本音 ※耳郎視点

幼い頃から、周りの人達は口をそろえてこう言った。


「響香ちゃんの将来が楽しみだな」


大人たちの期待に満ちた声や視線に、耳郎自身もそう感じていた。幼いながらに、自分の将来に期待していた。


「響香ちゃんは音楽の才能に恵まれたね」


そうやって褒められるのは嬉しかった。音楽は好きだし、上手くできると楽しいから。
だけど―――


「何てったって、あの作曲家と音楽家の子だからな!」


必ずと言っていいほど、セットで付いてくるそんな言葉。それを聞くたび、何かモヤモヤとした想いが胸のうちに蓄積していく。
だって、楽器も、歌も・・・一生懸命に打ち込んできたのは耳郎自身なのに。両親に似たから、両親から授かった“才能”だから と評されるのは、なにか違う気がする。
けれど、両親のことを知る人たちの大多数は、口をそろえてこう言うのだ。


「ご両親に似て良かったね!」


そう・・・これこそ、人々が“耳郎響香”を価値づけた末の帰着である。
耳郎の人生はどこまでいっても、結局、耳郎の両親ありきなのだ。耳郎響徳と耳郎美香、彼らの存在なくして耳郎響香が褒め称えられることはない。
だとするなら・・・なんてつまらない、底の知れた人生だろうか。
それでも、両親のことも音楽のことも好きだし、褒められていることに違いはない―――そうやって自分を納得させては、耳郎自身を見てもくれない人たちに 曖昧な笑みを返すにとどめた。







「ねえ、進路どうするか決めた?」


高校受験が視野に入ってくる頃になると、気になる話題。
同じグループの友だち何人かと集まってその話題を繰り広げるが・・・まあ、だいたいは、


「「「もちろんヒーロー科!!」」」


何人かの声が重なって、おかしそうに笑いあう。
今どき、ヒーローを夢見ないヤツのほうがめずらしい。耳郎だってずっと悩んでいたけど・・・やっぱり、ヒーローを目指したい。人のために体を張って戦う、あのカッコいい姿を見て、憧れないわけがない。


「響香は、やっぱり音楽科のある高校だよね?」

「え、」


どきりとして、思考が停止する。


「響香は音楽好きだもんねー」

「確か、親が音楽関係の仕事してるんだっけ」

「いいなー、コネがあるなら将来安泰じゃない?」


友だちから羨望の眼差しを向けられるが・・・音楽の世界はコネがあればうまくいくものでもないんだけどな。
それに何より、


「あー、実はさ・・・ウチもヒーロー科を目指してみたいな、なんて・・・」


今まで誰にも言ってなかった本音を、勇気を出して打ち明ける。耳のイヤホンジャックを指でくるくるといじりながら彼女たちの様子をうかがうと、


「えっ、ウソでしょ?」

「もったいなくない!?楽器も歌もあんなに上手いのに!」

「音楽の道に進まないと、親が悲しむんじゃないの?」


・・・彼女たちの言葉は間違ってない。的を射た指摘だと思う。耳郎本人だってずっと考えていたことだ。
だけど―――ショックだった。
耳郎が欲しかった言葉は、そうじゃないのだ。
彼女たちに打ち明けた夢を、応援してもらいたかった。「一緒に頑張ろう」と、志しを共有したかった。耳郎の選択は間違ってないんだと信じて、「やってみなよ」と背中を押してほしかった。


「あ、そうだ!今日の放課後、カラオケ行かない?響香の歌、聞きたくなっちゃったー!」


皆は「いいね!」と乗り気だけど・・・正直、今の耳郎はそんな気分になれそうもない。それに、もうすぐ期末試験もあるので勉強に時間をあてたい。
やんわりと断ろうとした耳郎だったが、


「試験なんてまだ先でしょ!?」

「響香はこの前も学年1位だったじゃん!ちょっとくらい息抜きしても大丈夫だって〜」


悪気なく同調圧力をかけてくる彼女たちを前にして、耳郎は疑問を抱く。
ひとの道を勝手に決めつけては、勝手に羨んで・・・耳郎自身のことを見てくれているだろうか?耳郎の意思を蔑ろにして、勉学に励もうとする耳郎の足を引っ張っていないか?
彼女たちは―――本当に、耳郎の“友だち”と呼べるのか?
そんな疑問を抱きながらも、彼女たちと反発して孤独になる勇気もなくて・・・耳郎は結局、曖昧な笑みを浮かべて頷くのだった。










“友だち”―――そんなもの、所詮はうわべだけの付き合いに過ぎない。
家族のように血の繋がりもない、赤の他人。たまたま同じ学校に通い、たまたま同じクラスになったという、ただそれだけの縁。
言ってしまえば、孤独を嫌う者たちにとって 群れるのに都合がいいコミュニティが“友だち”というだけだ。所詮、表面上だけのハリボテの関係である。
そこに絆だとか、心の繋がりだとか・・・期待するだけ無駄。真の友情、本物の仲間・・・そんなものは幻想、あるいは絵空事だ。
中学までの経験則で、耳郎はその事実に気がついていた。


「(高校にいっても、その先 大人になっても、どうせ同じなんだろうな・・・)」


念願だった雄英高校ヒーロー科に進学が決まっても・・・交友関係に関しては、耳郎はまったく期待していなかった。
そして―――雄英に入学して、初日。
続々とクラスメイトたちが登校してくるのをぼんやりと眺めていたとき、彼女は現れた。


「(うっわ、かわいい子・・・)」


その華やかな見た目は、自然とその場にいる者たちの目を奪う。
同性から見ても素直に「かわいい」と思えるルックスなのだから、異性からすれば、彼女の登場は胸躍るものがあっただろう。実際、隣の席になった上鳴は鼻の下を伸ばして浮かれていたし。
しかし耳郎は、教室の空気がどこか張り詰めたのを肌で感じていた。周囲を盗み見てわかったのは、クラスの大半が、彼女を目にした瞬間から無意識のうち気を引き締め、彼女を警戒していたということ。
それもそのはず・・・何せ、これから競い合っていくライバルとしては、彼女の秀でたルックスは厄介なもの。まだ彼女の実力は未知数だが、ヒーローにとって重要な”支持率”――つまり国民からの”人気”に関しては、彼女なら容易く手にできてしまうのは想像がついた。
そもそもこんなに可愛い子なら、ヒーローじゃなくたって、ニコリと愛想よく笑いかけるだけでも全国民から愛されそうだ。
そんなことを考えていると、


「あのさぁ・・・」


爆豪と話していた彼女が苛立ちまじりの声を発したかと思えば、爆豪の机に手を叩きつけ、教室にドでかい音が響き渡る。


「君のそういう他人を貶めるような態度、感心しないなと思って。気を付けた方がいいよ?」


挑発的に、わかりやすく喧嘩を売った彼女に瞠目した。
愛想よく笑いかけるどころか、相手をあざ笑うようなふてぶてしい面構え、生意気そうな口調に傲慢な態度。
はっきり言って・・・可愛い顔が 台無しだ。


「(・・・なんか、すごい連中と同じクラスになったな)」


入学早々に目の前で喧嘩が繰り広げられ、そう感嘆すると同時に、彼女の存在が耳郎の中に深く刻み込まれていく。
彼女は直情的、短絡的ともとれる性格のようだけど・・・嫌なことは嫌だとはっきり態度に示す、毅然な態度。気に入らないことがあれば声を大にして抗議する、強情ぶり―――そのどちらも、耳郎には持ち合わせていないものだった。
だからこそ耳郎は・・・彼女の生き様に、“ロックだな”なんて 憧れたのだ。





彼女ーー身能強子と話す機会に恵まれないまま、初日の個性把握テストが終わった。
ちなみにテスト中、身能が補欠入学生であることが知れると、先ほどから彼女を僅かに警戒していたクラスメイトたちはホッと肩の力を抜いていた。
補欠である彼女を、自分よりも”下”の立場であると認識して安堵したのだろう。大抵の人間は、自分よりも弱い立場にある者に対して余裕が生まれるものだ。

その翌日、耳郎は女子更衣室にむかいながら、前方を歩く身能の背中をこっそり見つめた。
昨日のテストでも好成績を残した彼女ならきっと、これから行うヒーロー基礎学でも素晴らしい活躍をするだろう。いや、あの性格なら、また何かやらかす可能性もある・・・それはそれでちょっと面白そうだ。


「(・・・話しかけてみようかな?)」


ふと、そんな考えが脳裏を横切る。
けれど、入学初日から人目も気にせず喧嘩をおっ始めるような子だ。つい先ほども轟と言い争いをしていたようだし・・・人付き合いが苦手なタイプなんだろうか?というよりむしろ、他人の存在なんて毛ほども気にしない一匹狼タイプかも。
少なくとも、”友だち”の顔色をうかがって生きている耳郎のような人間ではないだろうな・・・。
途端に彼女に話しかける勇気を消失していると、突然、声をかけられた。


「もしかして身能さんに話しかけるの?」


傍には誰もいないと思っていたものだから、驚いた耳郎はビクリと肩を震わせた。


「あ、驚かせてごめんね!私、透明だからよく皆に驚かれるんだよね」


そう言って朗らかに笑った(透明だから見えないけど、たぶん)のは、同じクラスの葉隠だった。彼女は少し声のボリュームを下げ、耳郎に耳打ちした。


「身能さんってちょっと怖そうだけど・・・でも、なんかカッコいいよね!」


あまりに実直な葉隠のコメントに、どう答えればいいものかと返答に困ってしまう。
彼女の言うことは確かに共感できるものであったが、クラスメイトに対する感想としては「怖そう」も「カッコいい」も、同意するのはどうにも気が引けた。
だから、同意するかわりに、ある提案を口にする。


「あの子に話しかけてみない?・・・ジャンケンで負けたほうが」


そうして、ジャンケンで負けた葉隠がいざ話しかけてみるとーーー彼女は目元に涙をためて天を仰ぎ、大げさなほどに感動した様子を見せた。
いったい何ごとだろうかと、葉隠を見守っていた耳郎が驚いていると、


「なんか・・・入学してからようやく、普通の学校生活っぽいっていうか・・・友だちっぽいやりとりが出来たのがもう、嬉しくてッ!」


そんな予想外なことを鼻声で言うものだから、思わず吹き出してしまった。
なんだよ・・・一匹狼どころか、めちゃめちゃ人付き合いを好んでるし、めちゃめちゃ友だちを欲しているではないか。


「男子も顔負けのごりごりパワータイプで、負けん気つよいし、コスもアマゾネスみたいなナリしてんのにさ・・・なに、身能ってば、かまってちゃんなの?寂しがり屋さんってわけ?ぷぷっ・・・」


そのギャップが面白くて、そんな彼女を警戒して敬遠していた皆もおかしく思えてくる。そして、人より秀でていると感じた彼女も、自分たちと同じようにただの高校生に過ぎないのだとわかったら、自然と笑いがこみ上げてきた。
初対面で笑うのも失礼なので笑いをこらえようとしたのだが、こらえきれず肩を震わせていると、無表情の身能がツカツカとこちらに歩み寄ってきて、がしりと耳郎の手をとる。
さすがに笑いすぎたか?と、焦ったようにその表情を崩す耳郎に彼女が告げたのは、


「もうそれでいいんで、耳郎さんも私と仲良くしてください」

「どんだけ友だちつくるのに必死ッ!?」


なりふり構わず距離を縮めようとしてくる彼女に、耳郎は再び吹き出した。
このときから耳郎は・・・彼女のことが、大好きになったのだ。










話してみれば気さくで、ノリが良く、からかいがいもある彼女。耳郎が彼女と仲良くなるのにそう時間はかからなかった。
強子を通して親しくなった八百万ともつるむようになって、自然と3人で話すことが増えてきた頃―――


「耳郎ちゃんは、何をそんなに遠慮してるの?」

「・・・え?」


それは、今となっては何をキッカケにそんな言葉を投げられたのかも思い出せないくらい、ふとした日常の中での会話だった。
でも、キッカケなんてどうでもよくなるほど、強子の問いかけが衝撃的で、耳郎の息がとまる。


「え、遠慮って・・・、」


今まで遠慮なんてしているつもりは一切なかった。けれど、否定しようとしたとき言葉に詰まって、初めて「そうか、自分は遠慮していたのか」と自覚した。
自分でも知らず知らずのうち相手に遠慮していただなんて・・・これまで周りの顔色をうかがって生きてきたのが、クセになっているんだろうか。
何も言葉を返せずにいる耳郎へと、強子はさらに言葉を続ける。


「耳郎ちゃんはそれでいいの?ひとに気を遣ってばっかじゃなくて、やりたいことがあるならやればいいじゃん。嫌なことは嫌って言いなよ」


おそらく彼女は、彼女の言葉に耳郎がこんなにも衝撃を受けていることなど夢にも思っていないだろう。
だってこんなに、あっけらかんと、いけしゃあしゃあと、あまりに軽いノリで告げるのだから。核心に触れるようなことに、人のデリケートな部分に、ズケズケと首を突っ込んでおいて・・・この態度である。


「・・・強子こそ、何でそう傍若無人にふるまえるわけ?」


純粋に疑問だった。
気遣い、遠慮――これって、普通のことなんじゃないの?大抵の人間は、空気を読んで、周囲に合わせて生きてるもんだよね?
耳郎より強子のほうが、普通じゃない。よほど理解に苦しむ生き方をしているじゃないか。
友だちは欲しい、大事にしたいと言うくせに、彼女の生き様は自分勝手すぎる。いったい、どういう思考回路なんだか・・・。


「だって、人生は一度きりでしょ!死んだら終わりなんだよ」

「・・・」


その短い言葉が妙に説得力のあるもので、思わず押し黙る。
こんなにも真剣に、“死”を自分ごとと捉えて語る高校生が他にいるだろうか。


「死ぬ瞬間に、“ああすればよかった”、“こうすればよかった”なんて後悔したくないから、私はいつだって自分の満足いく選択をしたいんだよ!」


だから爆豪に見下されたら喧嘩を売るし、轟に邪険にされても食って掛かる、と。
これが、彼女の人生観・・・彼女が傍若無人に生き急ぐ理由が、少し垣間見れた気がした。


「だから、耳郎ちゃんも・・・私には遠慮なんてしないでいいよ―――友だちでしょ?」

「っ・・・!」


なんてことないようにサラリと告げられたそれに、ドクンと心臓が跳ねた。


「(“友だち”、って・・・)」


目を見開き強子を凝視する耳郎に、彼女はニッと陽気に笑いかけた。


「耳郎ちゃんの本音、聞かせてよ!やりたいことがあるなら手伝うし、嫌なことがあれば相談のるし」


ずいぶんと気軽に言ってくれるが、言うは易しだ。カッコいいこと言ったって、どうせ口だけなんだろう・・・?


「私もですわ、耳郎さん」


今まで静かに見守っていた八百万もこくりと頷いて、耳郎に笑顔を向けた。
こちらは軽々しい強子と違って、気遣わしげに、慎重に言葉をつむぐ。


「私にも遠慮はなさらず、何でも言ってください。耳郎さんの本心を聞けないだなんて寂しいですもの」


いたって真摯に告げてくるが・・・こんな真正面からぶつかってくるなんて、恥ずかしくないのだろうか?
耳郎のほうが頬を熱くしながら、ふと思う。


「(・・・違うのかもしれない)」


雄英(ここ)は、今までとは違うのかもしれない。
ここでは中学までの経験則が通用しないのなら・・・耳郎はもう今までのように、ハリボテの“友だち”に遠慮して、曖昧に笑う必要などないのかも。
ひとすじの可能性を見つけて瞳を揺らす耳郎に、強子が誇らしげに拳を胸にぶつけて言い放つ。


「言っとくけど、大事な友だちの可愛いワガママも聞けないほど 器の小さい人間じゃないのよ、私は!」


きっと “ヒーロー”ってのは、体を張って人を守るだけじゃなくて・・・温かな言葉で人の心を救うこともできる存在なんだと、そんなことを思った。
そして、このときから耳郎は・・・彼女たちを信じ、遠慮はやめて、自分自身の本音をぶつけるようにしたのだった。










強子はきっと普通とは違う。他の人たちとどこか違う。直感的に、彼女が特異な存在のように感じてはいたけれど・・・


「まさかオールマイト先生からの推薦があって入学されただなんて。初耳でしたわ!」

「それね、ほんと驚いたよ・・・」


八百万の言葉に頷きながら強子を見やる。
あの生きる伝説 オールマイトですら、強子に特別な何かを見出だしていたらしい。雄英では前代未聞の補欠入学という特別扱いは、オールマイトによる特別待遇なのだと。
体育祭も半ばというところ、プレゼント・マイクの実況で知らされたその情報に、彼女とともに過ごすことが多い耳郎も八百万も寝耳に水であった。


「(ウチらにくらい、話してくれてもよかったのに・・・)」


とは思うものの、オールマイトとの繋がりを隠していた理由もわからなくない。
観客席を見渡せば、スカウト目当てにやってきたヒーローたちも、話題探しに目がないマスコミ陣も、揃って強子に注目の眼差しを向けている。周囲の彼女を見る目が一瞬のうちに様変わりしてしまうくらい、“オールマイト”というビッグネームの影響は凄まじいのだ。
でも、だからこそ、


「(ウチらくらいは、強子を色眼鏡で見ないで、あの子自身を見なくちゃ)」


ビッグネームの陰になって自分自身を見てもらえない辛さなら、耳郎はよく知っているから。
耳郎が好きなのは、強子だ。耳郎が強子に憧れたのは、彼女が 彼女だからだ。
いつも必死で余裕ないくせに、心底楽しそうに人生を謳歌している彼女。我が強くて近寄りがたいかと思いきや、寂しがりやで甘ったれな彼女。ちょっと無遠慮でズケズケと核心に突っ込んでくるくせに、不思議と心を許してしまえる彼女。
そんな強子だから、オールマイトは関係なく、耳郎は彼女に惹かれるのだ。

ただ一つ・・・耳郎が憧れている、彼女の戦う姿――こればかりは、“オールマイトは関係ない”とは言い難い。
彼女の戦い方は、オールマイトを彷彿とさせる。
体を張って、敵に真っ向からぶつかっていく姿はまさしくヒーロー。恐怖をかなぐり捨てて前線に身を投じ、道具に頼るでもなく 自らの肉体だけで相手に挑んでいく。拳で、キックで、あるいは頭突きで・・・目の前の障壁を ぶち壊すんだ。


「(・・・憧れないわけ、ないよなぁ)」


耳郎の個性では同じような戦い方はできないけど・・・せめて、彼女のように前線で体を張るヒーローを サポートできる自分でありたい。
そんな思いもあって、耳郎は・・・職場体験先をパンチングヒーロー“デステゴロ”に決めたのだった。










雄英に入ってからは色々な出来事がひっきりなしで、季節が過ぎるのが早く感じる。
いつの間にか夏の気配も消え去って、文化祭という いかにも学校っぽいイベントがやってきた。


「決まりとして1クラス一つ出し物をせにゃならん。今日はそれを決めてもらう」

「まず候補を挙げていこう!希望のある者は挙手を!」


あれやりたい、これやりたいと声があがるのを聞きながら耳郎は考える。自分は何をやりたいのか。自分なら、何をしたら楽しいのか・・・。


「はいはーい!“身能強子 握手会”やろー!」


教室後方から能天気な声が聞こえてきて、耳郎は思わず苦笑を浮かべた。
んなもん、クラスの出し物としてやるものじゃないだろ。というか自らそれを発案するって、どんだけ自分に自信があるんだ?と、クラスの大半は半目になったが・・・強子贔屓の学級委員たちは そのバカげた意見に肯定的なものだから呆れてしまう。
まあ、彼女の握手会をやったら、少なからず歓喜する者たちがいるのも事実なんだけど。


「さァ 他はないか?」


飯田の声にはっとすると、耳郎は己の手にそっと視線を落とす。

―――耳郎ちゃんは、何をそんなに遠慮してるの?

一度手をぎゅっと握りしめてから、そろりと挙手をする。飯田をはじめ、クラスメイトたちの視線を浴びて僅かに緊張しながら口を開いた。


「あー・・・ば、バンドとか・・・?」


音楽が好きだ。
芦戸や砂藤のように、ヒーロー活動に根ざした趣味とはいえないけど、やっぱり音楽が好きだから。
強子と、ヤオモモと・・・信頼するクラスメイトたちと出来たなら、きっと 楽しいだろうな、なんて。
まあ、本気でバンドを実現できるとは思ってないけど・・・想像するだけなら、言うだけならタダじゃんね?と、場当たり的に口走っていた。
そう―――本当に、実現するなんて思ってもいなかったのに、


「ダンスとはリズム!!すなわち“音”だ!!」

「音楽といえばぁ―――」

「耳郎ちゃんの楽器で生演奏!!!」


出し物を何にするか、放課後に改めて話し合っていると・・・話がとんでもない方向に進んでいく。
ぎょっとして、面食らった耳郎が慌てて「ちょっと待ってよ」とストップをかける。


「何でェ!?耳郎ちゃんもバンドやりたいって言ってたよね?」

「そ、それは・・・」


場当たり的に、衝動的に発した言葉であって、実現性なんて無視した 無責任な言葉だったのに。しかも、ストレスを抱える他科への奉仕活動だなんて、そんな責任重大なお題目とも聞いてなかったし。
・・・それに、


「ウチのは本当只の趣味だし、正直表立って自慢できるモンじゃないつーか・・・」


ウジウジと言葉を並べていると、上鳴と口田がズイと身を乗り出してきた。


「あんなに楽器できるとかめっちゃカッケーじゃん!!」

「人を笑顔にできるかもしれない技だよ。十分ヒーローに根ざしてると思うよ」


率直に、嬉しい言葉だった。耳郎を信じて、やってみなよと背中を押してくれる彼らの言葉。


「お二人の主張も良くわかりますわ。でも、これから先は耳郎さん本人の意志で・・・」


耳郎の気持ちを最優先に考え、八百万が彼らを制止してくれる。その心遣いにも心が温かくなる。
彼らとなら、彼女たちとなら。このクラスでなら、きっと・・・


「・・・ウチ、やっぱり、バンドやりたいんだけど・・・いいかな?」


気恥ずかしくてイヤホンジャックを弄りながらぼそぼそと問えば、待ってましたとばかりにクラスメイトたちからワッと賛同の声があがったもので、余計に恥ずかしくなって顔が火照った。

バンド演奏とダンスホールの融合―――となると、ニューレイヴ系のクラブロックがいいだろう。
しかし、バンドの骨子となるドラムを誰が演奏するのか、それが問題なのだが・・・意外にも、音楽教室に通っていたという爆豪が、文句なしの腕前を披露したではないか。


「爆豪お願い!アンタがやってくれたら良いものになる!」

「なるハズねェだろ!」


一喝されて、言葉を失う。
他科のストレス発散だなんて、ストレスの原因がやっても自己満足でしかない。ムカツク奴から素直に受け取るハズがない、と。
そう言われると、反論の余地もないんだけど・・・


「俺たちだって好きで敵に転がされてんじゃねェ・・・なんでこっちが顔色伺わなきゃなんねェ!!」


爆豪の言葉にハッとする。
周囲の顔色を伺ってばかりだった耳郎は、爆豪のような、強子のような、“我を貫く強さ”を持ち合わせていなかった。
が、しかし・・・ここまで同調圧力に屈しない人間が存在するとは驚きだ。爆豪を見ていると強子がまともな人間に思えてくる。


「てめェらご機嫌取りのつもりならやめちまえ!殴るンだよ・・・!馴れ合いじゃなく殴り合い!!やるならガチで―――雄英全員、音で殺るぞ!!」

「「「バァクゴォオオ!!」」」


理屈はやばいけどやってくれるらしい。爆豪の宣言に、クラスメイトたちからワッと奮起の声があがった。
ベースが耳郎で、キーボードは八百万。ギターも上鳴と常闇に決まると、あとはボーカルだけ―――


「あ、あのさ!ウチ・・・ボーカルは強子がいいと思うんだ!!」

「ふぁいっ!?」


その提案に強子本人はとてつもなく驚いていたけど、耳郎は、これ以上の適役はないと確信していた。
発声も声量も音程も、彼女なら問題ない。華やかな容姿もステージ映えする。
しかも、他科には彼女のファンが多くいる。彼女がやりたがっていた“握手会”には及ばないが、彼女がボーカルを担うバンド演奏なら、他科への奉仕活動(ファンサービス)として申し分ないだろう。
―――いや、色々と理由を並べたけど、詰まるところ・・・


「ウチは、強子とバンドを組みたい。強子の歌で、A組の皆とライブが出来たら楽しそうだなって思う。だから・・・一緒にやってくれない?」


ちょっとズルいけど・・・これを言えば、強子なら断らないことはわかっていた。
だって、友だちのワガママを聞けないほど 器の小さい人間じゃないのだ、彼女は。
そしてやるからには徹底的に、全力でやるのが身能強子という人で・・・実際、彼女はバンド練習にそれはそれは真剣に取り組んでくれた。
彼女が乗り気で頑張ってくれていることが、耳郎には嬉しかった―――が、その一方で・・・辛気くさく沈んでいる人物もいた。


「(・・・・・・またか、轟)」


最近ふと気がつくと、強子に話しかけたそうに、じっと彼女を見つめる轟の姿があった。
今も、轟の視線には気づかず 爆豪と話しながら練習場へと向かう強子を、寂しそうに見送っている。
・・・そりゃまあ、寂しいだろうな。
強子は放課後や休日のほとんどをバンド練習に費やしているから、バンド隊ではない轟は、彼女と話す時間がなかなか取れない。これまでのように、当たり前に隣にいて、取り留めなくダベることは無くなってしまった。


「・・・強子と話したいなら、遠慮しないで話しかけたら?」


轟の切なげな表情にいたたまれなくなって、彼に声をかけた。
彼女なら、大事な友だちを無碍にはしないはず。轟から彼女に「話したい」と言えば、寂しさなど吹き飛ぶくらいに構い倒してくれるだろう。
けれど、轟は「いや、いい」と迷うことなく首を横に振った。


「身能が頑張ってんのに、邪魔したくねえからな」


彼の返答に「おぉ・・・」と思わず感嘆の声がもれる。
誰かのことを思いやって自分を抑える、我慢強さ――それは、最近グイグイと強子との距離を縮めている爆豪の“我の強さ”とは、正反対の強さだ。
どちらかと言えば、耳郎には、轟の“我慢強さ”のほうが馴染み深い。自分を抑えることの辛さなら、過去に嫌というほど経験してきた。


「アンタって、罪な女だよね・・・」


強子のために我慢している轟の苦悩も知らないで、ノンキなものだ。
そう彼女を皮肉ってみたら、「何を今さら!」とドヤ顔で返されてムカついたので、頬を思いきり引っ張ってやった。





バンド隊もダンス隊も、演出隊だって・・・A組の誰もが、文化祭に向けて頑張ってきた。自分たちの出し物をより良いものにしようと試行錯誤し、一生懸命に努力してきた。
絶対に観客たちを楽しませるんだ。
自分たちにできる最大限のパフォーマンスを見せてやる。
なんとしても成功させなくては。
本番が近づくにつれ、そんな思いは日に日に増していって―――


「・・・やばい、どうしよ・・・・・・緊張、してきた・・・」


本番前日、最後の通し練習の合間に呟くと、バンド隊の面々が「は?」と一斉に耳郎に視線を向けた。


「あぁア゛!?耳ぃッ!てめェが今さら何フぬけたことほざいとんだコラ!!」


やはりというか、真っ先に爆豪が噛み付いてきた。
耳をつんざく大声に顔をしかめつつ・・・自分の腑抜けぶりに申し訳なくなって背を丸めた。バンド隊を牽引してきた者がこれでは示しがつかないと、耳郎も理解はしている。


「まぁ落ち着けって、爆豪!そんな “圧”かけたら逆効果だから!なっ!?」


すかさず上鳴がフォローに入り、続いて八百万と常闇の二人が耳郎に気遣いの言葉をかける。


「大舞台の前ですもの、緊張して当然ですわ!私も先ほどからドキドキして落ち着きませんし・・・」

「緊張を取り払うには瞑想するといいぞ」


彼らが耳郎を励ましてくれる中・・・強子はきょとんと不思議そうな顔をして耳郎に問いかけた。


「バンドやりたいって、耳郎ちゃんが言い出したことだよね?」

「うッ・・・!」


強子の一言がグサリと胸に突き刺さり、苦悶の声が漏れた。そんな耳郎の様子に、慌てて上鳴が再びフォローに入る。


「ばっ・・・!お前、そのセリフも耳郎には逆効果だろうが!!」


上鳴の言う通り、強子の言葉は猛烈に効いた。
そう―――バンド演奏は耳郎が言い出したこと。だからこそ、考えてしまう。
こんな急ごしらえで組んだバンドで、本番もうまく演奏できるのか?
楽曲も、ダンス隊のことを思えばEDMでまわしたほうが良かったんじゃ?
ボーカルだって、強子に「二人で一緒に歌おうよ!」とワガママを言われて思わずOKしてしまったけど・・・強子ファンにとっては、最後まで彼女がメインボーカルを務めたほうが嬉しいに決まってる。
こんなんで、観客たちは満足してくれるだろうか?
A組をこき下ろそうとしている奴らに、「お前らの自己満足じゃないか」と嗤われはしないだろうか?嗤われるのは耳郎だけじゃなくて、A組の皆なのに。
不安を言い出したら切りがない。だって、


「(ウチの“やりたい”に、こんな大勢が協力してくれるなんて、初めてなんだよ・・・)」


耳郎は、自分のワガママに20人も巻き込んだのだ。
クラスメイトたちが耳郎のやりたいことに協力して、一緒になってやってくれているのに・・・失敗なんて出来ない。許されない。
そして、失敗は許されないというプレッシャーが、耳郎に重苦しくのしかかる―――


「あー、えっと・・・耳郎ちゃん?ちょっと言葉が足りなかったけどさ・・・」


強子が申し訳なさそうに口を開く。
その隣で「お前はいつも言葉が足りねーのよ!」と小言をもらす上鳴のみぞおちに一発入れてから、強子は耳郎に笑顔を向けた。


「耳郎ちゃんが“やりたい”って言ったのは、“楽しそう”だと思ったからでしょ?」


はたと、俯けていた顔をあげて強子と視線を合わせる。彼女の爛々とした瞳を見ながら思い出す。
そうだ・・・「楽しいだろうな」って、そう思ったから耳郎は手をあげたんだ。


「だったら・・・楽しまないと もったいなくない?人生、楽しんでなんぼでしょ!本番なんて一瞬なんだから緊張してるヒマないよ!?」


そうだ・・・せっかくクラスメイトたちが耳郎のやりたいことに協力して、一緒になってやってくれているのだから、楽しまない手はないのに。
こんな当たり前のこと、どうして言われるまで気づかなかったんだろう。


「耳郎ちゃんは色々と考えすぎなんだよ・・・みんなに喜んでもらえるかとかは二の次でいいから、まず自分自身が楽しまなきゃ!耳郎ちゃんの人生は、耳郎ちゃん中心でいいんだよ!」


耳郎の考えることなど彼女にはお見通しらしい。
耳郎が抱えていた不安を言い当て、得意げな顔で持論を説いてくる強子に、耳郎はふっと笑みをこぼした。


「オイ、てめェら間違えんなよ・・・“喜んでもらう”じゃねェ、“ぶちのめす”んだってな!!」

「・・・爆豪くん、ブレないね君は・・・」


殺意に満ちた凶悪な笑みを浮かべている爆豪を見て、バンド隊の面々は顔を引きつらせた。


「つか、こちとら雄英全員の息の根とめる算段ついとんだ!ビビる必要ねェんだから堂々としとけや!!」

「・・・!」


耳郎を睨みながら告げられたそれに、バンド隊の面々がハッとする。
言い方はアレだけど・・・つまり要約すると、「しっかり準備したんだから、心配する必要はない」と、そういうことだ。
他の誰でもない完璧主義の彼が言うのだから、その言葉に力をもらえる。


「爆豪の言う通りだ。俺たちは日々鍛練を重ね、練度を高めてきた・・・何を怖じ気づくことがある?」

「そうそ!俺らには最強ジローノートがあるしな!」

「あとは練習してきた通りに、明日の“殴り合い”に臨むだけですわ!」

「よっしゃ!俄然ヤる気でてきたよ!明日は全員ノックアウトさせてやろう!!」

「ハッ、たりめーだわ!」


揺るぎない自信とともに、礎のごとくどっしりと構える常闇。
心配なんて何一つないみたいに、笑顔で明るく周りを照らす上鳴。
プリプリと気合いを入れてかわいらしい、癒しの八百万。
拳をシュッシュと突き出し、ヤる気をたぎらす強子。
殺意の中に確かな期待を含ませ、不敵に笑う爆豪。
―――今日までずっと一緒に頑張ってきた バンド隊の仲間たち。彼らと話していたら・・・なんだか一気に心が軽くなった。
気がつけば緊張感よりも期待感が上回っていて、いつもの調子に戻った耳郎は、いつもと同じ調子で口を開いた。


「本番で変なアドリブしないでね?」


・・・なんて、アドリブ常習犯に警告していた自分が本番でアドリブをぶっ込むとは、このときは想像だにしなかった。










「よ ろ し く お ね が い し ま ァ す!!」


強子がスタンドマイクの前に堂々と立ってシャウトすれば、観客たちの鼓膜がビリビリと震え、彼らの視線は否応なしに彼女に吸い寄せられる。
ツカミは ばっちり。観客は誰も彼もが圧倒されたようにステージに見入っている。
そこに強子が、鍛え上げた歌唱力を観客に披露し、会場を沸かせていた。
耳郎はベースを弾きながら、前方で歌う強子の背中をこっそり見つめた。


「(なんか・・・前線で体を張るヒーローと、それをサポートするサイドキックみたいだな)」


そんな錯覚に浸って、思わず耳郎はほくそ笑む。
思い返せばいつだって彼女は、最前線で奔走していた。先陣をきる彼女に遅れまいと、我々も躍起になって駆け抜けてきたものだ。
彼女は気づいているだろうか―――自信に満ちたその後ろ姿に、どれほど多くの者が奮い立たされてきたか。
彼女は考えたことがあるだろうか―――彼女が何の気なしに起こす言動が、周囲の人間にどれほどの影響を与えているか。

曲の1番が終わると、強子がダンス隊に合流するためスタンドマイクから離れていく。
強子目当てに来ている観客たちがざわつく中で―――強子がほんの一瞬こちらに振り返り、ニッと小さく笑った。


「(強子のやつ・・・!)」


彼女にまんまと煽られて、耳郎はウズウズしながらスタンドマイクに口を寄せ、息を吸い込む。
―――今度は、私の番だ。
A組に反感を持っていた人たちから値踏みするような視線を向けられたけど、もう、あの重っ苦しい緊張感はなくて・・・それより「一発かましてやろう」って、血がたぎって仕方ない。


「(みんな、いくよ・・・!)」


練習に練習を重ねてきたバンド隊――彼らと奏でる音にのせて、耳郎の歌声が響き渡る。
耳郎の歌声にあわせて強子やダンス隊が力強いダンスを披露し、ステージに一体感が生まれる。
ステージをさらに盛り上げるべく、演出隊がいっせいに仕掛けて観客の度肝を抜く。
A組のみんなも、観客たちも、会場全体が一つになって熱狂していく。音楽が、会場を一つにしてくれる。


「(やばい―――最っ高に、楽しい!!)」


会場がワァッと盛り上がるその熱気が、ビシビシと伝わっていた。会場の誰も彼もが心から楽しんでいる。心から笑っている。


「(やっぱり、音楽が好きだ・・・!)」


今、この瞬間を、心の底から楽しむ。
好きなことを、好きな人たちと思いっ切りやれるなんて、なんて幸せな時間だろう。

―――響香、好きにやっていい。

こんなときに頭をよぎったのは、父の言葉。
娘の夢を心から応援し、背中を押してくれた両親を誇りに思う。

―――耳郎ちゃんは、何をそんなに遠慮してるの?

頭にこびりついて離れない、友の言葉。
遠慮する必要はないのだと、自分中心でいいのだと・・・彼女が教えてくれなければ、未だに耳郎はハリボテの交友関係を続けていたかもしれない。


「(真の友情とか、本物の仲間とか―――そんなもの、絶対に手に入らないと思ってたのに)」


雄英に入って、すごい連中と同じクラスになったものだ。
強子や八百万、バンド隊や、A組のみんな―――彼らと出会ってから、耳郎の考えは180度変わった。
ここで出会った彼らは、耳郎のやりたいことを「やってみなよ」と応援してくれる・・・そして、一緒に全力でやってくれる。
辛いときや不安なときには、手を差しのべて支えてくれて・・・気づけば耳郎は笑顔になっている。
彼らはちゃんと耳郎自身を見てくれて、信じてくれて・・・遠慮なく本音をぶつけてくれる。


「(こんなの、最高の“友だち”じゃん!!)」


嬉しくて、誇らしくて・・・耳郎の口角が自然と上がっていく。
見てくれ、聞いてくれ!そして、知ってもらいたい。
自慢のクラスメイトたちを、耳郎が信頼する彼らを。その皆と今日まで重ねてきた努力を・・・ここにいる全員に知らしめたい――そんな願いを込めて、歌声を紡ぐ。


「(ウチ・・・A組のみんなが 大好きだ!!)」


口にするには恥ずかしすぎる本音は、代わりにこの気持ちを歌に乗せて発散させよう。
たとえ、この先どんなに辛いことが起ころうとも、A組(ウチら)ならお互いに支えあって乗り越えて・・・みんな一緒に 立派なヒーローになれる―――いや、絶対になるんだ!
そんな決意とともに、耳郎は最高のひとときを堪能したのだった。










==========

満を持して、耳郎ちゃん視点です。耳郎ちゃんへの愛が止まらん!

誰かの何気ない言葉がずっと頭に残ってるってことありますよね。
夢主の言葉が、耳郎ちゃんにとってのソレであったらいいなと(夢主本人は言ったことを忘れてそうですが・・・)。
そして、遠慮がない関係っていいですよね。尊い!

バンド隊がバランス良くて好きです。
いつかの未来、ヒーローが暇を持て余す世の中でショービズ色が濃くなってて、プロヒになったバンド隊が再結成して歌番組を賑わせてくれたらいいなと夢見てます。





以下は自己満ですが・・・当連載バージョンにて“Hero too”の和訳(意訳)と、夢主&耳郎のパート分けを載せます。


【1番:夢主パート】
私は何になれる?私には何ができる?
もう諦めることは諦めて、準備が整った
未来なんて不確かなもの
結局は私次第でしょ
夢を叶えるために、全てを賭けてやるさ!

今まであれこれやってきた
ずっと見つけようとしてたんだ
私を掴んで放さない、“何か”を

私もだよ
私もヒーローなんだよ
覚悟があるの
後戻りなんてするものか

私もヒーローなんだよ
強さだけがヒーローたらしめるんじゃない
本当のヒーローは、信念を持って立ち上がるのさ
だから待ってて
だから待ってて


【2番:耳郎パート】
皆にどう思われてる?何になると思われてる?
そんなのどうでもいい、知りたくもないよ
これでいいの?私は満足してる?
運命に導かれるようまっすぐに生きていたいの

いろいろと試してきた
ずっと見つけようとしてたんだ
私を掴んで放さない、“それ”を

私もなる
私だってヒーローになるんだ
心は決まった
もう戻りはしない

私だってヒーローになるんだ
強いだけがヒーローじゃない
信じるもののため立ち上がるのが、真のヒーロー
だから待ってて


【Cメロ:二人パート】
夢主:他人は理由もなく非難してくるだろうね
耳郎:君の夢をバカにしてくるかもしれないよ
二人:でも、耳を貸すな
夢主:皆から見下されて、仲間外れにされるかも
   でも、自分の道を突き進め
耳郎:皆から見下されて、仲間外れにされたって
   私は音楽と寄り添って、ヒーローになる!


【落ちサビ:耳郎パート】
私もなる
私だってヒーローになるんだ
 (省略)
信じるもののため立ち上がるのが、真のヒーロー
絶対になるんだ!!(←本番アドリブ箇所)


【ラスト:二人パート】
耳郎:サビ繰り返し

夢主:これまでにたくさんのヒーローと出会って、
   生きるための強さと勇気をもらった
耳郎:毎日を笑顔で満たす力をもらった
二人:今度は私の番!
   君を笑顔にする一人に、私がなるんだ!


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