して、なにかと思えば・・・突然のカミングアウト。
ぱちくりと呆気にとられていると、彼女は確信をもった顔で告げる。


「ですから、私にはわかりますの―――轟さんも、すぐに強子さんが恋しくなりますわ!絶対に!」


両手をぎゅっと握って拳を作り、強子に力説してくる八百万――その可愛さと思いやりの心に、強子はだんだんと元気を取り戻す。


「そ、そうかなぁ・・・?」


同意して欲しそうに、強子が期待を込めた目をクラスメイトたちに向ければ、彼らはウンウンと頷いた。


「すぐ元サヤに戻れるよー!」

「轟、身能には甘いしなァ・・・」

「つか、お前がいつもの人たらしテクニックを駆使すりゃ 瞬殺っしょ!?」

「天下の身能サマなら楽勝だって!」

「轟もだいぶ丸くなったし!心配ないない!」


そんな軽口を叩いて強子を励ましてくれるクラスメイトのおかげで、強子は再び元気を取り戻した!


「そうだよね!!」


彼らの言うとおり・・・すぐに元の関係に戻れるに決まってる。
そう結論づけた強子は、その日の放課後にさっそく行動を起こした。


「轟くん!」


HRが終わると同時に席を立った彼を、呼び止めた。
そして、また何か理由をつけて逃げられてはたまったもんじゃないと、強子は轟の袖をぎゅっと掴んで引きとめる。
そう・・・大抵の男は、可愛らしいこの仕草に弱いのだ!
それから、


「一緒に帰ろう?」


笑顔で、甘えるように問いかけると―――パシッと、強子の手が振り払われた。
え、と笑顔で固まっている強子に背を向け、轟はため息まじりに静かに言い放つ。


「・・・・・・もっと、節度ある距離感で接してくれ」


そのまま振り返ることなく教室を出ていった彼を見送ると・・・強子は恨めしげに唇を噛みながら教室を見回し、震える指で轟の去ったほうを指差した。
彼女の言いたいことを察してか、教室の誰もが、気まずそうに引きつった顔を強子から背けた。











あれから冷静に、落ちついて考えてみると・・・だんだん、腹が立ってきた。
節度ある距離感で、って・・・あいつ人のこと言えないよな!?轟だって強子の頭ポンポンとかしてたくせに、あの天然タラシめ!
理由もわからずに避けられ続け、あげくに理不尽な理由で拒まれて―――いいかげん、もう我慢の限界だ!


「轟くん!!」


怒り口調で彼の後ろ姿に呼びかければ、彼の足がぴたりと止まる。
それでも、彼がこちらを振り返ることはなくて・・・頑として強子の顔を見ようとしない轟に強子はぐっと下唇を噛んだ。
けれど、ここで引き下がっていては、この問題を解決など出来やしない。


「ねえ、どうして、私のこと避けるの?」


震えそうになる声で、その疑問をとうとう轟にぶつける。


「私に気に入らないところがあるんなら、教えてよ!頑張って、直すから・・・」


なんだか・・・恋人に別れを切り出され、必死に繋ぎとめようとする人みたいなセリフになってしまった。
すごく情けないけれど、でも実際、轟を繋ぎとめるためなら体裁など構ってられない。
ドキドキしながら彼の返答を待っていると、


「・・・お前に、気に入らないところなんてない」

「!」


よかったぁ・・・!これで気に入らない点をめちゃくちゃ列挙されたら ガチでヘコむもんね・・・とホッとしていると、轟が再び口を開く。


「ただ・・・これ以上、お前と馴れ合う必要性も感じないってだけだ」

「え?」


彼の言っていることが理解できず、パチクリと目を瞬かせる。呆然としていると、轟がゆっくりと振り返って強子を見た。


「なあ、身能・・・」


彼は、出会った当初のような冷めた表情で、切り捨てるように冷たく言い放つ。


「馴れ合いなら もう十分だ―――“友達ごっこ”は、終わりにしよう」

















―――ガッシャーン!!!


「ぅわッ!!?」


ガラスが割れるような騒音に、ガバッと布団を跳ね除けて上半身を起こすと、ぜぇはぁと呼吸を乱しながらぐるりと部屋は見渡し・・・ここが寮の自室で、自分はベッドの中にいて、今まで眠っていたことを把握する。


「(い、今のは・・・夢か)」


ああ、とてつもなくイヤな夢を見てしまった。強子は額の汗を拭って、ふうと一呼吸つく。
しかし・・・ガラスが割れる音は夢ではなかったはずだ。何事だろうかと、音のした方向に聴覚を集中させてみると、


「君、まだ溜め込んでない?チーズが足りなかったのかな!?」

「・・・かもしれない。起こしてごめんよ」


男子棟の方から、青山と緑谷の会話が聞こえてくる。
それを聞くに・・・“夢”を見た緑谷が力を暴発させてしまい、窓ガラスが割れたという経緯が読み取れた。


「・・・・・・はあっ」


強子は大きく息を吐き出すと同時、上半身の力を抜いてベッドにボスンと横たわった。
そして、くしゃりと顔を歪めて苦々しく吐き出した。


「ああ、ほんと・・・・・・嫌になる」


胸クソ悪い悪夢から目覚めたかと思えば―――今度は、悪夢みたいな現実に直面するなんて。

ついに、このときが来てしまった。
ずっと考えないようにしてきたけど、もはや避けては通れぬ段階まで来てしまったのだ。
ワン・フォー・オールの継承者であり、この世界の主人公である 緑谷出久――彼にはこれから6つの個性が発現し、異次元の強さを手にすることだろう。
そうなったら強子は・・・どうすれば、彼と対等に張り合っていけるのだろうか―――










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前半はアニメ5期1話目のアニメオリジナル展開より。
公式様、本当に素晴らしいお話をありがとうございます愛してる!おかげで妄想が捗ります!
なるべく夢主を傷つけないよう戦ってたけど気づくと美味しいシチュになっててテンパりつつも思わず手を出しそうになる、童貞ムーブな天喰くんが書けて幸せでした。

後半は・・・最近平和ボケしてた夢主にダブルパンチ!乗り越えていけるのでしょうか。




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